マサルに別れた本当の理由を聞かれた私。


トオルとのことが直接の原因ではなかった。


マサルとの別れを決定付けた理由。。。


それは、ヨシカズと出会って好きになったから。







「正直に話すって言ったよな?


今、全部正直に言えよ。」




目の前にいるマサルに冷ややかに言われ


トオルと一緒にいるであろうアケミからも


電話で同じことを言われた私は、


隠し通す自信なんてこれっぽっちもなかった。




ここでヨシカズのことを隠しても


つじつまが合わなくなって責められるのは


目に見えている。。。





マサルはヨシカズとのことは知らないだろうけれど


それがあとから他言されるよりは


私が今正直に話したほうが断然良い、


と判断せざるを得なかった。








私は重い口を開く。。。




トオルへの気持ちがないと分かったあと


ヨシカズと出会ったこと。


出会いはナンパだったこと。


サチと遊んでいたときにナンパされたこと。


カヨたちを誘って飲み会したこと。


ヨシカズには彼女がいることを知りながら


好きになっていったこと。。。




回らない頭の中で必死に考えながら


なるべく直接的な表現は避けるようにした。


マサルをなるべく傷付けたくなかったから。








マサルは驚きと寂しさが入り混じった表情をしていた。


もちろんそうだろう。。。


トオルとトシの事は聞かされたようだったが


ヨシカズの事は初耳。


しかも私の口から。






「・・・なんでそいつと付き合わなかったの?」


マサルが口を開いた。




「付き合うも何も。。。


彼女いるし、・・・私はそういう風に見てもらえてなかった。」




ここでヨシカズ側が私をセフレ扱いしていたようなことを


伝えると、再度マサルは声を荒げた。




「そんなヤツのせいで・・・!


俺らは・・・別れたのか?!


そんなヤツのどこがいいんだよ??!!」




本当だ。。。


マサルの言っている事が正しくて


何も言えなくなった。




「黙らないで言えよ?」




ヨシカズに惹かれた理由。。。


以前マユに聞かれたときも困ったが


特にここだ!!というのが見つからない。。。



しいて言うなら、振り向きそうにないから


追いかけている、というのが一番近いかもしれない。


好きになったきっかけはヨシカズの口の上手さに


まんまと騙されたから??





マサルになんていえば良いのか悩んで


また黙ってしまった。


















「誰から聞いたとかの問題かよ?!

早く言えよ!!!」





マサルに大きな声で言われ、体がビクつく。






確かに今、誰からマサルが聞いたのかなんて


マサルにとって大した問題ではない。







マサルは冷静に話そうとしてくれたようだったが


怒りが頂点に達しているのが一瞬でわかった。









怖い。。。


でも言わなきゃダメだ。。。




私は小さい声で話し始めた。






トオルのことを良いな、と思い始めた頃のこと。


マサルと倦怠期を迎えていた事実が


トオルに気持ちが向いた理由であったこと。






話しているうちに涙がこぼれた。


マサルに申し訳なくて。。。





「泣いたってしょうがないんじゃない?


・・・なんでトオルと付き合おうとしなかったの?」



マサルが怒りと冷めた感情が入り混じったような声で


私に質問してくる。





「・・・トオルに、マサルのこと話してたら・・・ね。


私に同調したんだよ。


同調って言うか。。。


・・・マサルは昔から調子に乗ってるとか。。。


マサルのこと・・・、あんまり好きじゃないとか。。。


トオルはマサルの友達なのに、


マサルのことを悪く言うのが信じられなかった。


・・・なんでトオルにマサルのこと、


悪く言われなきゃいけないの?って思ったら


トオルへの気持ちがないってわかって。。。


友達以上にはなれないって思ったの。。。」




私は涙声だったが、しゃくり上げるのを堪えながら


本心を話した。






トオルのことを友達以上だと思えなくなった理由。


仲良さそうな友達同士のはずなのに、


マサルのことを私に同調して悪く言ってきたことが


トオルへの気持ちが冷めたきっかけだった。




そんなトオルに違和感を覚えて


次第に気持ちが冷めてきて


マサルを含めた友人関係を崩してまで


付き合いたいと思えなくなった。







「・・・トオル、そんなこと言ってたの?


