高校の頃、日本映画は黒澤明が一人いれば良いと思っていた。
三谷幸喜作品をきっかけに、ビリーワイルダー監督の事を知り、その事からワイルダーと同時期にハリウッドで活躍していた映画監督の作品も観るようになった。
ハワードホークス監督作品、ウィリアムワイラー監督作品、レオ・マッケリー監督作品、フランクキャプラ監督作品、ルビッチ監督作品、キング・ビィダー監督作品、ヒッチコック監督作品、ジョン・フォード監督作品などなど、ハリウッドが夢の工場と言われていた頃の映画を学生の頃にたくさん観れた事は本当にラッキーだったと思う。
でも、昔のハリウッド映画に夢中になって行く中で、日本映画はまったく知らない人になってしまっていました。
そんな中でも、ただ一人だけ知っている偉大なる映画監督がいました。
黒澤明です!!
映画をまったく観た事ない人でも、スピルバーグと黒澤明の名前は知っていると思います。
高校の頃の僕も名前ぐらいは知っていて、軽い気持ちで「生きる」と「七人の侍」を観たんです。
衝撃でした。本当に良く出来たエンターティメントだった。もし、このブログを読んでいて、「古いから」とか「時代劇は苦手」と思って観ていない人がいたら、騙されたと思って観てほしい(笑)、絶対に好きになるから!!
それぐらいよく出来たエンターティメントで、観る人を飽きさせない。どこか自分が当時見ていたハリウッドの映画にも共通する思いを感じたんです。
それから一気にビデオ屋で黒澤明監督作品を観まくって、遺作の「まあだだよ」まで観ました。僕は好きになると一直線の人なので(笑)、黒澤明関連の本もたくさん買って、夢中になって読みました。
そんな中、気づいた事があります。黒澤明の凄さって、単に作品が面白い事じゃないって事です。
本当に凄いのは、黒澤さんの作品に対するモチベーションです!!
どんな事があっても、妥協しないで作品を作り続けようとする異常と言っていいほどの執着心が黒澤さんの凄さです。
あのモチベーションはどこから来るのか?高校の頃、考えました。
黒澤さんの自伝である、「ガマの油」を読みとそれが少し解かります。
黒澤さんは、若い頃、大きな地震とお兄さんの自殺を経験しています。
大きな地震を経験する事によって、幼い頃の黒澤さんは、地震の被害にあってしまった悲惨な死体の山を目の当りにします。怖くて、目を背けようとする黒澤さんにお兄さんは言いました。
「明、目を背けるな!!怖いものに目を背けるから怖くなるんだ!!しっかりと観れば怖いものなんて無い!!」
黒澤さんは、お兄さんに言われた、この言葉を生涯忘れずに実行していたのではないでしょうか?
徹底的にしっかりと観ること!!もしかしたら、そんな姿勢が黒澤さんのモチベーションを支えていたのかもしれません。
だけど、「しっかりと観ろ!!」とアドバイスしてくれたお兄さんが、やがて自ら命を絶ってしまう。
お兄さんの自殺によって、「しっかりと観ろ!!」と言う言葉だけが黒澤さんの胸の中で生き続けたのではないか?と僕は考えます。
黒澤さんのように、物を作る人間には、どうしても心に残って、なかなか取り除けない言葉や思い出が必要なのかもしれない。
いや、むしろ、そういった忘れられない記憶があるから、映画をつくりたい、脚本を書きたいと思うのかもしれない。
心の中に残った毒と言ったらいいのでしょうか?僕も心の中に残った毒を確認して、前に進んで行きたいと思います。
偉大なる先輩の業績を改めて称えながら!!