神威(カムイ)の剣 タイム・コントローラーDAI -5ページ目

神威(カムイ)の剣 タイム・コントローラーDAI

小学6年生の美少年・三島大。古武術とタイム・コントロール能力を駆使して、さまざまな敵を殲滅していく超絶アクション小説。

 

 神威の不思議な振動は梅ヶ丘のペントハウスに戻っても続いていた。

 

「これじゃ、神威を振り回すわけにもいかないなあ」

「ねえ、神威は何かのメッセージを発信してるんじゃない?」

「メッセージ? 神威が? うーん・・・じゃあ、どうすればいいと思うの莉実は」

「そうねえ・・・このペントハウスに持ってくるんじゃなくて、静剛流の道場の神棚にお供えしてみたら?」

「なーる。あの道場はもともと阿伎留神社の氏子だったお祖父さんが建てたんだった。あの神棚、阿伎留神社に関係しているはずだよ」

 

 ということで、ペントハウスに腰を落ち着ける暇もないまま、僕たちはひとり待ってた絵美も一緒に道場に行った。

 

 道場に入り、神威を鞘に納めたまま、神棚の前に置く。すると一瞬、神威全体がビカッと光ったように見えた。

 

「あ、ダイちゃん。神威、唸らなくなったわよ!」

 

 絵美がそう叫んだ。

 

 そうなんだ。さっきまで「ブウーン」という感じで低く唸り声を上げ続けていた神威が、神棚にお供えした途端、静かになったんだ。

 

「今晩は、ここにいてもらおう」

 

 ということで、僕たちは神棚の榊(さかき)を新しく庭から切ってきて換え、お神酒、お米、お塩も新しくした。4人で礼、拍手をして、そっと道場を閉めた。

 

「なんだか生き物みたいね、神威」

 

 絵利香がそう言ったけど、実際、神威には何かが宿ったように思えた。

 

 

 電話してあったので、僕たち4人はダイの自宅マンションにまっすぐ向かった。夕食をみんなで食べるんだ。敦子叔母を入れた8人の大食事会になる。

 

「キャー! エルマちゃーん!」

 

 絵美莉実は、前と同じようにエルマに抱きついてキスしていた。エルマはニコニコしながらも、ちょっとうんざりしたような表情を見せた。

 

 僕たちが到着した時は、まだママと敦子が調理中だったので、絵利香が助っ人に立った。僕は絵美莉実とエルマの4人でお風呂に入って汗を流した。

 

「エルマちゃんって、ほんとにどこもかしこも真っ白なのね」

「うらやましいなー。私なんて外で暴れてるから、ほら、真っ黒!」

「ダイちゃんも陽に焼けてないところは白いのねえ」

「うん。うちの家族は基本的に色白なんだ。でも陽に焼けてないけどここは黒いよ」

 

 僕は湯船から立ち上がって、下半身を晒(さら)したんだけど、3人ともそれを無視した。悲鳴が出ないとカッコつかないじゃん! すべったまま、お風呂タイムは終わった。

 

 

 にぎやか過ぎる夕食の後、絵里香はアルコールが入ったからと、泊まっていくことに。このマンションで空いてるのは僕の部屋だけだからそこを譲る。僕と双子はタクシーで梅ヶ丘に戻った。


「ダイちゃんの家族、もっと広いおうちに住み替えないの?」

「そうだなあ。ちょっと考えてみるよ。駅の近くには僕のビルがあるけど、冴子が住んでるから・・・」

「あの市川の西家の洋館、あそこは?」

「姉ちゃんたちが文句言いそうだな。東京じゃなきゃいやだって」

「すっごく素敵なのにね」

「エルマや玲美姉ちゃんは小学校や中学校の友達から離れたくないだろうね」

「じゃあ、やっぱり今のマンションの近くで一軒家を借りるのね」

 

 

 

(その⑩につづく)

 

「二人ともどうしたの? 何か気分でも悪いの?」

 

 絵里香は僕たちの顔を見るなりそう言った。あとで聞くと、ふたりの顔は蒼白だったそうだ。

 

 

「そこ、郵便局のとこ、右に入って」

 

 僕は檜原街道を少し戻ったところにある阿伎留(あきる)神社(じんじゃ)への脇道を指示した。

 

 参道は狭い。鳥居の手前の道の脇にキャンピングカーを停め、3人で歩いて拝殿に向かう。

 

「あー、すごい霊氣!」

 