そっか。。。」



一瞬寂しそうな表情をしたマサル。




でも淡々と言葉が続いた。



「・・・トオルとのことは本当なんだな。」



頷く私。



「はぁ。。。


・・・トオルとのことで俺と別れたの?」



大きいため息をついた後、別れた本当の理由を聞かれる。






別れを選択した理由。


それはヨシカズが好きになったから。


トオルが直接の原因ではない。


正直に話す、と言ったがヨシカズの話を出すべきか否か。。。


この期に及んで迷いが出てしまう。





「えっ・・・と。。。


・・・それ・・・は。。。」



口篭る私にマサルは冷ややかに言う。



「正直に話すって言ったよな?


今、全部正直に言えよ。」




マサルは刺すように鋭い目つきで


私をじっと見ている。









ダメだ。。。


ヨシカズのことも言わないと。。。




隠し通せる自信がなかった私は


マサルにヨシカズのことを話すことにした。










アケミからの突然の電話。

マサルにトオルのことも

トシとの1件も隠したまま

ヨリを戻した私を責められた。





確かに私のしたことはひどい。

トオルもトシも、マサルの友達だ。



トシとは成り行きでHしてしまったとはいえ

マサルを傷付ける事実だということは確か。

マサルと別れる前に、トオルと友達以上の雰囲気で

何度もデートしたことも紛れもない事実。







アケミが怒る理由は、トオルのことが好きだからだ。

トオルやトシ達と飲み会をしたことがきっかけで

アケミからマサルと私のことに関してまで

首を突っ込まれることになるなんて。。。



このときの正直な私の気持ちだった。













アケミとの電話を切ったあと、すぐそばにいるマサルが

私に言う。


「電話…誰?

怒ってるような声、聞こえたけど?」


マサルの声は私のことを心配している風ではなかった。











もう言い訳なんて出来ない。

正直にマサルに話すしかない。

逃れられない。。。







「…アケミだったよ。

マサルとヨリ戻したこと…知ってて。

…。

…正直に…全部

…話せって言われた。」


おどおどしながらマサルに話す。







アケミやカヨとは、まだ面識がないマサルだったが

同期の友達として話はしていた。


マサルが帰省した翌日に2人で飲んだときに

あの飲み会の話もカズヤから聞いていたようで

マサルからその話題に触れてきた。









あっ。

もしかして…。

マサルにトシとの話をしたのって…。

カズヤなの?



ヨリを戻したと聞いて、カズヤがマサルに??



でもトオルとのことは?

トオルも誰にも相談できないって言ってたし。。。



アケミとマサルの接点はないから

一体誰がマサルに私のことを言ったんだろう。。








「正直に言えって?

…ふ~ん。。。

…話してもらおうか?」


私を寂しそうな目で見つめながら

冷ややかにマサルが言う。





言わなきゃいけないんだと決心したが

どう切り出せばいいのか分からず、

思わず考えていたことをマサルに聞いた。




「…マサルに言ったのって

…もしかして、カズヤ?」



そう言い終わると、マサルは声を荒げた。



「誰から聞いたとかの問題かよ?!

早く言えよ!!!」



さっきまでの平静さを保ったマサルは

目の前にはいなかった。
トオルとのことだけじゃなく、トシとのことまで

知っているマサル。



マサルに何て言えばいいのか

動揺していると、私の携帯が鳴った。





こんなときに・・・。



マサルは真っすぐに私を見ている。

鳴り続ける携帯。

間が悪いし、電話に出たところで

この状況がなくなるわけじゃない。








鳴り続ける携帯がマサルに口を開かせる。


「…出たら?」






私は頷きも出来ず、テーブルの上に置いてある携帯を手に取る。







ディスプレイに表示されているのは

「アケミ」の名前と番号。





アケミとは会社で顔を合わせれば話すが

元々あまり連絡を取り合ってなかった。

嫌な予感がする。




何よりトオルを気に入ったというアケミ。

私のことをアケミに話していたら

アケミ的に面白くないはず。










すぐに出ない私にマサルが言う。


「早く出なよ。」









アケミからの電話に嫌な予感がしつつも

出ないわけにいかない。



ほとんど全てを知っていると思われるマサルの前。

ここで出なかったら、一層怪しいことは自分でも解る。














「…もしもし?」

意を決してアケミからの電話に出た。





「…ユカ?

