神威の不思議な振動は梅ヶ丘のペントハウスに戻っても続いていた。
「これじゃ、神威を振り回すわけにもいかないなあ」
「ねえ、神威は何かのメッセージを発信してるんじゃない?」
「メッセージ? 神威が? うーん・・・じゃあ、どうすればいいと思うの莉実は」
「そうねえ・・・このペントハウスに持ってくるんじゃなくて、静剛流の道場の神棚にお供えしてみたら?」
「なーる。あの道場はもともと阿伎留神社の氏子だったお祖父さんが建てたんだった。あの神棚、阿伎留神社に関係しているはずだよ」
ということで、ペントハウスに腰を落ち着ける暇もないまま、僕たちはひとり待ってた絵美も一緒に道場に行った。
道場に入り、神威を鞘に納めたまま、神棚の前に置く。すると一瞬、神威全体がビカッと光ったように見えた。
「あ、ダイちゃん。神威、唸らなくなったわよ!」
絵美がそう叫んだ。
そうなんだ。さっきまで「ブウーン」という感じで低く唸り声を上げ続けていた神威が、神棚にお供えした途端、静かになったんだ。
「今晩は、ここにいてもらおう」
ということで、僕たちは神棚の榊を新しく庭から切ってきて換え、お神酒、お米、お塩も新しくした。4人で礼、拍手をして、そっと道場を閉めた。
「なんだか生き物みたいね、神威」
絵利香がそう言ったけど、実際、神威には何かが宿ったように思えた。
電話してあったので、僕たち4人はダイの自宅マンションにまっすぐ向かった。夕食をみんなで食べるんだ。敦子叔母を入れた8人の大食事会になる。
「キャー! エルマちゃーん!」
絵美莉実は、前と同じようにエルマに抱きついてキスしていた。エルマはニコニコしながらも、ちょっとうんざりしたような表情を見せた。
僕たちが到着した時は、まだママと敦子が調理中だったので、絵利香が助っ人に立った。僕は絵美莉実とエルマの4人でお風呂に入って汗を流した。
「エルマちゃんって、ほんとにどこもかしこも真っ白なのね」
「うらやましいなー。私なんて外で暴れてるから、ほら、真っ黒!」
「ダイちゃんも陽に焼けてないところは白いのねえ」
「うん。うちの家族は基本的に色白なんだ。でも陽に焼けてないけどここは黒いよ」
僕は湯船から立ち上がって、下半身を晒したんだけど、3人ともそれを無視した。悲鳴が出ないとカッコつかないじゃん! すべったまま、お風呂タイムは終わった。
にぎやか過ぎる夕食の後、絵里香はアルコールが入ったからと、泊まっていくことに。このマンションで空いてるのは僕の部屋だけだからそこを譲る。僕と双子はタクシーで梅ヶ丘に戻った。
「ダイちゃんの家族、もっと広いおうちに住み替えないの?」
「そうだなあ。ちょっと考えてみるよ。駅の近くには僕のビルがあるけど、冴子が住んでるから・・・」
「あの市川の西家の洋館、あそこは?」
「姉ちゃんたちが文句言いそうだな。東京じゃなきゃいやだって」
「すっごく素敵なのにね」
「エルマや玲美姉ちゃんは小学校や中学校の友達から離れたくないだろうね」
「じゃあ、やっぱり今のマンションの近くで一軒家を借りるのね」
(その⑩につづく)