緑の中の誘惑 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

 11月に入って早々、横浜は温かな陽射しの日が続きました。
 休日にはさまれた平日、仕事もすぐに片づき、妻のサマンサは出かけていたので、私も一人で出かけることにしました。

 背中のボディバックには読みかけのエッセイが一冊。あとは500ccの水のペットボトルを携えて、自転車で30分以内の空の下で続きを読むことにしました。緑の中か、それとも水辺か、少し迷いましたが、他の人との距離が十分に保てる緑の中で読むことにしました。


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 向かったのは、根岸森林公園です。戦前競馬場だった施設の跡地18ヘクタールに、周辺は林、中央部はなだらかな傾斜をもった芝生があります。足の便がいまひとつなので平日は特に空いています。

 ただ、この公園は標高50mの高台にあり、どの方向から行っても急坂を登らなければならないのが難点です。自転車の機能には問題はありませんが、問題は私の体力です。仮に無理して坂を登り切ったとしても、公園に着いても息があがって本を読むどころではなくなります。
 ここは無理をせず、不動さんの坂をてきとうなところまで自転車で登り、その先は自転車を押していきました。


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 公園の小さなコーヒーショップで、ホットドッグとサンドイッチとコーヒーを買って芝生へ。
 明るい青の空、常緑樹の緑は濃く、芝生の蒼は色が退きはじめています。ふと見ると足もとにはどんぐり。陽射しは暖かくとも、秋はしっかりと進んでいます。
 風もなくおだやかな木漏れ日の下の地面に腰を下ろし、コーヒーをゆっくりとひと口。ふぅ、と大きな息をつくと、身体の中のいつもの空気がそっくり緑が生んだ大気と入れかわったような気分です。

 広々とした芝生では保育園の子どもたちの歓声も和やかに聞こえるのが不思議です。
 一人で、あるいはカップルで小型犬を連れた何組かの人たち。
 芝生の周りを巡る散歩道をキャップをかぶって軽くジョギングする女性。いま何週目でしょうか。
 反対側の散歩道沿いのベンチからはかすかにウクレレの音。ハワイアンのメロディではありませんが、弾き慣れたようすです。




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 脈拍もおちつてきたところで、なんだかんだと言いながらも本よりまずは腹ごしらえです。心より胃袋の方が主張が強いようです。自転車で走った後だからということにしておきましょう。

 ふだんとちがう場所での読書も、それも空の下はまたくつろいだ気分で文字を追うことができそうです。そして、緑の中での昼寝もわるくなさそうです。



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