今、マサル君と一緒なの?」



アケミの声は普段とは違っていた。

刺があり、口調も穏やかではない。





「うん。一緒だよ。」


なぜマサルと私がいることを知っているの?

頭の中が?でいっぱいになる。








「ユカ、マサル君とヨリ戻したんだって?

…マサル君、知ってるの?

ユカがしたこと。」



アケミに強い口調で言われる。



圧倒されたのと図星なのとで何も答えられない私。





アケミは続ける。




「トオルとのことも、

…もちろんトシ君とのことも

言ってないんだ?

ユカ、最低だよ!

あの飲み会の日、トシ君たちとユカが帰った後

トオルは私の部屋で…ずっと

俺もついて行けば良かったって

朝までユカのこと心配してたんだよ?

…私はトオルの話聞いてるしかなかったけど…。

トオルの気持ち…、知ってて!

ユカ本当にひどい!!」






アケミはきつい口調だが、声を荒げることはなく

私にはっきり言い続ける。





「…マサル君とヨリ戻すなら

きちんと全部話しなよ!

黙ったまま隠しておくなんて

最低だからね。」






アケミははっきりしている方だと思うが

何よりトオルが私のことを想っている事実と

私があっさりマサルとヨリを戻した事実が

腹立たしいんだとわかった。








アケミの声の後ろは、やけに静かで

誰かいるのだろう。



きっとトオルかな?



直感でそう感じた。





トオルの目の前で、私にはっきり言うことで

トオルを擁護しようとしているんだなと

私は思った。








アケミに対して、相槌程度の返事しか出来ていない私。






アケミは最後に

「マサル君に全部話しなよ?

本当に。

…わかった??」

と聞いてきた。





小さな「うん」では納得できないアケミ。


「話すんだよ?!

わかってるんでしょ?!」


一層強くなる口調に私は

「…わかった。。。」


短い返事をするのが精一杯だった。

「俺と別れたのはトオルが原因なの?」



マサルの口から出てきた言葉。


動揺と焦りで喉も口の中もカラカラに


乾いていくのがわかる。




「どうして?」



何か言わなきゃと思った私の口から


やっと出てきたのはこんな言葉だった。










一体誰から聞いたんだろう。。。


トオル本人?


いや、違うだろう。


トオルが言ったならもっと早くに知っているはず。







平静を装おうとしても無理だった。


自分でも普段と明らかに違うのが手に取るようにわかる。












マサルは私から目を逸らすことなく続ける。



「・・・何があったの?」



マサルは無表情に近かったが


怒りを隠そうとしているのがわかった。






「・・・。


えっ・・・と。。。」



しどろもどろの私。



頭の中はマサルに対してなんていえば良いのか、


一体誰からマサルは聞いたのかの2つが


ぐるぐる回っている。











「・・・やっぱり本当なんだ。。。


・・・最初聞いたときは冗談かと思ったよ。


俺と別れたのは、トオルのこと好きになったから


・・・だったんだ。。。」



マサルは怒りと寂しさが入り混じったような表情で


でもはっきりと私にそう言った。







返事が出来ない。


トオルとのことが別れを決定付けたのではないけれど


マサルに隠れるようにトオルと会ったりしていたのは事実。


一時期はトオルのことが好きだと思ったことも事実。




誰から伝わったのかはわからないが


マサルはトオルとのことを知っている。。。


言い訳なんて出来ない状況。


頭ではわかっていても、今さらなのに


言い訳を考えてしまうズルい私がいる。




どうしよう。。。


どう言ったらいいんだろう。。。








ぐるぐると頭の中で考えていると


マサルが私に言った。





「・・・それからさ。。。


ユカ、・・・トシとヤッたって本当なの??」





トシとのことも知っているの??


もう逃げられない。。。


悪あがきで何とかこの場を逃れる術はないかと


考えていたそのとき、私の携帯が鳴った。