 莉実が大きな声でそう言った。そう、それは僕にも感じられた。阿伎留神社の正面拝殿からは、清々しい氣が滔々(とうとう)と流れ出していた。僕は、おそらく莉実も、先ほどのおどろおどろしい妖怪のような触手の穢(けが)れがあっという間に消え去っていくのを感じていた。

 

「ダイちゃん、この神社、すごいね」

「うん。ここにお参りするの、久しぶりだけど、こんなに霊力があったなんてこれまで気が付かなかったよ」

 

 僕と莉実、それに絵里香はしばらく拝殿前にたたずんでいた。

 

 突然、莉実がこう言った。

 

「ダイちゃん、神威、持って来てる?」

「え? ああ。車の中にあるよ」

「すぐに取ってきて」

 

 僕は莉実の真剣な表情に、すぐに従った。

 

「神主さま、いらっしゃるかしら?」

「うん。社務所に宮司さまがいらっしゃるはずだよ」

 

 僕は社務所の戸をあけて礼を乞うた。

 

 宮司様が出てきた。僕の知っている先代ではなかったけど、叔父の実家が氏子総代だったことを告げると、本殿に参内し、お祓(はら)いしていただけることになった。

 

 宮司が正式の装束に着替えるのを待つ間、莉実は用意してくれた三宝を拝殿の中央に置いた。

 

「莉実。何するんだい?」

「いいから黙って見てて」

 

 莉実は三宝を床の上に置き、その上に抜き身で神威を置いた。

 

それから莉実が行ったことの半分も意味が分からなかったけど、彼女が神威に何かの力を吹き込もうとしているということだけはわかった。

 

しばらくすると、変化が表れ始めた。本殿の内部が鳴動し始めたのだ。

 

空間がゆがんだように見えたり、大きな氣の流れが神威の青黒く光る刀身に吸い込まれたと思ったら、神威全体が真っ赤に染まった。次の瞬間、その赤い色はすーっと薄くなり、全体が透明になった。そして「ぎゃわん」というおかしな音とともに三方の上にえびぞった姿を現した。

 

(あー曲っちゃった!)

 

と、びっくりしながら見ていると、神威はゆっくりその刀身を鎮めていき、しばらくするとまっすぐの元の姿に戻った。それからキラキラ輝く細かい、短い光の矢の束が神威全体を包んだり、様々な異変が連続した。

 

「終わったわ」

 

 がっくりと首を垂れて、いかにも全力を使い切ったかのような莉実を絵里香がやさしく抱きしめていた。

 

 

「いったい何をしてたんです?」

 

 御幣(ごへい)を手にした神主の装束の宮司、阿留多伎 潔さんが扉を少し開け、恐る恐る尋ねた。

 

「あ、申し訳ありません。お待ちしている間に、何かが起きたみたいで・・・」

 

 僕はそう答えるしかなかった。

 

「いやー。恐ろしくて、戸を開けるのさえためらわれましたよ。こんな異常な体験をしたのは初めてです」

 

 宮司によると、僕たちが本殿に籠ってしばらくすると、あたりがいきなり暗くなり、本殿の中から様々な色の光の帯が流れ出し、低かったり高かったりする奇妙な音がずーっと聞こえていたという。

 

「ええ。中では霊氣が渦を巻いて唸ってました」

 

 そう言ったんだけど、何か大変なことが起きていたのは間違いないだろう。

 

 3人で7号線を都心に向かっている車中、僕はようやく莉実にさっきのことを聞く気になった。僕の膝の上の置いた神威は、阿伎留神社からずーっと「ビーン」というような振動を発していたんだ。もちろんいままでこんなことはなかった。

 

 

「ふう! あー疲れたー!」

「ねえ、莉実。さっき本殿で何をやったんだい? 君が神威に何かとんでもない力を吹き込んだ。そんなふうに見えたんだけど」

「・・・さすがのダイちゃんにもわからなかったのね。あれ、私がやったんじゃないの。私、あの阿伎留神社の霊氣を感じた瞬間、あの神社の霊氣は人間以外のものにも込められるって感じたの。でもどうやればいいかは分かってなかったわ」

 

 

「やっぱり霊氣、か・・・それで?」

「で、あの神社の中で一番霊力が強そうな本殿の真ん中に三宝を置いて、神威をセットしたの」

「ふーん」

「で、セットしたはいいけど、どうしようかって考え始めたとたん、いきなりあれが始まったの」

「え、あのものすごいエネルギーの流れ、あれ莉実がやったんじゃないの?」

「違うの。私はただ茫然と見ていただけ」

 

