学生の頃、映画好きが集まって、飲み会を開いたりすると、よく話題に挙がるテーマがありました。
「映画は芸術か?娯楽か?」という問題です。
たとえば、「欲望」という映画で有名なアントニオーニ監督は、とても、ゆっくりした映画をつくる監督で、ハリウッドの娯楽映画に慣れてしまった人は確実に眠たくなるでしょう(笑)
つまり、アントニオーニ監督のように完全に娯楽性を無視して、映画をつくる監督がいるのだから、映画を芸術だという人も当然、出て来るわけなんですよ。
けれど、僕は前々から疑問に思っている事がありました。
娯楽性と芸術性、どちらも兼ね備えた映画があってもいいじゃないか?という疑問です。
学生の頃、僕はそんな疑問から、周りのベテラン映画ファンの力を借りて、芸術性と娯楽性を兼ね備えた映画を探す事にしたわけなんです。
おかげで、様々な監督の映画に出会う事が出来ました。
たとえば、ウディアレン監督の「ハンナとその姉妹」とか「ブロードウェイのダニーローズ」などは、ハリウッドの娯楽映画が好きな人も充分に楽しめると思います。
あとは、スコセッシ監督の「アフターアワーズ」とか「キング・オブ・コメディ」、「ハスラー2」などは、芸術性、娯楽性、どちらも兼ね備えていて、楽しめるでしょう。
このように、探せばけっこうあるんですよね。
しかし、スコセッシ監督作品やウディアレン監督作品でも充分楽しめるんだけど、もうちょっと毒があって、社会派の感覚で映画をつくっている監督はいないものか?と思っていた時があったんです。
そんな時、友人に薦められて観たのが、
シドニー・ルメット監督作品
「旅立ちの時」だったんです。
この作品は、とにかく泣きました(笑)
生前、シドニー・ルメット監督は黒澤明監督と交流があり、お互いに作品をリスペクトしていたという話しを聞いた事があります。
中でも、この「旅立ちの時」という作品を黒澤明監督はものすごく気にいったらしく、
「黒澤明が選ぶ映画100本」のラインナップの中に、きっちりと入っています。
やはり、あの黒澤明が認めるだけあって、映画としてパーフェクトなんですよ。
難しい社会の問題を扱っていながら、しっかりとホームドラマ、青年の成長物語、ラブストーリーを入れている。
簡単そうで、なかなか出来ない芸当です。
メインのストーリーは、家族の物語なんです。
でも、そこにサブストーリーとして青年の成長とラブストーリーを描いていくという手法は、けっこう失敗しがちです。
なんでかって言うと、いろいろと描く事が多すぎて、捌ききれなくなっちゃうんですよ(笑)
でも、シドニー・ルメット監督は見事にやって見せている。
もともと、この監督は、ストーリーや登場人物を捌くのが上手い。
それは、「十二人の怒れる男」や「オリエント急行殺人事件」を観てみても解ります。
それは、ルメット監督が映画デビューをする前に、テレビドラマを500本演出したというのが、生きているんだと思うんです。
どうでしょうか?
ハリウッドのCGを使った派手な娯楽映画に飽きた人。
かと言って、あまり展開のない地味なヨーロッパ映画も観たくないという、あなた!!
ここは一つ、シドニー・ルメット監督作品を観てみるのはいかがでしょうか?
手始めに、1957年「十ニ人の怒れる男」と1974年「オリエント急行殺人事件」をオススメします。
ぜひお楽しみください!!
残念ながら、シドニー・ルメット監督は2011年、4月9日にお亡くなりになりました。
偉大なる職人監督のご冥福をお祈り致します。