【山椒】

ミカン科サンショウ属の落葉低木。

種子や果柄が少なく、新しく、香気や辛味の強いものが良品の証。

別名:蜀椒(しょくしょう)

東洋医学的特徴 ①辛味 ②熱性(or温性)

①辛味には〝辛〟と〝麻〟があり、〝麻〟は痺れる辛さを表す。

🔘山椒の旬

部位によって旬が異なる

・花山椒(4~5月)

黄色い花をお吸い物に入れたり、醤油煮にしたりする。

・実山椒(6月)

緑色の実で熟していない状態。最も香りと辛味が強い。

・粉山椒

熟した実の割れた皮を粉状にしたもの。






《山椒 あれこれ》


・山椒は湿気を払いお腹を温める作用があるため、胃痛・食欲不振・下痢などの症状を和らげる。そのほか、胃腸虚弱による消化不良・腹部のガス停滞やそれに伴う腹痛に対して効果があるとされる。大建中湯や当帰湯といった漢方薬に配合される。

また、体内の水を巡らせ余分な水を排出する働きがある。



・山椒の辛味成分〝サンショオール〟は基礎代謝の向上や内臓器官の働きを活発にする働きを持つ。

健胃、整腸、止痛、殺菌、駆虫(回虫駆除)、利尿、駆風(お腹のガスを抜く)etc.の効能が期待できる。



・胃の気は通常〝下がる〟のが正常とされる。山椒は胃の気を下げ、胃の機能を正常化することで食欲を起こして消化不良を解消する。

胃の気が上逆して吐き気や嘔吐がみられる場合に向いている。



・山椒の別名は〝ハジカミ〟 という。一般的には〝ハジカラミ〟の略であるとされている。

《由来》

①〝ハジ〟は『はぜる実』、〝カラミ〟はニラの古名で味が似ていることから

②味が辛渋くて歯が蹙(しか)むから

③〝端赤実(ハシアカミ)〟や〝歯舌辛(ハシタカラミ)〟などから



・江戸中期に書かれた『和漢三才図絵』には山椒に関して〝その実は風邪を除き、身体を温め、歯や髪を丈夫にし、久しく服用すれば目を明るくし顔色を良くする〟と記載されている。



・中国の四川省は盆地で湿度が高いため、身体に湿を溜めないように山椒や唐辛子を常食する。四川料理や四川風⚪⚪というメニューは山椒のピリッとした辛味と風味が特徴的。



・山椒は漢方では〝温裏薬〟〝散寒薬〟として用いられる。〝裏〟は身体の内側を指し身体を温めるものとして重宝される。

食物に事欠き身体が弱ると冷えて寒証になるケースもあるけれども、現代人は飽食の末に湿が溜まることで胃腸が冷えるパターンが多くなっているのだそう。



・歯痛の際に山椒を噛んだり、虫歯の穴に山椒を詰めて痛みを止めるといった民間療法がある。



・果皮の中にある黒い種は〝椒目(しょうもく)〟と呼ばれ、山椒の熱の性質に反して冷ます作用の強い寒の性質を持つ。



・古くは山椒の特徴的な香りが邪気を払い、たわわにつく実が子孫繁栄につながると信じられ吉祥(※)の象徴だったのだそう。

無病長寿を願ってお正月に飲まれる〝屠蘇散(とそさん)〟にも配合されている。

※吉祥(きっしょう:幸い、めでたいこと)

〝祥〟の字の〝羊〟は古くから人々にとってとても尊ばれた存在であり幸せの象徴。このことから神様に羊をお供えすることで〝幸運を得る〟という意味を持つ 〝祥〟の字が成り立ったとされる。






今回は芳香性健胃薬【山椒】についてご紹介しました。

 山椒は一粒は小さいものの、よせ集まると身体を温めて体調を整える生薬として、また食材の良いところを引き出す香辛料として力を発揮する代物です。

鰻の蒲焼きの薬味としてよく知られていますが、 味噌煮や肉料理・味噌汁やお吸い物にも合うとのこと。日頃の食事のスパイスとして是非利用してみて下さい。