神威(カムイ)の剣 タイム・コントローラーDAI -3ページ目

神威(カムイ)の剣 タイム・コントローラーDAI

小学6年生の美少年・三島大。古武術とタイム・コントロール能力を駆使して、さまざまな敵を殲滅していく超絶アクション小説。

 僕の島のインフラが完成した。

 僕が長崎県から30億円で買い取った「西神島」だ。北朝鮮の教祖・鮮の夫人と娘たちを住まわせるのが最初の目的だった。僕は3回、下見に訪れている。


この60平方キロの島には最盛期には5,000人の住民が住んでいた。その住まいや学校、病院、商店街や映画館などは人が住まなくなって50年ですべてボロボロに朽ち果て、崩れかけていた。軍艦島と異なり、文化的、歴史的な価値のある建物は皆無だ。


僕は建設重機を入れ、すべての建物を撤去させた。RC造の建物は、都会なら解体には時間がかかる。しかしここは海に浮かぶ無人島なのだ。騒音や振動、粉塵に文句をいう近隣住民はいない。ダイナマイトを大量に使い、一気にぶっ壊した。重機で新たに作る港湾予定地に瓦礫を運んだ。


この島は周りの海の潮の流れが速いのと、岸壁が切り立っているので、港湾設備をしっかり作らないと船が接岸できないのだ。逆に言えば秘密裏に上陸することが出来ないから安心だった。なにせ女性しか住まない島なんだからね。


建物がすべて撤去されると、広大な更地が出現した。約8平方キロ。そこに僕の資金で機能的な、かつ優美な施設、建築物の立ち並ぶ新しい町並みを作り上げたのだ。


何度も足を運んだ。都市計画の専門家、建設会社、住宅専門の建築家などと打ち合わせを重ねてきた。総額3,000億円。僕のスイスのプライベート・バンクのお金は半分になった。でも、生活費に困ることはない、と思う。


醜い都市の共通点。それは建物に統一性がないこと。江戸時代の江戸の町並みは美しかったに違いない。建築の様式が同じだったからだ。昭和40年代の東京の写真を見ると、その不統一さ、色遣いのまちまちさ、看板の乱立、電柱に取り付けられたさまざまな付属物など、醜さの塊だ。そういった景観は僕の美学に反する。


電柱は1本も立てない。電線、水道、ガス、弱電ケーブルなどはすべて車道の中央分離帯の地下に作った専用地下道に埋設。交差点下に「HUB(ハブ)」を設け、そこから枝分かれさせる。


道路はすべて石畳。長崎県の有名な石材、肥前六方石がこの島では大量に採れたので、それを使った。明るい色の玄武岩だ。六角形の石柱で、薄く製材出来るから、敷石にはぴったりだった。ビルの外壁にも使える。


車道と自転車道と歩道の完全分離。町の中心に建てる「総合文化センター」となる12階建てのビルは外壁を赤レンガで覆った。その周辺の建物は2階建てまでの高さ制限。このビル群も赤レンガの外壁だ。


住居地区の建築様式は南ドイツ風にした。柱や筋交(すじか)いを現わしにした漆喰(しっくい)壁。窓は木製サッシの鎧戸(よろいど)。普通の雨戸より頑丈で、台風の時でも安心だ。漆喰はソニアに送ってもらって「ニュー漆喰」で左官した。樹脂分が多いから、海風でも耐えられる。屋根の瓦は赤レンガ色。


上から赤い屋根、白と焦げ茶の壁、深緑の鎧戸の窓、庭の芝生の黄緑、家の基礎部分の石積みとアプローチの石畳のグレー。この島の住宅は、すべてこれで統一した。丘の上から眺めると、非常に美しい街並みだ。下手すると観光地になってしまいそう! でも、若い女性と女の子が住む島だもん、これくらいかわいくったっていいでしょ。


最初の計画では、小型飛行機が離着陸出来る空港も作ろうと思ってたんだけど、滑走路の長さがどうしても取れない。町の真ん中に滑走路を通すならできるけど、そんなの本末転倒だから、ヘリポートにした。島の北に2か所。南側に1か所。よほどの悪天候でなければ、大型ヘリがランディングできる。マイクにオスプレイを1機置いておくように頼んだ。エリクソン大統領からOKの返事が来た。


あとはプールと、真ん中がテニスコートの陸上競技場が数か月後に完成すれば、第1次都市計画は完了だった。


 そうしてこの西神島は生まれ変わった。



(その②につづく)



