特捜部Q ー檻の中の女ー

ユッシ・エーズラ・オールスン (著)                  

吉田奈保子(訳)

 

 

≪一行あらすじ≫

美貌の女性国会議員の失踪は、事故ではなかった。数十年の時を経て復讐が始まる。

 

≪三行あらすじ≫

特捜部Qは過去の未解決事件を捜索する部署であり、はみ出し者の刑事と奇妙なシリア人しかいない。美貌の女性国会議員の失踪事件は、偶然の事故ではなく彼女を狙う一つの影があったことを突き止める。あまりにも哀しい復讐劇の果てに、ようやく過去は収束する。

 

これも文章(訳文)が上手い。

一昔前の、翻訳物は読みにくいという認識はもはや通用しなくなっている。

切るところをきっちり切ってある。

二段組400Pくらいあるので、×2の原稿用紙換算で約800枚。

結構長い話だが、読みやすい。

いわゆるバディ(相棒)もので、能力はあるが、あるきっかけで組織に反抗的なはみ出し刑事と、ムスリムに非寛容であるといわれるデンマークを舞台にしている割に、シリア人をその相棒に配している。

主役はややルーティンな作りだが、このシリア人がいい。キャラ設定が非常に上手い。

常識はずれな割に隠れた能力が高いという設定だが、万能感を出さずにうまく抑えて、その存在自体が謎であるという作りこみが成功していると思う。

その上で、ターニングポイントではいろいろなものを見つけたり、気づいたり、謎の解明に寄与することになるが、なるほどと思わせる流れになっている。

5年前の議員失踪事件を掘り返す契機になる事件というか、きっかけがやや薄いのではないか。

あと少し気になったのは、女性議員の監禁状況の記述が少し過剰ではないか、そこが作り込みの部分になるのかもしれないが、かなり丁寧であるがゆえに、物語の進行をそこで切ることになるので、話しの流れを止めているともいえるのではないかという点。

このあたりはバランスということになるのだろうが。

 

≪参考にすべき点≫

バディの一方であるシリア人の造形。これに尽きると思う。

秘密があって、頭が良くて容器に振る舞う。主役の陰の部分の補完にちょうどいい。

訳文はうまい。それもあってサクサク読める。

このレベルの記述というか表現は、もはや基本的なレベルとして敷衍していると考えた方がよさそうである。

 

≪他山の石≫

女性国会議員の失踪を調査再開する契機が、もう少し何かとリンクしていた方がいいのではないかと思う。

過去の恨みが動機であるのはいいとして、ここまで執拗に監禁状況を書くというのはいかがなものか。

最後の被害者発見以降、パタパタといってしまう。ここにも何か契機が欲しい。

エピローグは必要だったのか、判断が難しい。このために弟の施設失踪が入っているのだろうから、無いのも変だが、確かに少し薄まるのは事実。スパッと終わるほうがいいのか、こういう形で少し膨らませるのはいいのかは場合によるとしても、550枚以下で書く場合は最後をつけるならあっさりといかないと、蛇尾になりやすいように思う。