クリスマスのフロスト(創元推理文庫)

 

R・D・ウィングフィールド
芹澤恵

 

 

≪一行あらすじ≫

少女の失踪は、ある忘れられた現金強奪事件を呼び覚ます鍵だった。

 

≪三行あらすじ≫

毒舌でだらしないワーカホリックのフロスト警部は、強引なまでにある少女の失踪事件をどこまでも追い詰めていく。荒野に置き去られた見つかるはずのない死体は、物言わぬまま、少女の行方と忘れられた現金強奪事件を暴き出す鍵でもあった。

 

 

まあ、とにかく面白い。そして上手い。

都合三日間の話で、基本的には、ほぼフロスト警部の三人称一視点で書かれている。

作者にその意図があったのかどうかは分からないが、フロストのキャラとコロンボのそれがどこかリンクしているように思えた。

無論、理詰めで解いていくコロンボとは異なり、フロスト警部は行き当たりばったりでも、それが解明のカギになるという事実を掴んでいくという点は異なるが、どことなく通底するところがあるようにも思える。

バディもので、相棒のクライブは、ロンドンからやってきたばかりの新米刑事でもの知らずという立ち位置が与えられているが、これはフロストとの対比を出すためのキャラ設定だと思うし、状況の説明をするためにクライブは弄り回されているのは分かる。

署長やアレン警部といった、フロストとは対極のキャラ設定や、それとの対比で、警察署内でフロストが他の警官などから慕われている様子が上手く入っている。

特段警察内部の詳しい説明などが書き込まれているわけではない、まあ、イギリス警察の警官全てがこうでは困るが、ごく普通のブルーカラー的性格付けで書かれているので、読み手はフロストに共感を覚えるようになっている。このあたりが上手さということなのだろう。

長い話ではあるが、フロストの毒舌とか、おやじジョークといった評もあるようだが、あの程度であれば、内容はともかくエスプリの範囲ではないのかとは思う。

あまりに品行不正な警察官では面白みに欠けるということで、少し極端な性格付けがなされてはいるが、フロストの能力の高さなどは(コロンボと同様に)読者によくわかるように書かれている。

 

≪参考にすべき点≫

フロストのキャラ付けは、いろいろな他の作品に影響を与えていると思う。盗めるところは盗みたい。ただ、こういったややアウトロー的なはみ出し者を書くのであれば、その分周りの固め方をしっかりしておかないと、話がバラバラになってしまいかねないと思う。

枠がしっかり嵌っているから、その中で起こるドタバタなどが生きてくるのであり、その文革ハードルは高くなるように思う。

署長やアレン警部といった、対極のキャラがいるからこそフロストのハチャメチャな壊れ振りが生きてくるのであり、ややステレオタイプになりがちな署長などのキャラ設定をうまく考える必要はあると思う。

 

≪他山の石≫

ボリュームくらいか、気になるところは。

長いのは長い。もう少し短いほうが良いのかもしれないが、これだけの分量を読ませてしまう筆致というか構成は参考にしたい。