 時計を見た。11時57分。僕は岸田に思念を送った。




《おっちゃん。GOだよ!》

《うん? こ、これか? ふーむ・・・》




 これだから困るなあ。




 僕は思念で伝えるのを諦めた。携帯で電話する。




「なにやってるのさ。いまGOって送ったろ?」

「え? あ、やっぱりあれがそうだったのか?」

「いいから捜査員に指示出しなって」

「お、おう!」




 あとは彼らに任せばいい。僕は双子に霊話した。



《絵美莉実、大丈夫か?》

《うん。なんとか》

《あー、ヤダヤダ。早く阿伎留神社に行きましょ!》




 よかった。ふたりとも無事だった。





 絵里香の車に乗り込む。




「お疲れさま。うまくいったみたいね」

「うん。さ、阿伎留神社に行って」






 あっという間に着いた。

 参道をゆっくり進む。



 進むにつれて、京極のドロドロした粘液のような思念の舌の痕跡が、すーっと流れ落ちていくのがわかる。




「あー、いい気持ち!」




 莉実が両手を広げて境内の空気を深呼吸した。みんな真似する。

 お参りし、社務所に寄って宮司様にお布施を差し出し、お祓いをしていただいた。





「さあ、温泉だ!」







 



第21話 終わり


 

 朝早くに出発した。途中、武蔵五日市の警察署に寄る。すでに岸田総監がスタンバイしていた。

 

「やあ、おはよう! こう見ると、とてもこれから戦いに向かう戦士とは思えないな」

「何言ってるのよ。これでも工夫してるんですからね。女の子3人で攻めると、誰が刺客か一瞬でも迷うでしょ」

「ふーん。思念波って、肉体の性別を見分けられないのか?」

「じっくり観察すればね。でもあそこ、監視カメラだらけでしょ? これだと近づくときに女の子3人って見えるでしょ。先入観って恐ろしいのよ。なかなか切り替えられないものなの」

「しかし、君は女装すると声まで女の子になれるんだね。すごいな」

「まあね。ダイは変声期に入っちゃったから、地声じゃ即ばれるんだ」

「おお! それが地声か・・・すごい!」

 

 こうやって2倍速からリアルタイムに戻して地声で話すと、男の子だとばれちゃうんだよね。

 

 岸田のおっさんの無駄口をそれ以上聞いてる気はなかったので、僕は中西課長のところに行って、突入時刻や逮捕のタイミングの打ち合わせをした。

 

「じゃあ、気を付けてね。突入の合図は岸田のおっちゃんの頭の中に入れるから、おっちゃんはそれを聞いたら、インカムで一斉送信するのよ」

「ああ。わかった!」

 

 立場を考えてあげてるの、わかってるのかなこのおっさんは・・・

 

 予定の午前11時50分に近づいてきた。僕たち3姉妹は絵里香に阿伎留神社の入り口の近くで下してもらった。

 

「じゃあ、12時10分に向こうの公民館の駐車場で待ってて」

「わかったわ。気を付けてね」

 

 この作戦は、リアルタイムでは15分くらいで終わると計算していた。何百人も殺して回るわけじゃないからね。

 

「さあ、行くわよ!」

 

 私たちは、4車線の参道の入り口に立った。まず莉実が小走りに走り出す。続いて絵美。約50m遅れてついていく。大鳥居の下を莉実が走り過ぎると見えた瞬間、あのいやらしい雰囲気があたりを覆い始めた。京極の思念波の登場だ。

 

苦しそうに下を向きながら走り続ける莉実を追いかける絵美にも、思念波が襲いかかるのがわかった。いきなり絵美がのけ反ったからだ。一瞬僕を見た。

 

「もう少しだ・・・よし、リターン!」

 

 僕はこのタイミングで300倍速にした。

 走る。

一気に鳥居を抜け、さらに奥へ。

 

100mほどをコンマ秒以下で走り抜け、社務所の前に出た。


 空間がゆがんで見える。


 ものすごい思念のうねりだった。まるで透明な竜がうねっているかのようだ。ガラスほどではないにしろ、僕には完全に物質化しているように見える。ちょっとの間だけど、僕は見とれていた。

 

「いけない、いけない。切らなけりゃ・・・」

 

 

 僕はここで初めて神威を鞘から抜き、そのまま上段に構えて、そのうねりの下に飛び込んだ。刃を角のように頭の上に生やし、振り下ろしざま駆け抜けた。

 

