NORIKUMAです。

 

 

 

 

お正月からいろいろある2024年ですが、心穏やかに1年を過ごせますように。

 

 

 

 

さて、新年1回目は消費税。いろいろ考えさせられる判決となっている。

 

 

 

 

早速、事案の概要から。

本件は、土地付き中古住宅(戸建住宅及び集合住宅を含む)をリフォームを行い販売している原告が、平成28年3月期から平成31年3月期までの各課税期間における顧客への物件の譲渡に係る消費税等の納税申告について処分行政庁が行った各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分は違法であるとして、 各更正処分等の取消しを求める事案である。

 

 

 

 

不動産の一括譲渡及び一括取得の対価の区分については、もう昔から争いがある。この事案の特徴としては、原告である不動産会社は、中古住宅買取再販事業を営んでいて、主に築年数の経過した物件を仕入れて、その物件に必要な修繕等(リフォーム)を施し物件の価値を増加させた上で、顧客に対して販売するというビジネスモデルを採用しているというところだ。

 

 

 

そうすると、それをどう価額に反映させるかというところが税法上大事な点だ。

 

 

 

では、この会社の処理をみてみよう。

まず、仕入時。

原告は、売主から物件を仕入れた際の建物に係る消費税額を計算するに当たっては、当該物件に係る売買代金総額を、当該物件を 仕入れた年度における土地及び建物それぞれについての固定資産税の課税標準である固定資産の価格の比で按分する方法により算出している。

 

 

 

ま、確かに、多くの裁決・判決では仕入時は、固定資産税評価額の比で按分だからね。えー

 

 

 

で、問題の販売時。

原告は、物件を販売する際の消費税額について、戸建住宅の場合には売買代金総額に2.7パーセントを乗じた金額の1万円未満を切り捨てた金額とし、集合住宅の場合には売買代金総額に5.4パーセントを乗じた金額の1万円未満を切り捨てた金額としていた。なお、この2.7パーセントとは、原告が過去(平成25年4月1日から同年9月30日までの6か月間)に仕入れた戸建住宅物件について、個々の物件の固定資産税評価額等の合計額に建物の固定資産税評価額等が占める割合の平均値が約34パーセントであったことから、これに消費税等の税率8パーセントを乗じて算出したものである。集合住宅の計算で用いる5.4パーセントは、戸建住宅 の2.7パーセントを2倍した割合である。

 

 

 

 

 

うん、微妙。それにリフォーム部分はどうしたんだい。プラスしないのか。えー

 

 

 

 

 

で、申告状況は。

原告は、顧客から物件の購入の申込みを受け、最終的に顧客との間で契約内容について合意に至った場合、顧客との間で売買契約書を作成している。 原告が用いている売買契約書の書式には、売買代金として、①売買代金総額並びにその内訳として土地代金額、建物代金額及び消費税額が記載されているものと、②売買代金総額及びその金額に含まれる消費税額のみが記載されており、土地代金額及び建物代金額の記載はないものとがある。原告は、原告算出方法により算出した建物の譲渡の対価の額は消費税法28条1項における課税資産の譲渡の対価の額であるとし、同様に算出し た土地の譲渡の対価の額は非課税資産の譲渡の対価の額であるとして、消費税等の申告を行った。

 

 

 

 

つまり、売買契約書に記載のとおりの申告となる。

 

 

 

ただ、これに対し、課税庁側は、販売時の消費税額を売買代金総額に2.7パーセント又は 5.4パーセントを乗じて算出しているものの譲渡の対価の額については、消費税法施行令45条3項に規定する「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に該当し、本件各物件に係る課税資産(建物)の譲渡に係る消費税の課税標準は、当該物件の売買代金総額に、当該物件の売上原価の合計金額のうち建物に係る売上原価が占める割合を乗ずる方法(すなわち、土地及び建物の各売上原価の比で按分する方法。)で算出した金額であるとして、 更正処分及び本件各賦課決定処分を行っている。

 

 

 

 

売上原価の比で按分。いや、それは正しいだろう。

ただし、個別での管理が必要なので、実務的には大変だ。きっと誰もが、売上原価の比でやれば正しい按分ができることはわかっているが、実務上の手間の関係でそれをやらずにいるだけじゃないのか。つまり、裁決や裁判になった場合には、課税庁側のこの更正処分は、計算間違えがない限り、覆すのは難しいだろう。えー

 

 

 

 

東京地裁は、下記判断をして納税者の請求を棄却している(R5.5.25 裁判所のHPに収録されていますので、誰でも無料で読むことができます)。

 

① 売買契約書において土地の代価及び建物の代価が区分されている場合に、消費税法施行令45条3項を適用することができるか否か

 

