デジタルへっつい幽霊 上 | anemone-baronのブログ

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落書き小説根底にあるもの!
私の人生は、「存在しなければ、何を言っても正しい」という数学の存在問題の定義みたいなもの。小説なんか、存在しないキャラクターが何を言っても、それはその世界での真実なのだ。

 

 

タイトルイメージ


主人公:

元金内蔵 42歳、独身(離婚歴あり) 職業は潰れそうな銀行の銀行員

 

幽霊: 

生きてた時、佐藤聡 プログラマー (独身)38歳の時 クモ膜下出血にて自宅で死亡


 

はじまり

 

 

 俺は、元金内蔵42歳独身の銀行員。銀行員たって都会から電車で2時間掛かる田舎の信用金庫の行員だ。

 

 前は、地銀で働いてたが整理要員で左遷させられた。

出世には興味がないから、こちらの方が気楽で悪くない。ただ、この信用金庫も来年にはどうなっているか分からないな、時間の問題かもしれない。

 

 「えっ、独身の銀行員で優雅な生活だって?」とんでもない。5年前に離婚して、マンションは元妻に取られ、ローンの支払いはまだ20年も残っている。聞けば、元妻は別の男と暮らしているらしい。全く、バカバカしい話だ。

 

 今住んでいるのは、鉄筋コンクリート作りで築45年という年代物のアパートだ。他に住んでいる住人たちは、どこの国から来たのかさっぱり分からないやつらだし、興味を持つ余裕もない。
 

 他から見れば住みにくそう!って思うかもしれないがそうでもない。面倒な新聞屋や,N◯Kの催促やら、訪問販売などは全く来ない。一般の人々(日本人)はまず近づかない。部屋に居る時は、ビールを飲みながらパソコンでインターネットを見ている。

 

 東京は国際都市と言われているが、このぼろアパートもかなり国際的な雰囲気だ。ただし、安い家賃の代償は大きい。隙間だらけで風通しが良すぎる。冬になると、その寒さが身にしみるのだ。

 

 

 最寄りの駅からアパートまでの途中に小さなパソコンショップがある。オヤジが一人でやってる様で、5、6坪程度の店で看板には「中古パソコン販売、何でも修理」と出ている。

 特に興味がある訳では無いが、毎日前を通るのでチラチラ目に入る。ショウウインドもあるがどれもクソみたいなパソコンばかりで、内心「この店どうやって生計立てるだろう」っとそっちの方が気になる。
「?ネット販売とかで上手くやってるのか?」それもどうでも良い事である。

 

 ある日、俺のノートパソコンが調子悪くなって来た。離婚する2、3年前に買ったやつだからかれこれ7、8年経っているので仕方がないが、俺にとっては一大事、何せ悠一の友である。スマホも在るが、やはりキーボードでかカチャカチャの方が断然早い。

 

 さて、ネット販売も覗いて見たが中々良いものがない、何たって予算が5万以下だから良いものが在る訳もない。大枚叩いて買ったとしても、手元に届くのは1週間はかかる。それまで、俺のノートパソコンは持ち堪えられないだろう。

そこであのパソコンショップを思い出した。「ダメもとで覗いてみるか!」っと。


 

修理屋へ

 

 俺は修理屋の前に立ち、ショーウインドウをじっと眺めていた。しかし、どう見てもロクなものはなさそうだ。躊躇しつつも店内に入ると、狭い空間の奥で老眼鏡をかけた店主が居眠りしている。

 

「すみません」と声をかけると、店主はビックリして老眼鏡を落としそうになる。「あっ、ビックリした!いらっしゃい。何かお探しですか?」

 

 半ば諦めながら、「中古のPCを探しているんです」と答えると、店主は「大したものはないけど、気に入ったものがあれば声をかけてください」と言う。まあ、店は狭いし、2メートルも離れていないけどな、と心の中でつぶやく。

 

