神威(カムイ)の剣 タイム・コントローラーDAI -2ページ目

神威(カムイ)の剣 タイム・コントローラーDAI

小学6年生の美少年・三島大。古武術とタイム・コントロール能力を駆使して、さまざまな敵を殲滅していく超絶アクション小説。

 

「そろそろ働いてもらってもいいかな?」

 マイクから連絡が来たのは、もう冬に入った頃だった。

 

「これはこれは。お二人そろってのもてなしを受けるとは思っていませんでしたよ」

 グラスで冷や酒をあおりながら、マイクは上機嫌で二人の女性の供するスッポン鍋に舌鼓を打っていた。

 よくわきまえている二人なので、食後の僕とマイクの会話には加わらないで下がった。ママも敦子も自分の部屋に下ったようだ。

 

「どう見ても君の容貌はあの二人のレディーの血だな」

「お気に入りのようだね? 誘ってみたら。叔母はいま、独身だよ」

「あ、ははは。もうそんな歳じゃないさ。それにワイフに知れたら殺される・・・ところで・・・」

「もう次のミッション?」

「ああ。次と言えば次だが、前回の延長のようなものだ」

「前回って?」

「セブンシスターズ。リクソンだよ」

「あれ? デビッドはまだ懲りないの?」

「いや。彼はもう現役から退いて、世界中の河でトラウトを釣ってるよ」

「ふーん。フライフィッシングか。いいなあ。僕と冴子、二人とも毛鉤(けばり)釣りやるの、知ってた?」

「あ、いや、ぜんぜん・・・まあ、釣りのことはどうでもいいんだが」

「じゃあ、誰が総帥になったの?」

「エミリ・コーク」 

「やっぱりあの女性か・・・」

「知ってるのか?」

「ああ。ソニアのパーティーで逢ったよ。40歳くらいだけど、めちゃくちゃな美人だった」

「さすがだなダイは。世界を動かしている重要人物の知己がそれだけいるとは、恐れ入ったよ」

「でも、エミリがどういう風に僕と絡んでくるの?」

「エミリが君、つまり三島 大という少年と、東洋の悪魔が同一人物だと知っているのは当然だろう。デビッドから詳しく聞いているはずだし」

「・・・」

「そのエミリが君の存在に興味を示しているという情報が入った。弟を殺された復讐に出るかどうかはまだわからん。君が実際に会ったことがあると聞いて驚いたが、エミリは『霊能者』と言われているんだ。なにか感じたかい?」

「また霊能者かー。やっかいだな。せっかくJJJの京極を退治したのに」

「あの事件のことは聞いているよ。ダイは京極に全く触れずに彼を廃人にしたんだって?」

「うん。あいつの精神波を剣で断ち切ったら、京極の脳がパーになっちゃったらしい」

「ダイのその経験は貴重だと思う」

「なにか得体のしれない、相当な力を持っているってことは感じたよ。あの時、『こいつはヤバい』って思ったから、さっさと逃げ出したもん」

「うーむ。ダイでも逃げ出すか・・・」

「だって、会ったのは2年以上前だよ。僕の能力はまだ眠ってたんだから」

「そうか。いまのダイと比較するのはおかしいな。でも、その時のダイでも、エミリが力のある霊能者だと感じたんだな? 逃げ出すくらいだから」

「そうだなあ。あれが霊的なものかどうかって言われると、はっきり答えられないんだけどね」

 

 

(その⑦につづく)

 

鮮のもと夫人、娘たちの引っ越しでは冴子が陣頭指揮を執ったんだけど、ひとつ想定外のことがあった。彼女、利尻島の対岸の北海道本島に別荘が欲しいと言い出したんだ。

 

 

「だって、その辺の小川にイワナやヤマメがうじゃうじゃ泳いでるのよ。もう今回のお仕事を放り出して、竿を出したくて堪(たま)らなかったわ」

 

 

 僕にはもともと沖縄と北海道と八ヶ岳の麓(ふもと)に別荘を作る計画があったから、最初に北海道に作ることにした。どこがいいか・・・

 

 

「冴子、日高の丸岩牧場に寄ってくれないかな。そこのお嬢さんに頼んであるものを受け取って来てほしいんだ」

 

 

 実際、その丸岩牧場の岩上加奈子という女性には、あるお願いをしてあった。この牧場、黒毛和牛の生産牧場なんだけど、西神島の島民用の牛肉の提供をお願いし、了承してもらっていた。普通の牛肉の流通ルートでは、屠殺場を牛耳る「ある団体」のお世話になるしかない。僕はそれが嫌で、フリー屠殺所構想をこの丸岩牧場の社長に相談していた。

 

 