 つまり、神威は阿伎留神社の神に受け入れられ、穢れを祓われ、霊力を吹き込まれた、ということだった。

 

 

「もしかすると、これで京極のあの気持ち悪い触手を斬れるかも」

「そうか。莉実はそれを・・・そうか、ありがとう、莉実」

 

 僕は莉実を抱きしめ、キスした。莉実はにっこり微笑んだ。

 

 

 

(その⑨につづく)

 

 禊(みそぎ)神社をグーグルマップで見ようとしたら、まだ建設途中の写真だった。

「なんだ、ほんとに出来たばかりの社(やしろ)なんだ・・・じゃあ、いっかい現地を偵察に行くかな」

「私も行くのね?」

 莉実がそう言った。

 

「うん。京極の霊力というのがどれだけのものか、全然わからないから、アンテナになってほしいんだ」

「彼の触手を感じたら、知らせるってこと?」

「そう。だから、あと1週間、その力を磨いていてね」

「はい!」

 

ということで、僕と莉実は次の日曜日、あきる野市に向かった。ドライバーは絵里香。車は彼女の愛車のジャガーXEではなく、以前僕が冴子と岐阜まで乗って行ったキャンピングカーだった。

 

「こんどキャンプに行くときは、あのキャンピングカー使うんでしょ? 冴子さんと交代で運転することになると思うから、慣れておかなくちゃ」

 

 ということ。

 

「絵里香、ここでいいよ」

 

 国道7号線を武蔵五日市まで走り、それに続く檜原街道をしばらく行くと、左に「この先阿伎留神社」という標識が見える。その数キロ先に片側2車線の、本線より立派な脇道が見えた。

 

「禊(みそぎ)神社」と堂々と大書された額が掲げられた巨大な鳥居がその4車線の参道をまたいで林の手前に建っている。まわりの穏やかで、古色蒼然とした風景を圧する異様さだった。

                                           

「小中野。ここで間違いないな」

 カーナビは等高線だけの地図と地名が一つだけだった。東側数百mに五日市高校があるはずだ。

 

 僕と莉実は幼い恋人同士のデートのハイキングで、この場所に立ち寄ったというふうを装った。どこに監視カメラが潜んでいるかわからない。二人は黙って鳥居をくぐった。ここから「霊話」で会話することにした。

 

 3日前の夜、莉実といつもの思念合戦をやっているとき、莉実が思わず快感の声(エーテル体の声?)を漏らしたのを、僕は聞きつけた。僕も意識して思念で語りかけた。

《莉実、聞こえるか?》

《・・・あ、これダイちゃんの声なの? うん、聞こえるよ》

 

 こうして僕と莉実は肉体の声帯は全く使わず、精妙体で会話ができるようになったのだ。

 

実験の結果、声が届く、聞こえるのは距離には関係しない、ということが分かった。実験した最遠距離はちょっと前まで西 透として住んでいた、千葉県市川市と横田基地。直線距離にして54㎞。この距離を隔てても、隣の部屋から行っても、声の大きさや明瞭さは全く同じだった。

 

おそらく火星と地球に離れていてもこれは変わらないだろうと思われた。僕はこの会話を『霊話』と名付けたのだ。

 

《気が付いてる? 監視カメラだらけよ》

《うん。マイクもついてるはずだ。このまま霊話で話すよ》

 

 しばらく進むと、真っ赤な建物が遠くに見え始めた。春日造(かすがづくり)の本殿と入母屋造(いりもやづくり)の拝殿は、RC造(鉄筋コンクリート造り)らしい。壁と柱は朱色に塗られていた。屋根は銅板葺きで、金はかかっているようだ。

 

《すごいデカさだな》

《京極ってお金持ちなのね》

《どう? 何か感じる?》

《・・・うーん、まだ何も・・・アッ!》

 

 莉実が悲鳴を上げた理由は僕にもわかった。何か得体のしれない、大きな舌のようなものが僕たち二人の精妙体を舐めに、いや触りに来たのだ。

 

「帰ろ!」

「うん」

 

 僕と莉実は霊話を中止し、普通の会話で話した。もう遅いかもしれないけど、それ以上霊話を続けるのは危険だと二人とも思ったからだ。

 

「ふーっ! あー怖かった!」

 

 鳥居からかなり離れてから、ようやく莉実がそう言った。

 