「キエイ!」

 

「ビィーン!」という金属音が鳴り響いた。

 

 神威は京極の巨大な思念のうねりの束をきれいに断ち切っていた。

 

 リアルタイムに戻す。

 思念の束は2本だったようだ。切り口はふたつ。それぞれがほどけつつのたうち、ゆっくりと消えていった。

 

 

「うぎゃー!」

 

 社務所の中から、あさましい悲鳴が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

(その⑱にづく)

 

 

 作戦を3人で練った。

 

「引っ張り出すにしても、二人はある程度離れていたほうがいいと思う」

「円弧上で離れるの? それとも直線上で?」

「うーんと・・・ほんとは直線上のほうが効果的なんだろうけど、それをやると近くにいるほうのダメージが大きいと思うよ」

「じゃあ、社務所を中心として…東側に私、西側に莉実、という配置にしようか」

「効果が違うなら、直線にして。私が近いほうに行くわ。絵美は遠い方にいて」

「でも、それじゃあ・・・」

「できればそうしてほしいな。莉実はこの世界に先に入って、一日の長がある。今の実力は同じくらいなんだけど、慣れが違う。実戦ではこの慣れが大きくものを言う場合が多いんだよ」

「じゃあ、決まり! 私が先に大鳥居をくぐるわ」

「じゃあ、絵美は50mくらい遅れてついて行って。絵美は今度が初めてだけど、あいつの思念波は来ればすぐわかるよ」

「すっごく気持ち悪い感触だから、オエッてなるわよきっと」

「うー、やだやだ!」

「しっかり捕まるんだぜ。ダメージを受けるまでにはある程度時間がかかるし、すぐに僕が斬っちゃうから」

「うん、わかった。それが終わったら、阿伎留神社でお祓いしていくんでしょ?」

「もちろん! そのあと、秋川渓谷の瀬音の湯っていうホテルで温泉に入っていこう。美肌温泉で有名なんだよ」

「わーい! ねえ、次の日、土曜でしょ。一泊していこうよ」

「そうするかな」

 

 ということで予約を入れた。こういう「ニンジン」をぶら下げておかなくちゃ、とても自ら進んで京極の思念波に身をさらす気にはなれないだろうな。

 

 運転手はいつもの絵里香。前回と同じく、冴子のキャンピングカーを借りての遠征だ。

 

「こう見ると、ダイちゃんって本当に美少女なのねえ」

「いまさら何言ってるんだよ。じゃあ一泊してくるから2日間車借りるね」

「ええ。ガソリンは満タンにしてあるわ。ダッシュボードにカードがあるから、それも使って」

 

 冴子は僕たち、いや私たち4人を見送った。

 

 

 

 

 

(その⑰につづく)

 

 

 ということで、僕は3日後、再び禊神社に赴くことになった。今度は莉実だけでなく、絵美も戦士として連れて行く。

 

「で、僕はあいつの舌が伸びきるのを待ち受けて、できるだけ根もとで切り離す」

「伸びきるってどうするの?」

「あいつの精神波に二人を追いかけさせるのさ」

「えー! やだなー」

 

 莉実は前回、京極の思念波に嘗め回されたのがよほど気持ち悪かったとみえる。まあ僕にしたって、あの感覚は二度とごめんだと思うくらい、精妙体がダメージを受ける。いや、汚らしい唾液が体中にへばりつくような感じ、と言ったらわかりやすいかも。

 

 この精神波、思念波と肉体の関係は、実際の肉体と口の中の舌との関係とは異なるんだけど、引っ張り出して断ち切ると、つまりひっこめずに切り離すと、体のほうにかなりのキズができる。

 

 少し違うが、エクトプラズムの実験中、いきなり光を当てると体から出て来ていたエクトプラズムが戻れずに消滅する。こうなると、被験者、つまりエクトプラズムを出していた人は、体重の何割かをいきなり失って、悪くすると死亡する。死ななくても、気絶し、心臓や腎臓、肝臓にひどい損傷を受ける。

 

 これを避けるために実験に当たっては、カメラのフラッシュやストロボの持ち込みを固く禁止するのだ。

 

 同じようなことが、思念波を出している京極に起こる可能性が高いとみている。それを可能にするのが神威だった。神威なら、あの舌を根元から断ち切れるだろう。

 

 

 

 

(その⑯につづく)