「こんど僕の名代(みょうだい)としてお宅に伺う女性、すごいフライフィッシング・マニアなんだ。お宅の牧場の中を流れるあの川、だれも釣りしないんでしょ? だったら、彼女の専用釣り場にしてあげて」

「お安い御用よ。牧場の何人かはイトウも見かけたって言ってるわ」

 

 

 イトウが掛かっても、ハリスが切れるか竿が折れるだけだろうな。

 

 

「で、相談なんだけど、加奈子の牧場の隣、廃業したままなんだろ? あそこ、買えないかな?」

「え? あの牧場を買うの? ダイちゃん、牧場経営するつもり?」

「いやいや。北海道に別荘を建てようと思ってたんだけど、どうせなら加奈子の近くがいいなって」

「まあ! やらしいんだから」

 

 

 加奈子は見当違いな事を想像していた。見当違いでもないか・・・

 

 

 結局、その牧場は加奈子の父と僕とが折半で購入し、僕はその一角にロッジを建てた。別荘としてではなく、「釣り小屋」としてだ。10人は泊まれるし、近くの源泉からすばらしい泉質の温泉を引いたし、食事は加奈子が用意してくれるから、別荘気分に浸れるのは間違いないけど。

 

 

 僕はこうした準備で毎日楽しい忙しさの中にいたけど、武器の手入れと練習は怠らなかった。それは絵美莉実も同じ。いや、絵利香ママも同じだった。時間はズレても、地下練習場では必ず誰かと一緒になった。

 

 

 僕と双子は「トリスケル騎士団」の美少女トリオとして、日々戦闘能力を研ぎ澄ましていたのだ。

 

 

 

(その⑥につづく)

 

僕がここまで島の施設を充実させるのは、何も鮮の婦人と娘たちのためだけではない。僕が殲滅したゲリラやテロリストの遺族に、子供が女性であることを条件に、この島に移り住んでもらおうと考えていたのだ。


 とくに今でも僕の心の傷となっている、アイルランドのトリスケル革命軍。彼らの遺族には毎月生活費を送っているが、まとめて引き取りたいと思っている。120人もいるけど、声をかけたら何家族が来てくれるかな。

 

僕は総勢1000人は暮らせるだけの計画を立て、その最小規模のものだけを第1次計画として先行して作ったんだ。

 

浄水場のある丘陵には教会と神社を建てた。

 

 僕はこの島が無人島になった理由のひとつに「神社がなかったこと」を挙げたい。日本の共同体には神社が不可欠なのだ。そのことは、JJJとの対決で思い知った。で、神社のなかったこの島に神社を造ったのだ。

 

教会は鮮の夫人たちのほとんどがキリスト教信者だったから、先に作った。鮮の教会を思い出さないように、ゴシック様式の小さい建物だ。

 

神社は結局、宮司様と相談して阿伎留神社の分社とすることになった。あきる野市にある本物の阿伎留神社を忠実に再現した。例大祭とお正月には、宮司の先代、すでに隠居していたけど、まだ70歳の阿留(ある)多伎(たき)  弘(ひろし)さんに出張してもらうことまで決めた。

 

「おお。あの時のお子さんか。ずいぶん立派になられて」

 

 弘さんは、僕のことを本当に覚えていた。

「裏にある井戸の中に入り込んで、大騒ぎになったんだよ」

「えー? そんなことあったっけ?」

「阿伎留神社の井戸は特殊な形しているからね。普通なら恐ろしくて、大人でもあんな中には入ろうとは思わないよ」

「ふーん、井戸ねえ・・・宮司様、その井戸、まだ水は出るの?」

「ああ。水位は下がったが、まだきれいな水が汲めるよ」

「そう・・・今度いただきに上がります」

 僕にはその水が僕と双子、神威に特別な影響を与えてくれる予感があったのだ。

 

 

(その⑤につづく)

 

 

 

電力はソーラーパネルと丘陵地帯に10基建てた風車の風力発電で、それこそ「売電」できるくらいに豊富に作られる。飲料水などの真水は人が住まなくなってますますきれいになった、島の東側を流れる嘉慶川の上流に浄水施設を作った。
 

 ガスはLNG(液化天然ガス)を大型ボンベで輸送し、そのまま島設置のガスタンクに移す。ネット環境は長崎県本土から海底光ケーブルを引いた。テレビや電話もこれでOK。長崎のケーブルTV局は、番組数がすくないけど、BSとCSで問題無し。

 

人が快適に住むためのインフラは整ったのだった。

 

「学校とか、病院とか、それにお買い物は?」

「そんなのダイちゃんが洩らすわけないじゃん」

「うん。公共的な施設は島の真ん中の平地にビルを建てたんだ。これ、仮称で『総合文化センター』」

「なんか野暮ったい名前ね」

「わかったよ。別の呼び名を考えるよ」

 

