アンプの音は測定値だけではわかりません。しかし判断基準の1つにはなります。
アンプではわかりにくいので自動車に置き換えて考えてみます。
たとえば自動車が半径50mのカーブを時速50kmで曲がるときにシャシーが0.5mm歪むとします。(時速50kmではそんなに歪まないと思いますが。)
同じ0.5mmでも
・その捩れが前からくるのか後ろからくるのか
・リニアにいくのか降伏点のようなものがあるのか
・サスペンションがどう動いてグリップの変化がどう発生するのか
などのあらゆる要素が絡んで乗り味や性能が決まります。
しかしどれも0.5mm歪むという数字は同じです。これらは綿密なシュミレーションや測定でもわかるかもしれませんが、体で感じたほうがわかりやすい部分もあると思います。だからこそエンジニアの感覚は重要であり、その基本性能の先に個性がにじみ出るものだと思います。また限界を技術で越えるのも、越えられなかった部分のバランスをうまくとるのも、エンジニアにしかできません。
同じ条件で5mmも50mmも歪むシャシーに高性能なエンジンやタイヤを積んでいても生かせる部分は限定的ですし、設計が違えば高張力鋼板だから必ず歪みが小さいわけでもありません。部品や材料ではなく全体のバランスとその技術で判断するのが重要だと思います。(ただし車の場合は移動の道具ではなく乗ること自体が目的になることもあるため、好みが重視される部分は他の機械より大きいと思います。)
AoMでは測定値は必要最低限の性能が出ていることを確認するとともに、どの程度のやり込みをしているか、数字の先の世界があるかを判断してもらうために表示しています。個人的にはその数字の絶対値はあまり意味はないと思っています。たとえば最大出力だけ見てもほとんど何もわかりませんし。だから不利な部分も含めてグラフや波形を出しているのです。特にZwei Flugelは見る人が見れば部品や構造のほとんどが予想できるほどデータを出しています。
なお開発時は理論値と測定値を比較して検討していますから、公開するかどうかは関係なく測定は外せません。