AoMのアンプはICを巧みに使ったものがメインですが、個人的にはディスクリートアンプも好きです。
ICでは得られない結果が得られた時は最高に気持ちが良いですし、特にパワーアンプのように大出力が必要な時はどうしてもディスクリートで設計する必要があります。
でもICで実現できる結果を得るのにわざわざ遠まわりをする必要はないと思うので、ICで足りる部分はICを使って設計することも多いです。ICを使うにも多くのノウハウが必要ですからこちらも面白いです。最近のオペアンプは高性能なのでそれを生かすのも難しいのです。
IC並みの性能をIC以下のトランジスタ数で実現するのはあまり現実的ではありません。ICの中には必要だからあれだけのトランジスタがあるのです。それにモノリシックICは部品の特性もかなり揃っています。レーザートリミングして特性を調整する技術もあります。部品が少ないディスクリートアンプが何を目指したものなのかよく考えてみてください。
最近またパワーアンプをやっているのでディスクリートしていますが、THD+Nは十分に低くないと意味がないので少しちゃんと設計しました。そこが大きいならパワーアンプICで良いですし、それすら面倒なら安いプリメインアンプやAVアンプを買ってくればかっこいいケースに入った大出力のアンプに色々な機能が付いてきます。学習するとき以外であまり良くないものを作る理由はもうない時代です。
販売されているアンプを見ていると回路そのものにこだわっているものは意外なほど少ないです。お金がかかっているのはボディやコネクタ、意味もなく部品が多い部分や妙ちくりんなメーカーオリジナル部品です。電子部品は単価が安いため価格差に反映されにくいです。そのため部品数が2倍になっても製品価格が2倍になることはありませんが、だからといってこだわらなくていいわけではないです。
かかった人件費に見合う以上の性能を与え、そこにそれでもまだ安いと思わせる価格をつけることができるのが正しい工業製品の形だと思います。設計者がアッセンブル屋ではなく技術者ならなおさらです。
このような傾向が目立つのはアナログ回路は動いているように見える範囲が広いのも原因のひとつだと思います。個人で楽しむ分にはなんでも構いませんが買ってくれたお客さんを萎えさせるのだけはやめてほしいです。そういうのは最終的に電子回路や電子機器の不信感につながってしまいます。
好きでやっているはずのガレージ系でも設計理念や参考値すら全く答えられないところがいくつもありました。数値より大事なものがあるのは良いと思いますし、私もそういう部分はあると思っています。ですが測定しない理由にはなりません。見える数値のほうが狙ったところにもっていきやすいですし、見えない音を狙うにもきっと役立ちますよ。
ディスクリートも好きですよという話でした。