ふたつある結婚記念日(*1)のうち主に祝う方の日に、妻のサマンサと二人で食事にいくことにしました。
*1:もう一人妻がいるわけではありません。また、サマンサと一度別れてまたヨリを戻したのでもありません。
たまには華やかな食事をしようと意見が一致して、以前に長女のサクラと二人で行った店に予約を入れました。
サクラと食べて家に帰ると「私の時よりいい店にいく」とサマンサが私に文句をつけました。
こういう恨みは折を見つけて解消しておかないと、忘れた頃に妙な場面で引き合いに出されるのがオチです。
いまこそその時です。
◆ ◆ ◆
お勧め聞きながらメニューを見て、サマンサが好みのバラエティに富む前菜を愉しもうと、まずは飲みものと前菜だけ注文することにしました。
相談すると、お店の方がメニューにある前菜を私たち好みに少し変えてくれました。
こういう気配りをされると、ぐっと心をつかまれてしまいます。
サマンサはこの時点ですでにごきげんです。
野菜と魚介の盛り合わせと、小粒なムール貝のワイン蒸しを注文しました。
どちらも美味しかったのですが、想像を超えてくれたのは盛り合わせ。
使われている食材の種類が多く、特定調味料が出しゃばらず素材を引きたてる円やかなドレッシング、新鮮な生の魚介の中に一切れのカジキの燻製のアクセントといった、豊富なアイデアを盛り込みながら統一感を失わないひと品でした。
◆ ◆ ◆
続いては、パスタが見えないほど具だくさんのペスカトーレ。
私の食事制限のあおりをくって、ここ2年ほどサマンサも貝をあまり食べていませんでした。
先日もあさりが食べたいと言っていたので、この晩は私から貝の解禁を申し出ました。
やや控えめなトマト・ソースが新鮮な貝の風味を引きたてています。
次はフィレ・ステーキを200g注文。
近ごろサマンサは意識してしっかりたんぱく質を摂っています。
でも、二人分に切り分けて提供してもらったのを見ると、ひと切れ100gには思えません。
サマンサがボリュームにとまどっていると、店の方が食べきれないのではと心配していました。
でもだいじょうぶ。
私のお腹にはまだ余力があります。サマンサの余分を引き受けられます。
低温で焼かれたレアの赤身は、柔らかく旨味もしっかり残されています。
サマンサも思ったよりたくさん食べ、私はサマンサからもらった分もペロリ。
◆ ◆ ◆
「もうおなかいっぱい」
デザートが収まる余地がなくなってしまいました。
サマンサの声のトーンがふだんより心持ち高めです。
どうやら、味、アイデア、量、スタッフの会話や勧め方、いずれもサマンサは気に入ってくれたようです。
お店を出るときに、ホールの責任者の方に二人とも楽しく食事ができて満足したことをお伝えしました。
「じつは・・・・」とここでサプライズ。
20年にわたりコンビを組んできたシェフとともに、独立して近々この
「つぎはどっちにいったらいいんだろう?」
あれ? サマンサおなかいっぱいなのに、もう次の食事のことを考えています。
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