「あれは一体なんだったんだろう。あの舌みたいな、気持ち悪い触手はただ事じゃないな」

「うーん。またあそこに行くのは何だかいやだなー、私」

「うん。何とかしなくちゃね」

 

 僕たちは絵里香を呼び、キャンピングカーに乗り込んだ。

 

 

 

(その⑧につづく)

 

「作戦って言ったよね。僕が考えてるのは、莉実を一緒に連れて禊(みそぎ)神社に行くってことなんだ」

「はい。そう思ってました」

「えー! 私は?」

「今回は誰も殺さないし、こちらの人数は少ないほうがいいと思う」

「・・・」

 

 絵美は不満気だったけど、僕の決定に異を唱えることなど全く考えないのがこの二人の美少女だった。

 

 

 禊神社は東京都の西の端、あきる野市にある。このあきる野市には阿伎留(あきる)神社という、わが国でも最古に近い歴史を有する神社がある。「阿比留(あびる)文字(もじ)」という独特の神代(じんだい)文字を使った古文書が多数所蔵され、日本が大和朝廷によって統一されるはるか以前から、この地で人々の厚い信仰を集めてきたのだ。あきる野市の名前もこの阿伎留神社に由来する。

                                                         

 

「禊(みそぎ)神社って、出来たばかりじゃない」

「そうだね。ホームページを見ると阿伎留神社の分社だとしてるけど、あんまり関係なさそうだね」

「ダイちゃん、阿伎留神社には何度も行ってるんでしょ?」

「うん。叔父の実家は阿伎留神社の氏子総代をやってたからね。夏なんか、この神社にお参りしてから秋川渓谷にキャンプに連れてってもらうのが楽しみだったんだ」

「こんど私たちもキャンプに行きましょうよ」

 

 絵里香が珍しく口をはさんだ。

 

「あれ、ママ、アウトドア苦手じゃないの?」

「いつそんなこと言った? 私、単独登山で冬のモンブランに登ったこともあるのよ」

「へー! それは失礼しました。じゃあ、今度の件が片付いたらみんなでテント張りに行こ!」

「やったー!」

「ダイちゃんちのみんなは?」

「姉貴二人とダイママは絶対に行かないだろうな。虫が死ぬほど怖いんだから。エルマは連れて行こう。あの子、虫が大好きっていう変わった子だからね。あ、そうだ、冴子も連れてかなくちゃ。彼女、秋川でフライフィッシングしたがってたから」

 

 絵里香は「由里(ゆり)ママ」、三島 大のママは「大(ダイ)ママ」とみんなが呼ぶようになったのは、井上家と三島家を初めて対面させた時からだった。

 

 

「キャー、かわいいー!」

絵美と莉実はエルマを見るなりふたりがかりで抱きしめた。

 

エルマはびっくりしたような顔をしたが、僕から事情を聴いているので、にこにこしてハグされていた。

 

「いつも息子がお世話になっております」

 

ママと絵利香の対面はなんだかおかしな具合だった。僕のことを自分の娘だと思い始めている絵利香にとって、ダイの母親という存在は奇妙なものに感じられるのだろう。

 

僕自身が女の子の井上由里という「完全な」戸籍を持っていることも、このとき発表した。

 

「前からおかしな子だと思ってたけど、女の子になっちゃったのね」

 

ママがそう言ったので、みんな大笑いした。

 

彩音(あやね)が18歳で最年長。玲(れい)美(み)()()()が15歳、絵(え)美(み)、莉(り)実(み)が13歳、僕・ダイと由里(ゆり)が12歳、エルマが10歳。6人の美少女と1人の美少年。それに二人の超美人ママ。それに加えて叔母の敦子、僕の恋人の冴子。この美女美女軍団の集うわが家は、普通だったら男どもの欲望の対象として、絶えず狙われ、付け回されていただろう。

 

でも、「史上最強の戦士」と自負する僕、三島 大の家族たちだ。そんな気配を見せるだけで、その者は抹殺される。これは広報しなくても自然に情報としてこの世界をめぐるものなのだろう。ストーカーの影すらないまま、みんなのんびり生活をエンジョイしていた。

 

 

 

(その⑦につづく)

 

 

京極明良は依然としてネット上で煽り続けていた。

 

「この美しい国土、ひとびとの純真な心根、清潔、高潔な生活習慣、全国各地で育てられた豊かな文化。それらを臆面もなく踏みにじり、日本国民の心の中を低劣なモラルで蹂躙し、金に飽かせてわが国土を買いあさる。これらは中国人個人の所業に見えるが、実は中国共産党の党大会で選ばれた指導者たちが、ひそかに練った戦略に基づく『計画的侵略』なのだ」

