お彼岸は春(3月)と秋(9月)の年2回あり、お墓参りやお供えすることでご先祖様を供養する機会がありますが、元々は仏の教えについて学び彼岸(極楽浄土、悟りを開いた世界)に渡れるように努力する期間だったのだそう。
お彼岸には肉や魚などの動物性のものは断ち、野菜料理を中心とした〝精進料理〟で心と身体を浄化するのが正しい過ごし方とされています。
仏教における戒律に基づいて〝殺生(生き物を殺すこと)〟を避け、〝煩悩(人を苦しめ、煩わせる心)〟を刺激しないために生まれたのが精進料理なのだとか。





日本での精進料理の起源は禅寺の寺院で、僧侶たちの食事として発展したとされています。
五味・五色・五法の考えに基づき、様々な味や色・調理法でバランス良く構成されています。
野菜、果物、穀類、山菜、海藻、大豆加工品などが中心。
日本の味噌や醤油などの調味料は精進料理から生まれたといわれているのだとか。
但し、野菜の中でもにんにく・ニラ・ネギ・らっきょうなど匂いの強い野菜は精神が高ぶり、色欲や怒りの感情が起こるとされるため避けた方が良いとのこと。

[五味] 甘  酸  辛  苦  塩
[五色] 赤  青     黄  白  黒
          (緑)   
[五法] 生  煮  蒸  揚  炒





《精進》とは古代インドの言語であるサンスクリット語の〝ヴィールヤ(virya)〟の訳で、善を行い悪を断つために勇敢に立ち向かっていく〝努力・勇気〟を意味するのだそう。
酒肉を断ち心身を清めつつ、ひたすら仏道に勤しむことを〝精進潔斎(しょうじんけっさい)〟と呼び、邪念を捨てて仏道に勤しむ修行僧が食べる料理のことをやがて精進料理と呼ぶようになったようです。
曹洞宗の高祖である道元禅師は中国の南宋での修行の後、禅寺の食事法を日本に持ち込み日本風にアレンジし浸透していったのだそう。
(道元禅師によって調理の心得として〝典座教訓〟、食事の心得として〝赴粥飯法〟がまとめられた)





🔘寺院の僧侶たちの精進料理
お粥(または麦飯)、味噌汁、おかず(1品または2品)、漬物(沢庵など)

🔘一般人が寺院を訪れた際や料理屋などで出される精進料理
Ex)飛竜頭(ひりゅうず=がんもどきのようなもの)、太巻き寿司、けんちん汁、高野豆腐、ごま豆腐、野菜の天ぷら etc.

《精進料理の摂り方》
・食べ物を口に入れたら箸を置き音を立てない
・正座をして器を両手で扱う
・食べ終わったらお米を無駄にしないように器にお湯やお茶を注いで最後まで飲む
・食事に感謝して食べることに集中する 
( 時間に追われている現代人にとって大切なこと)





今回は【精進料理】についてご紹介しました。
飽食の時代におかれている現代人は〝食は生きることと直結している〟ということをなかなか実感しづらいかもしれません。
食の概念として、食べる人だけではなく《食材(料理)・作る人・食べる人》の3つが存在して成り立つものです。
食事にありつけることは当たり前ではなく、その3つが存在して成り立つことと感謝の気持ちを忘れてはいけません。しっかりと意識して食材の命を〝いただき〟たいですね。