「消費税法施行令45条3項は、消費税法28条5項の委任を受けて、一括譲渡の場合の課税資産の譲渡の対価の額の計算の細目を定めるものとして、当該譲渡の当事者間において課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とを合理的に区分しているときはその額によることとし、合理的に区分していないときは、当該課税資産及び非課税資産の各価額(時価)の比で按分する方法で計算した金額とすることを定めたものといえる。

 しかしながら、消費税法28条1項本文の文理上、一括譲渡の場合の課税標準の算定に当たって、当事者間で明示的に合意した金銭による対価の額の区分に常に従わなければならないことが明らかにされているとはいえない。」

 

 

 

 

② 本件各物件の譲渡が、消費税法施行令45条3項に規定する「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に該当するか否か

 

 

「一括譲渡の場合において、当該譲渡の当事者間で、課税資産の対価の金額と非課税資産の対価の金額を区分して合意していたときに、消費税法施行令45条3項所定の「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に該当するか否かを判断するに当たっては、同項が「合理的に区分されていないとき」としている趣旨が、事業者が恣意的に課税資産の譲渡の対価の金額を設定して納税義務を免れようとする事態を防止するところにもあることに鑑みれば、原告が指摘するような合意の形成過程に合理性があるかどうかに限らず、当該課税資産及び非課税資産のそれぞれの本来的な価額の比率や、これらを仕入れた際のそれぞれの対価の額の比率との比較において、課税資産の対価の額の割合が過少になっていないかどうかなどの事情をも考慮すべきものと解するのが相当である。」

 

 

 

「原告は、リフォームを経た各物件の販売時においても、自ら策定し、逐次改正していた「販売物件に関わる消費税算出基準」(その内容は本件被告算出方法に極めて類似するものといえる。)は用いず、売買代金総額に占める建物の代金額を、専ら、過去 に仕入れた戸建住宅物件の建物割合の平均値である原告建物按分率に基づく本件原告算出方法により算出していたものである。このように、物件の販売時に原告算出方法によって売買代金総額に占める建物の代金額を算出した場合には、リフォームによって高めた交換価値が売買代金総額に占める建物の代金額の比率に適切に反映されないことは明らかであり、原告自身のビジネスモデルにも反することになる。」

 

 

 

「以上によれば、原告算出方法は、リフォームにより高めた各物件の交換価値を建物の対価の額に適切に反映したものということはできず、その結果として原告が高額の消費税の還付を受けることになっていることも踏まえると、売買代金総額に占める課税資産である建物の対価の額が、非課税資産である土地の対価の額に比して著しく過少に区分されていたものといわざるを得ない(建物の対価の額は、売買契約におけるその対価の金額の みならず、これと一括譲渡される土地部分をその時価よりも高く売却することができるという原告にとっての経済的利益を含むものとみるほかはない) から、消費税法施行令45条3項の趣旨に照らしても、不合理なものであることは明らかである。そうすると、原告による各物件の譲渡は、同項に規定する「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に該当するものというべきであるから、本件各物件の譲渡に係る消費税の課税標準は、同項所定の方法によって算定されるべきである。」

 

 

 

③ 本件各更正処分において算定された建物の譲渡に係る消費税の課税標準は、消費税法施行令45条3項所定の方法によって算定されたものといえるか否か

 

「被告算出方法においては、原告が行ったリフォーム等の費用について、原告が土地と建物のいずれの売上原価として扱っているかに応じてそれぞれの支払代金額に加算し、最終的な価額を求めているものと解されるところ、一般に、費用を掛けてリフォーム等を施せば、その分、当該不動産の交換価値は高まるはずである(事業者は、一般的に、売上原価を回収 して利益が見込める程度の販売価格を設定するのが通常と解される。また、不動産鑑定評価の基本的な手法の一つとされる原価法においても、建物の増改築・修繕・模様替え等は、その内容を踏まえ、再調達原価の査定に適切に反映させるべきものとされている。)から、このようにして導いた額を時価(資産の譲渡の時における課税資産の価額)と評価することもその字義に反するものとはいえない上、これによれば、リフォームによる交換価値の増加が反映されないという問題を解決するものとして合理性があるものと認められる。」

 

 

 

 

判決文を読んで「その結果として原告が高額の消費税の還付を受けることになっていることも踏まえると・・・」の部分が、効いている。それがあると課税庁の目も厳しいわ。

 

 

 

 

もともとは、被告算出方法に極めて類似する「販売物件に関わる消費税算出基準」を会社としては策定していたのだが、やはり実務的には、もう少し簡便な方法を採用していたということだ。

 

 

 

 

税務の世界では当たり前になりつつあるが、売買契約書に記載されている対価区分が正しいわけではなく、念のため確認が必要だ。

売買する法人としても、特にこの事例のように消費税の還付を受けている場合などは、その価額には慎重を要する。

 

 

 

また,ひとつ一括譲渡・取得の対価区分の事例が加わった。

 

 

 

NORIKUMAクマ