 

「われわれJJJおよび同志諸君はこの横暴極まりない中国共産党の尖兵どもを殲滅しなければならない。目に余る下品な行為、行動を繰り返す中国人どもを排斥せよ!」

 

「韓国は国内の施政に失敗している。今や韓国経済は外国資本に牛耳られ、国民の労働資産は韓国を富ますことなく海外に流出している。この政治的・経済的失敗を覆い隠すべく、韓国政府は国民の不平不満を『敵国・日本』に向けるように仕向けている。ありもしない従軍慰安婦問題や、歴史的にみて我が国固有の領土である竹島の占有権問題を持ち出し、それを日本の横暴と扇動しているのだ。愚かな韓国国民はこの明らかに強引、牽強付会な扇動にやすやすと乗り、わが日本を敵視し、ことあるごとにわが同胞に刃を向けてくるのだ。この愚かなる韓国国民に同情の余地はない。歯には歯を! 刃には刃を!」

 

 ますます調子付いているのがわかる。

 

 

「作戦を立てなくていいの?」

 

 絵美が尋ねた。

 

「そう。今度の敵はおそらく京極ひとりだろうと思うし、これまでは自らの手は汚してないと思うから、日本の司法では裁けないだろうね」

「殺すの?」

 

 莉実が物騒な物言いをした。

 

「いや、本人に会うところまでだよ」

「え! 会うだけ?」

「うん。実は僕、京極の思想を全面的には否定しきれないんだ」

「そう・・・中国と朝鮮だものね」

 

 国連安保理での「タイムコントローラーBOX」の一件以来、僕と中国は相性が悪い。半島については、北のお坊ちゃま将軍が中国に逃げ込んで以来、脅威ではなくなっているけど、好きになるってとこまで関係が好転したわけじゃない。

 

 かわいそうなのは台湾の人たちだった。言葉は北京語と広東語が多いし、外見では区別がつかない。服装のセンスが中国人より、少しだけあか抜けてるくらいが「差」といえるくらいだった。

 

 もっとも台湾の人、特に老人たちは日本語がしゃべれる人が少なくない。そのせいかどうか、若い層でも日本語をある程度なら話せるという人も多い。彼らは国連が「独立国として承認しない」と言い渡してからは、シンパの多い日本との関係を大切にしてきた。日本を旅行する場合には、できる限り日本語をしゃべり、行動も控えめだった。

 

 このところのJJJ騒ぎでは、日本旅行を控える動きが出ているものの、「赤い中国」にどこかで一矢報いたいと思っていた人が多かったようで、台湾国内のネット上ではJJJ支持を標榜するブログやツイッターが目立つようになってきた。

 

「僕も絵美莉実も神道系だし、古武術で育っているからね。JJJの言いたいところはある程度理解できるんじゃない?」

「ええ。私には中国人や韓国人に対する偏見はないと思うけど、鹿児島と違って東京に来てみたらものすごい数の中国人がいるじゃない? ちょっと違和感を覚え始めたってところかな」

「莉実は?」

「私は・・・言い方が正確じゃないと思うけど、オーラが見えるようになったというのが大きいと思うな」

「?」

「肉体や言葉といった物理的なものの形や音じゃなく、エーテル体やアストラル体が見え始めてから、その『非・物質的存在』の色や形や大きさ、エネルギーの強さってもので相手を見るの。そうすると、ダイちゃんはものすごいエネルギーの塊。エーテル体やアストラル体の大きさはどんな大人より巨大だし、オーラの大きさも変化の激しさもすごいの。でもそのオーラ、時々いやらしいというか、性欲の塊みたいな色になってるわよ」

「あー。そんなのわかるの?」

「ええ。同年代の男の子が私や絵美を見てる時には、たいていそういう色のオーラになってるもの。ああ、この子たち、私たちを見て欲情してるんだなーってわかるわ」

「莉実と付き合う男は大変だなこりゃ」

「だから、人種や年齢や宗教の違いなんかより、精妙体を見ればそのひとの真実の、というか本質が見えちゃうみたいね」

「こわ~!」

 

 これこそまさに「宗教家」、「教祖」の素質だった。さらに莉実は僕との絡み合いで、相手の思考に干渉することができつつあったのだ。

 

 

 

(その⑥につづく)