盗聴願望 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

休みの日、私は台所で食後のコーヒーを淹れ、
そのすぐ脇では、妻のサマンサが食器洗いをしていました。

  - えっ? なに?

ドリップしているコーヒーが落ちるのを待っているとき、
サマンサが何か言ったのですが、聞き取れなかったので聞き返ししました。

    

  - ああ、なんでもないよ。
  - でも、いま何か話かけてたじゃん。
  - ううん、あなたじゃないの。

不思議です。 
いま台所にいるのは、というか家にいるのは、サマンサと私だけです。

  - じゃあ、誰に?
  - これに。

彼女が指した先にあるのは、花の形をしたコップ洗いのスポンジでした。

    

どうやら、その花形のスポンジが、何かの拍子に流しに落ちてきたので、
サマンサは、そのスポンジに、
洗いものの邪魔をしないよう、言い聞かせていたようです。

  - サマンサって、知り合いが多いんだね。
  - そうなのよ。とくにこのあたりはにはね。
  - オレとよりたくさん会話していたりして。
  - そんなことない。みんな、ひとこと言えば素直に言うこときくもの。

私との会話は、私の口応えゆえに、彼らより長いように聞こえます。
私が素直でないように聞こえます。
少なくとも、私だって、素直とまでは言えなくとも従順です。

    

私が家にいない間、サマンサは、
鍋や、フライ返しや、布巾や、その他諸々の日用品たちと
会話しているのかもしれません。

こっそりとサマンサと彼らの会話を聞いてみたくなりました。


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