サカナクション山口一郎の告白
先日、NHKスペシャルで放送された「うつと生きる~サカナクション 復活への日々~」という番組を見た。
不謹慎だが「そうか山口くんもまたうつ病を患っていたのか」となんだか仲間が増えたような気がしてなんとなく嬉しかった。
身体が異常にだるくてベッドから起き上がれない、頭痛がするといった身体症状はうつ病の初期によくある「あるあるの症状」だ。
しばらくは何もできない状態が続く。
うつになる人って、必ず何かを我慢してるよなって思う。
地元小樽でバンドを組んでいた頃の「人と会話しない、MCもしない、サングラスを外さない」本来の山口くんとは「真逆の自分を演じなければいけない」メジャー進出。
そのストレスの圧が生み出す精神の崩壊。
「音楽は自分にとってすべてであり、趣味であると同時に人生そのものである」と語っていた。
その逃げ場のない状況に自らの身を置きながら逃げようとしない心の重圧との闘い。
それもまたストレスの圧をより強くしている。
番組中、精神科医の主治医がこんな判断を下していた。
「うつ状態が完全に無くなるということはない。薬の必要がなくなるだろうということである」
これが何を意味しているのか、私にはすぐにわかった。
つまり「本来の自分」を押し曲げて「別人格の自分」を創り出して歌わせているのだから、精神にかなりのストレスが掛かるのは避けられない。
だから「寛解」という状態に至るまでは程遠い。
ストレスの負荷を軽くして持続させ、段々とストレスに順化させていくほかはない。
薬を使わずにストレスを自分でコントロールできるようになれば、うつ状態は軽減してゆくであろう、といった趣旨であると私は理解した。
救いになったのは同郷の元バンド仲間の存在。
彼が傍にいてくれたことで自信を取り戻せたのでしょう。
何もしなくていい。
ただ傍にいてくれるだけで、安心できるものです。
それは人間が社会的動物と言われることと深い関係があります。
そもそも「うつ病」に罹るのは人間だけ。
人間は社会生活を営む上で、人と対話し、相手の意思、意見を汲み取って、自分の考えと比較対査しながら返答する段階でいろんな感情を押し殺しながら生きている。
人と関わるから「うつ」が生まれるわけで、生まれながらにしてジャングルで動物に育てられたターザンなどは社会性がない代わりに「うつ」とは無縁だ。
うつになる原因に「社会」が関わっているから、治るにはまた「社会」が必要なのである。
ここで言う「社会」とは「自分以外の人」のこと。
コミュニケーションが取れて心の通じ合う人のことだ。
うつは自分ひとりで治せる病気ではない。
寄り添ってくれる人、気持ちをゆだねられる介助者が必ず必要です。
芸能界には山口くんに限らず、うつ病に罹患した人は大勢いるけれども、皆が皆「寛解」したわけではないと思う。
何某かの不便を強いられながらも「うつくん」とうまく付き合っているのでしょう。
うつのトンネルは一つではないから。
次から次へと新たなトンネルがやって来るから。
長いのもあれば短いのもあるし。
ただ経験を積めば回避の仕方もうまくなるのも事実。
何回もうつを繰り返すことでドライブテクニックも上達しますからね。
まあ、焦らず気長に「うつくん」とうまく付き合っていってください。
中日ドラゴンズファンの山口くん、ナゴヤバンテリンドームで待ってますから。