● 細部を見ない危険性 その2

 

 前回の記事では「陰謀論」という胡散臭い物を全部投げ込めるゴミ箱の様なカテゴリが出来た事で、偏見があったとしてもそれに気づかずにシャットアウトしてしまう危険性があるという話をしました。

 

 

 今回はその詳しい説明をします。

 

 皆さんが陰謀論で困るワクチンの話で想像するのは主に荒唐無稽なリスクを恐れてワクチンを打たない人でしょう。 

 

 しかし、ワクチン接種に関してはアレルギーや周辺の感染状況、生活環境を鑑みて受けないという選択が正しい場合があるにも関わらず、それらも一緒くたにして「ワクチンを打たない人は陰謀論者」みたいな物言いをする人が本当に極端な例ですが居るのです。 

 

 リテラシーを持っているかの観点で言えば、自分が得た情報と開示された情報を踏まえた上で、どれほどのリスクを想定し行動に移すかの判断基準のバランスがしっかりしていない人はどちらの派閥にもいるという事です。 

 

 細部を見ないで拒絶するというのは、騙されるようなリスクがある事を一定の割合で排除出来るとも言えますが、逆に言うとそのフィルターを通り抜けたものにはなす術もないという話です。 

 

 それこそ感染症対策が良い例で、水際対策として感染源の持ち込みを制限出来ていれば、マスクの着用や手洗いうがいの励行その他感染源に対する知識が無くても問題なく過ごせます。 

 

 しかし一度水際対策を突破されてしまったなら、知識ゼロのままでは真っ先に感染してしまうのです。 

 

 これは何もコロナに纏わる陰謀論だけの話ではなく、詐欺等に対しても同じことが言えるんですよね。 

 

 詐欺に限らず人の心理に付け込んで誘惑する手口というのは多様化しています。 

 

 上っ面の詐欺っぽさだけ注意して遮断する様にしていても、結局相手の話の根本を理解出来ていないのであれば、上っ面を上手く装った手口に引っ掛かるだけなのです。 

 

 そう考えると、「○○は詐欺」「××は陰謀論」と安易に決めつける事の危険さが分かると思います。 

 

 ここで大事なのが以前の記事にも書いたような「一見怪しいと思われる事にも小さな正しい事があるかもしれない」という考え方なんです。 

 

 

 「怪しい」で一撃にきめつけるのではなく、「ひょっとしたら本当かもしれない」という視点で一度見てからしっかりと判断するという事ですね。 

 

 さらに詳しく言うと「主張が正しかったとして何故うさん臭さを感じるのか」という視点でも精査するとより理解度が深まります。 

 

 そうやって、まず否定したくなった事に関して一度肯定的な視点も持って精査する事は大事です。 

 

 以前の記事の手当療法が良い例ですが、「神秘的な力でたちどころに怪我が治る」は嘘でも、「患部の弛緩と血行促進で治癒しやすい状態を作るのには役立つかもしれない」くらいの認識で、プラシーボ効果も込みで採用する分には大きな問題ではないはずなのです。 

 

 今挙げた例も実は単純な肯定否定ではなく、「ある条件では真、ある条件では偽」という事であり、結構入り組んだ話になっています。 

 

 この「肯定、否定両面から考える」は嘘だと思った事の精査は勿論ですが、信じたいと思った事についても当てはめると良い効果があります。 

 

 自分が肯定的に捉えている事が他者から受け入れられなかった時に、相手が何に引っ掛かっているのかを理解出来ればより良い形でおすすめできますし、その過程で間違った主張をしていた事に気付く事もあるかもしれません。 

 

 自分の身を守る為にも、より良い情報との向き合い方をする為にも、怪しいと思った物を即シャットアウトしたり、良いと思った物を無条件に信仰しない様に、最低限否定と肯定の側面から、出来ることなら細部の細かい条件まで見るようにしましょう。