 店内を見渡してみると、ショーウインドウからは見えなかったPCが棚の端に置いてある。「ん? HP Z640か?」10年近く前の型だが、このスペックなら今でも14~16万はするだろう。何でこんなところに?気になったので店主に聞いてみる。「このワークステーション(WS)、売り物ですか?」

 

 店主は頭をかきながら、「えっと、売り物と言えば売り物ですが…」「動かないのか?」と俺が尋ねると、「いや、動くんですけど、システムにロックがかかってて、初期化ができないんですよ。色々試したんですけどね」と店主。

 

「オイオイ、修理屋だろ?BIOSくらい表示されるだろ?」と俺。「それが、今まで何人もの人が買っては返品していくんですよ。ダメだ、初期化できないって」と店主。

 

 少し考えて、「ふーん、売るならいくらだ?」と聞くと、店主は困った顔で「普通なら16万なんですけど、動かせないんで…」「早く言えよ、いくらだ?」と俺。「8万です!」と店主。

 

「冗談言うなよ!動かないワークステーション(WS)が8万って、高すぎだろ」と俺。「ただ、スペックは高いし…」「スペックが良くても動かないんじゃただの鉄の箱だろ。どうだろう、35000円でどうだ!」と俺。


 店主は「いや、部品取りだけでも、もっと高いし…」と言うが、「ならないよ!10年近く前の品物だぜ。しかも中古だろ。ヤフオクとかで見てみろよ」と俺が捲し立てると、店主は頭を抱えて「分かりました。お客さんには敵わないや。それで結構です」と言った。

 

お持ち帰りの夜

 

 この重いワークステーション(WS)を何とか自宅まで運び込んだ。20キロもあるこの鉄の塊を抱えての帰宅は、なかなかの重労働だった。

 

 家に着いてからは、早速蓋を開けて中身を確認し、セッティングに取り掛かる。「あの店主、本当にバカだな。BIOSに入れないなら、パスワードはROMに書き込まれているってことだろ。ROMのソースを書き出せばいいんだよ」 

 そう呟きながら、俺は机の引き出しからCD-ROMを取り出し、ワークステーションにセットした。モニターには次々とソースコードが流れていく。

 

「さて、パスワードはどれだろう?」しばらく探していると、「あった、これだ!」とメモ帳にパスワードを書き込む。「2s4A80t2O8S9h1iか。それじゃ、再起動して打ち込んでみるか!」

 パスワードを入力し、しばらくすると画面に「ok boot cdrom -as <Return>」と表示された。「やった、成功だ!」。おちゃのこさいさいだぜ!

 

 本来ならここで全ドライブを初期化させてからOSをインストールするのだが気になることがあった。俺は、ROMにロックを書き込むなんて相当大事なデータが入ってるんだろうなと、やはり興味は湧く、「ヨッシャ一度このまま起動してみるか!」

 

 CD-ROMを取り出し、再起動をクリック。案の定パスワード聞いてくるので、メモ帳のパスワードを入力し起動画面をワクワクしながら眺めていると、しばらくして「ブーンカチカチ」と音がして、Linux OSのペンギンマークとDebianの渦巻きマークが表示された。 
 

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 この辺ちょっとマニアックな内容なので解説すると、パソコン又はコンピュータを一般人が使うには「オペレーティングシステムと」呼ばれるプログラムが必要になる。


 所謂「OS」てやつで「windows」とか「MacOS」呼ばれてるやつ、ほとんどの人はwindowsを使わされている。その他に、UNIXとLinuxと呼ばれるOSがありでDamienはLinux系のOSの一つ、詳しく知りたければググってくれ。解説になってない。(笑)

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出会い

 

 ビールを飲みながら起動を待っていると、疲れからかいつの間にか眠ってしまっていた。

 

「旦那さん起きてくださいよ、旦那さん」と声が聞こえてくる。はっと驚いて目を覚ますと、机の上に半透明の男が正座していた。

 

「だっ誰だよお前は?」と俺は戸惑いながら訪ねた。

「はい、あっしは幽霊です。このPCの元の持ち主です。よろしく」

 

