http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488121044
≪一行あらすじ≫
書けなくなった若い作家が恩師の窮地を救うべく奮闘するが、最後にはすべて裏切られる。
≪三行あらすじ≫
33年前に失踪した少女が遺体で発見される。そして捕まったのは当時少女と恋愛関係にあった老作家だった。一つのベストセラー小説を軸に、いくつかの謎が深まってゆく。恩師の窮地を救うべく奮闘する若い作家が最後に得た結論は、余りに苦いものだった。
訳文が上手い。
原文がそうなっているというより、翻訳者の文才が大きいと思われた。
読みやすい文章ではあるが、いかんせん長すぎる。この書き方で上下二巻はきつい。
上巻はミステリというより、恋愛小説というか、謎の提示があまりなく、もう少し書くことを取捨選択してほしい感じが強い。
下巻はミステリっぽくなるが、ある意味上巻は無くても成り立つ話になっている。
上巻はミスリードというより、下巻をこう書くという予定がなく書いていったような感じがする。
結局全部(作中のエピソードは)偽の作り話でしたという話なのだろうとは思ったが、本当にそうなっていた。
それと、出てくるキャラが、誰も魅力的ではない。長いと感じた一番の要因はおそらくここにある。探偵役も、その恩師も、殺されたヒロインも(15歳の美少女という設定ではあるが)、読み手の側に訴えかけてくるものが薄い。矜持というか美学というか、そういうものが全く誰にもない(あるのは、ヒロインの前に殺された哀れなドライバーくらいか?)ので、最後にカタルシスが無い。(皮肉な物語が皮肉に終わっても、一定の読了感は必要だと思う)
書き込みは緻密というより、冗長に近い。
文章(訳文)のおかげでサクサク読めるが、少々うんざりさせられる。
特に上巻は話が進まないので、上巻50(30かな?)ページ読んだら下巻に移っても、大してミステリとしては困らないように思う。
主役は若い作家、準主役は老作家と若いヒロインなのだろうけど、この話は上記の哀れなドライバーが準主役に来ないといけない。その部分の書き込みがあまりにも薄い。同じエピソードを何回も違う視点で見ている書き込みを削ってでも、ここを膨らませてほしいと思う。
≪参考にすべき点≫
掴みが上手い。書けなくなった若きベストセラー作家が、救いを求め恩師である老作家を訪ね、死体が発見されるというところまでは、出版界の裏話を織り込みながら読み手を引き込んでいく。
文章(訳文)が上手い。サラッと読みやすい文章になっている。エッセンスはなるべく吸収したい。
≪他山の石≫
緻密と冗長の境は常に意識する必要がある。
本当は緻密ではない書き方で、緻密と同じだけの情報量を提供するべきであろう。
キャラの立て方、魅力の持たせ方はやはり重要。
ストーリーは読者が追いやすい形で構成するべし。カットバックが入るのは仕方がないにせよ、各エピソードの軽重は意識しないと、同じ比重で読ませてはいけない。

