5/5に立夏を迎え暦の上では夏。この頃から気温が上がり始めるため本格的な夏を迎える前に夏を乗り切るための準備をする必要があります。
心身の特徴や変調を表す五行色体表を参考にすると、〘夏・心・汗・赤〙が関連します。ですから、夏は〝心(しん)〟の働きをスムーズにするのがこれから8月上旬ごろまでの養生として大切だといわれています。
夏は〝血(けつ)〟の巡りが盛んになり五臓の〝心(しん)〟が活発に働く季節。その分、心(しん)にかかる負担も大きくなります。





東洋医学における心(しん)の働きとして、

①全身に血(けつ)を送る働き
②精神をコントロールする働き

が挙げられますが、①の働きをサポートするために血の巡りを良くする〘赤い色の食材〙がオススメとのこと。(先述の五行色体表を元にした捉え方)
例えば、トマト・パプリカ・にんじん・クコの実・ナツメ・レバー・血合いの多い魚などが挙げられます。
そのほか、心(しん)を養う食材として百合根・蓮の実・アーモンド・竜眼(※)・ひじき・牡蠣などもオススメです。
※竜眼(りゅうがん)
ムクロジ科ムクロジ属の果実でライチの仲間。神経の興奮を鎮めリラックスさせるほか補血、滋養強壮、疲労回復、貧血改善などに効果的。





また、②に対して夏の暑さが心(しん)にこもることにより、不眠や早期覚醒などが起こりやすくなることから体内の熱を冷ますことが大切です。
熱を冷ます食材として、ゴーヤ・きゅうり・すいか・トマト・なす・冬瓜・ズッキーニ・とうもろこし・セロリ・いんげん豆・緑豆・寒天・豆腐・はと麦・緑茶 etc


 


《オススメ スープレシピ》
◎赤い野菜のスープ
材料:玉ねぎ(千切り)、にんじん(5mmの輪切り)、パプリカ(一口大)、トマト(一口大)、水500ml

①玉ねぎをしんなりするまで炒める。
②その他の食材を加えて炒めたら水200mlを加えてふたをして蒸し煮。
③にんじんがやわらかくなったら残りの水、コンソメ、塩を加えて沸騰させて火を止めて出来上がり。





◎暑さで大量の汗をかくと。。。
体内の津液(水や潤い)や気(エネルギー)を消耗して血(けつ)が濃縮してドロドロ血になったり、エネルギー不足から心(しん)の疲労を招きます。症状として、動悸・息切れ・不整脈・疲労感などが挙げられます。
また、心(しん)の働きが弱くなると脳に十分な血(栄養)が送られず、意識が朦朧とする・頭がボーっとするといった症状が現れることも。





◎夏は体内に熱がこもりやすい
体内に熱がこもるのを回避するために体内の〝熱〟や〝湿(余分な老廃物)〟を排除する必要があります。
身体にこもった余分な熱は熱中症の原因になるほか、イライラや不眠などの原因になることも。これが体力の消耗やメンタル面の疲労の原因となり心身の不調に繋がります。
また、体内に湿が溜まると〝脾胃(消化系)〟の働きに影響して食欲不振や消化不良などを引き起こし夏バテしやすい身体に。
暑さの厳しさから冷たいものに偏りがちになりますが、こういう時こそ水分補給を心掛けつつ脾胃を労るために温かいものを摂って栄養バランスをより意識したいところです。





夏は身体を養い、エネルギーを蓄える季節。この時季にエネルギーを消耗し過ぎると、冬に蓄えがなくなって不調を抱えたり、疾病にかかりやすくなる可能性があります。
今の時季の過ごし方がその先の季節の体調に影響するため、そのことを見越して意識的に生活することも時には必要ということなのです。
例えば、〝陽気〟を養うことで生命活動の原動力を生み出し夏を元気に過ごすためには、シンプルですがやはり食事と睡眠の質がポイントになります。





《汗とともに〝気〟も排出される》 

春から夏にかけては毛穴が開き、汗がスムーズに出せるように身体が変化して夏の暑さに適応していきます。
汗をかくことで陽気を体外に発散させて、同時に暑熱が体内にこもってしまわないように自然に適応していくと捉えます。

東洋医学の古典〝黄帝内経〟の『素問』には
・暑気にあうと陽気は汗とともに体外に出ていく
・陽気が体内にこもると身体は灼熱しているが発汗することにより内に鬱した陽気も発散してしまう
・汗が止めどなく出ると身体が弱って陽気が燃え尽きてしまう
と記されています。 

発汗は体内の余分な熱を冷まし体温を調節する大切な生理機能ですが、汗をかき過ぎると〝気〟も消耗します。汗を大量にかいた際には水分補給だけでなく、昼寝を取り入れたり、気を補う食材(※)を摂ったりすることで補気も意識するようにしましょう。
※補気の食材
穀類、芋類(特に山芋)、豆類、きのこ類、うなぎ、エビ、鶏肉、豚肉、牛肉 etc





《入浴の回数を増やせば良いわけではない》

汗をかく機会が増えると入浴やシャワーの回数が増えることがありますが、長時間の入浴や複数回の入浴はリスクもあるため気をつけましょう。
入浴後にぐったりとしてしまうといったケースもありますが、これは汗ともに〝気〟も消耗してしまったためです。
『養生訓』という古典の著者である貝原益軒は入浴について
『入浴は何度もしてはいけない。温度が高まって毛穴が開き、汗だけでなく気も減るからである。古人は〝十日に一たび浴する〟 と。もっともである。』
と述べています。


 


今回は夏の養生法の一つである【心(しん)を労ること】についてお伝えしました。
心身の特徴や変調を表す五行色体表を参考にすると心(しん)に対する五液は〝汗〟にあてはまります。
心(しん)の働きが弱ると汗の分泌は旺盛になり、汗をかき過ぎることで心(しん)の負担になります。心(しん)の負担にならないように心身ともに焦らず行動し、汗をかいたら気を補うことにも目を向け夏本番に備えましょう。