 俺は、多少ビビってたが、「よろしくって、幽霊なんかと友達になりたくねいや。第一俺に何の用だ?」


 すると幽霊が「いや~旦那さんすごいっすね、俺が死んだ後このWS起動できたの旦那さんだけですよ。修理屋のオヤジなんか全然使いもにならかったし。他の人もみんなだめ…で」

 

 いい忘れてたが、俺は銀行員だが営業とかの総合職ではなくシステムエンジニアだ。金融関係のシステムってのは二重三重にもセキュリティが掛かってて外部から侵入できないシステムになっている。

 

 地銀にいた時は毎日それと格闘してたが、システム部門がアウトソーシングになって、俺は左遷って事に。

 

話を戻すと…

「旦那、旦那って言うな落語みたいじゃねいか、元金て名前あるんだよ」「失礼しました、元金さん実は頼み事はありまして、こうして恥を忍んで出てまいりました。」

 

「へ~最近の幽霊ってのは礼儀正しんだな」俺は、残りのビールを飲みながら「でっ頼み事って何だ」

 

「え~単刀直入に言いますと、あっしの金を引き出してもらいたいんです。」

 

「銀行口座かなんかか?死んだ人間の口座なんか残ってないと思うぞ」

 

「いえ、ビットコインなんですけど、最近あった新米の死霊に今、巷じゃ随分値段が上がったって噂を聞きまして」

 

「へ~あの世でもビットコイン?暗号資産使えるのか」

 

幽霊は困ったように「暗号資産は使えませんが、金が必要なんです。

 

「お金がないと三途の川も渡れませんし、裁判も受けられません。しかも裁判は五段回ありまして、その度ににカネがかかるんですよ。五審級なんです。」

 

 俺は関心して「地獄の沙汰も金次第、なんて言うけど本当なんだ。驚いたね~これは」

 

 幽霊は続けて「こっちの世もインフレが続いてましてね。物価高で、三途の川の渡し舟なんかもフェリー見たくでっかくなって船賃も大幅アップ、その代わり一度に100人くらい運びますから」

 

「ま~考えてみれば一年間で60万人くらい死んでいるからあの世も大変だね。」

 

「まじごったがえしてますよ。川を渡れない奴らがあっしもその一人だんですけどね」

 

 俺は、ビールを飲みながら「ところで、俺にビットコインをどうしろってんだ。」

 

やっと本題に入った感じで「生きてたときに少しやっていたんですけど、そのウォレットのデータがこの中にあるんですよ、ただパスワードを忘れまして元金さんなら何とかしてくれるんじゃないかと」

 

「今だと1ビットコインだと多分100万以上するぞ!詳しくないけど」

 

 幽霊は驚いて「へっそんなに、始めた頃は1円くらいだったのに、世の中変わるもんですね」

 

「ただな~他人口座のウォレットのロック外すのは泥棒と同じで犯罪だぞ」

 

「でも、あっしのだから平気でしょ」

 

 俺は少し考え込んで、「何ピッドコインもってるんだ」幽霊は「それが、こっちの世界に長く居ると生前してた時の記憶が少しずつなくなっていくんで、よく覚えてないんで、でも3,4年間はマイニングしてたので15か20位は溜まってたような気がします。」

 

 コイツの言ってることが本当なら相当な金額になるな、本当の相場は400~500万位だから。「よし分かった」

 

 幽霊は喜んで「やってもらえるんですか、もちろんお礼はいたします」

 

「いや、まだ返事はできなな金融屋だけど少し調べてみないと一歩間違ったら犯罪だからな」っとはぐらかした。

 

 少しがっかりした様子で「分かりました、あたりが付いたら呼んでください。ただあっしもケツに火がついてる状態ですから、なるべく早くお願いします。」と言い残して消えていった。

 

 へ~がっかりする幽霊って初めて見た。とにかく良い事聞いた本当だったらうちの銀行潰れてもどうでもいいな。

 

 俺は、笑いが込み上げてっくるのを抑えてその日は寝た。