美しき再会 10 | cocktail-lover

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ベルばらが好きで、好きで、色んな絵を描いています。pixivというサイトで鳩サブレの名前で絵を描いています。。遊びにきてください。

 まだ見ぬ君・・・。

 

 オスカルと会った次の日の朝。いつものように、アンドレはシャワーをあびて、朝食の支度にとりかかった。今日は冷蔵庫の余り野菜で作ったミネストローネスープに、チェダーチーズをのせてカリッと焼いたフランスパン。それにコーヒーを沸かし、ブラックのままでゆっくりと飲む。毎日が疲れを知らない小さな戦士達との生活なので、朝食は欠かせない。カップの中の、黒い液体を見ながら、アンドレはオスカルの青い瞳を思いだしていた。

 

愛しい・・・・。愛しすぎてどうにかなってしまいそうだ・・・・。

 

恋愛に関しては、アンドレは慎重なほうである。むしろ、もう少し気楽に遊べばいいのに、と彼の友達は口々に残念がっていた。

 

 アンドレの両親は、同じ大学の同級生だった。母親のローザがミス・キャンパスに選ばれた時、父親のジョセフは熾烈な戦いを勝ち抜き、ローザの心を射止めた。大学を卒業した後、就職と同時に結婚。まもなく子供に恵まれたが、子供・・・アンドレが5歳の時に、

事故で二人とも、この世を去った。ローザの黒髪と、ジョセフの黒い瞳を受け継いだアンドレは、笑った時に優しく目尻が下がる、甘いマスクの青年に成長した。重ねて穏やかな性格の彼は、老若男女を問わず、慕われた。

 学生時代、アンドレはいくつかのバイトを掛け持ちしていた。中でもメインはカフェのギャルソンだったが、女性客のみならず、同じ職場の女の子達に、頻繁に誘われた。

 ある日のことだった。カフェのバイトが終わり、家に帰ろう、という時になって同僚のリザが、気分が悪い、と言って厨房でしゃがみ込んでしまった。他の同僚はすでに帰ってしまい、そのまま放っておくわけにもいかず、アンドレは彼女のアパートの部屋の前まで送ったのだが、彼女がどうしても立って居られないと言う。仕方がなく、アンドレは彼女から鍵を受け取り、部屋に入った。彼女をベッドに寝かせてシーツを掛けてやり、キッチンに置いてあったピッチャーに水を入れ、コップと共にベッドサイドに置く。

「じゃあ、おやすみ、リザ。明日、どうしても調子が悪い時は店と俺に連絡して。代わりに俺がでるよ。お大事にね。」

そう言って、アンドレが帰ろうとした時、リザの細い腕が彼の腰に巻き付いた。「愛しているの・・・・ここにいて。」

 リザはアンドレの二つ年上で、バイト仲間にもお客にも絶大な人気をもつ美人だった。艶のある栗色の髪に綺麗な二重まぶたの下にはパッチリとした菫色の瞳が笑っている。そのくせさっぱりとした気性なので、アンドレも頼りになる先輩として気安く話をする仲だった。だからこそ、彼は慌てた。

「あ、いや、俺今日は・・・。」アンドレは何気ない風を装って、彼女から離れようとした。でも・・・

「アンドレ、私の事嫌い?」

「え?いや、とんでもない。嫌いだなんて・・・。」その時、腰に回されていたリザの腕はアンドレの首に回されて、彼女の濡れた唇が彼の唇を覆った。

離れようとしたアンドレは、女の甘い香りにくらくらとした。

次の瞬間、彼はリザの柔らかな体に手を回し、彼女と共に、ベッドに沈んだ。アンドレ18歳。彼が”女”をしった、初めての夜だった。

 

 だけど、こんな感じなのかな・・・・?

 

アンドレの頭は、妙に冷静だった。彼だって、男友達から色々な事を耳にしていた。初めて少年を捨てる瞬間の事とか、ある種の

達成感、彼女の表情、なんやかや、と。

何かが、違うんだ・・・。確かに、アンドレの胸に優しく押し付けられている柔らかな胸のふくらみや、自分の下腹部を優しく吸い上げてくれる、彼女の舌先の甘美ないやらしさは彼の頭の中枢をしびれさせているのだが、その一方で、誰か別の声が聞こえる。

 

 「アンドレ、私はここだ。」

 

凛として、ハスキーで、それでいて寂しそうな女の子の、声。

 

君は、誰?

 

続く。

 

ちょっぴり憂いを含んだ感じの二十歳頃の彼。