「やめろ!何するんだ!!」
高校の頃、同じクラスだったM君の口癖だ
もちろん、言いたくて言っていたわけではない
言わなくてはやりきれない、言わずにはいられい理由があったのだ
M君は、虐められっ子だった!!
授業が終わってM君が帰ろうと下駄箱に行くと、必ず靴が隠されていていたり、
机が知らない間に、水でビチョビチョにされていたり、サンドバックになれと命令されたり、そんな、ありとあらゆる嫌がらせをM君は受けていた
M君は、それでも「やめろ!何するんだ!!」と叫び続けた、叫んでもどうにもならないと知りながら
M君を見るクラスメイトの反応は、冷ややかなものだった
M君を虐めるグループと見て見ぬふりするグループに見事に分かれたのだ
僕はと言えば、一応、たった一人M君を助けるグループに属していた
あえて一応と書いたのは、テレビドラマや小説で出てきそうな虐めっ子と戦って
虐められっ子を助けるという、弱きを助け強きを挫くヒーローとは似ても似つかぬ存在だったからだ
僕がやった事と言えば、M君がやられている時に、猫なで声で「まぁまぁ、そのへんにしときなよ」と柔らかく止めに入ったり、靴が隠されると一緒になって捜す
事ぐらいだった
強い口調で虐めっ子達に挑む事によって、自分も虐められる事を恐れたんだと思う。M君をはじめて助ける時に、自分も虐められるかもしれないという覚悟はしたつもりだ。
しかし、僕は当時、映像研究部と吹奏楽部を掛け持ちしていて、吹奏楽で部長を務め、映像研究部でも部長を務めるという立場で、つねに部員の事に気を掛けるように、それぞれの顧問の先生から言われていた
正直、毎日が忙しくいっぱい、いっぱいで、M君の事を助けるにしても、気力を他の事に取っておきたかった
ある日、M君は、そんな僕の気持ちを踏みにじる発言をする!!
「なんで、俺だけなんだ!!他の奴でもいいだろう!!」
M君のこの発言は、27歳になった今の僕なら理解する事が出来る
でも、17歳の当時は、まったく理解できず、そんな発言をすること自体が信じられなかった!!
「他の奴でもいいだろう!!」という事は、自分以外の奴なら虐められてもいいと言う事だ!!
M君は、あくまで、自分が虐められる事に反対で、虐めには賛成だったのだ。
それが、17歳の僕には、大ショックだった。
今まで、クラスから虐めが無くなればいいと思い、自分も虐めにあうかもしれない恐怖を感じながら止めていたのに、自分は何のために頑張ってきたのか解からなくなった!!
僕はそれ以来、M君を助けるのをやめてしまった!!
M君は、さっそく「なんで止めてくれないんだ、なんで助けてくれないんだ!!」と僕に訴えて来たが、無視した。
僕の気持ちを、まったく理解していない事が解かったからだ!!僕の気持ちを少しでも解かっているのなら、そんな事は言わない
M君を助けない毎日は充実していた、部活や勉強に集中する事が出来た!!
ところが、それからしばらくして、事件が起きる!!
M君が、虐めっ子達の暴力によって、気絶したのだ!!
救急車が呼ばれる大騒ぎになり、M君は入院して脳の精密検査を受ける事態にまで発展した!!
いつものように止めに入っていたら、M君は気絶しなかったかもしれない、
倒れなかったかもしれない、やっぱり止めるべきだったのか?
そんなふうに、自問自答したけれど、結局、日々の忙しさに紛れ、月日は流れて行き、答えは出ないままだった
不幸中の幸いで、M君は一週間入院して、元気に戻ってきた
だが、何週間か虐められなかっただけで、M君はまた虐められるようになってしまった!!
僕も、二度と虐めを止める事はなかった、はっきり言って疲れてしまったのだ
これを読んでいる皆さんはどう思っただろうか?僕は偽善者だろうか?
途中で助けるのを止めるなら、最初から助けるべきではなかったのか?
人は人を助ける事はできないのか?
いろいろな命題が頭の中をグルグル回ってしまう
そんな中、最近、ある事を思い出した
高校の卒業式の日、M君が僕に近づいて来て
「いろいろ、ありがとうな!!」と僕に言って、去って行ったのだ!!
なんで、今まで忘れていたのだろうか?なぜ今思い出すのか?
また頭の中をいろいろな命題がグルグル回ってしまうけれど、風呂の中でM君の「いろいろ、ありがとうな!!」を思い出した時、僕はなぜか泣いてしまった!!
M君へ
M君、元気にしていますか?
僕は今、プロのシナリオライターを目指して、勉強中です!!
僕もあの時の君と同じように、仕事の先輩に理不尽な説教をされ、嫌がらせを受けています!!
でも、高校の頃、君に偉そうな事を言ったわけだから、逃げないで嫌がらせを糧にして成長したいと思います!!
あと、今、あの時の経験を活かして、虐めをテーマにしたシナリオを書いています!!
もし、今度、会ったら飲みましょう!!