 僕はPCでその画像を見せた。

 

 地上12階、地下2階、延べ床面積2,200坪のそのビルには、学校、病院、役所と郵便局を合わせた施設、ホール付き集会所、体育館、図書館、保育園、などを集中させた。台風や津波の時の避難所として、最上階と11階は個室タイプの住居スペースとしてある。最上階の一部は僕が島に行った時の居住スペースとして、スイートルームにした。

 

 日用品や雑誌、食料は海上輸送に頼らざるをえない。僕は鮮の婦人たちの中でも頭脳明晰な3人に船舶免許を取るように指示していた。彼女たちのうちの2人は、冴子と同じ日に受験し、見事合格している。この2人には長崎港との定期便の運航を任せることにした。半年後には残る1人も合格したので、3人体制となり、毎日1便の運航が可能となった。

 

 ショッピングは日用品、食料品は島内で済むようにしたかったので、ショップも作った。総合ビルの隣に2階建てのRC造を建て、1階をショップ、2階をレストランとした。全員女性であろうが、毎日料理するのは苦痛になるときもあるだろう。で、コック、シェフが持ち回りのレストランを作ったんだ。教員免許を持つ者も何人かいるし、看護師だった女性もいる。それまで無職だった女性にも、自分で職業訓練するように指導した。

 

島に移っても、何もしないで一年を過ごすなんて、人間が腐るから、島民になる女性たちには、それぞれに向いた仕事をしてもらうつもりだった。独立国じゃないから、日本円を回すけど、島の中だけでは収入は得られない。世話をしてくれる女性たちへの支払いや、医療関係者、教師、メンテナンスの技術者、役所機能をつかさどる事務職なども、すべて女性だけど、彼女たちへの支払いは僕の銀行口座から振り込まれる。

 移住する夫人たちには、生活費を振り込む。しかし、わずかな金額であっても、「自分で働いて稼いでいる」という実感がないと、まるで僕のハーレムで飼われているように感じるだろう。それでは自尊心も、生活力も失われてしまう。僕は西神島をハーレムにするつもりはないんだ。時々遊びに行く、「どこを歩いても女性だけしかいない別荘地」を味わえればいい。

 

 

(その④につづく)

 

 礼文島の30人の女性たちを西神島に移住させる手続きに追われていたある日、太田早苗から連絡があった。

 

「早苗が電話してくるなんて、珍しいね」

「ダイちゃん、めちゃくちゃ忙しそうだもの。最近じゃ『西投手』だったし」

「あれ? 知ってたの?」

「テレビ見てればわかるわよ。私の大事なダイちゃんなんだもん」

「あはは。で、なにか用事だった?」

「私のことじゃないんだけど、ちょっと相談に乗ってほしいことがあるのよ」

 

 早苗の相談というのは、ある女医のことだった。

 

 立花恵子というその女医は、早苗の勤めている総合病院でただ一人「総合医」の資格を持つ女医だった。腕は抜群で、患者の信頼も厚かったらしい。ところがここ数か月自宅に閉じこもって出てこないのだという。

 

「彼女の気持ち、わからなくもないんだけど」

「なにかショッキングなことでも経験したとか?」

「ええ。立花先生、レイプされたの。それも8人もの男たちに回されたの」

「・・・そりゃひどいな。その立花先生ってどんな人?」

 

 立花恵子先生は現在37歳。大変な美女らしいが、いまだに独身だという。

 

「先生ね、レズなのよ。私とも関係あったの。だから教えてくれたんだと思う」

「レズ? ふーん。早苗が僕に紹介しなかったわけだ」

「そう。今思えばダイちゃんに男嫌いを治してもらっとけばよかったかな・・・その先生が8人がかりでレイプされたら、ショックで立ち直れないってのも無理ないんだけど、うちの病院じゃ、もう診療できないわね」

「どうして?」

「男性患者に触れなくなったのよ」

「あらら。それはそれは」

「産婦人科も診られるから、なんとか来てもらおうと院長や事務長がおうちに行ってみたんだけど、男性が近くに来るだけで体が強張(こわば)っちゃうらしいの」

「ふーん。なるほどね。早苗はそんな先生を見かねたんだ。・・・よし、わかったよ。僕に任せて」

「なにかいい手がある?」

「僕にその女医さんの心のキズは直せないし、男性恐怖症もすぐには治らないだろうね。だから、女性だけしかいないところでお医者さんをやってもらえばいいんじゃない?」

「女性だけのところって・・・そんなところ、あるの? 女子校の校医とか?」

「そんな腕のいい先生には、校医は暇すぎるだろ? いいから任せなって」

 

 僕はその立花先生の自宅を教えてもらい、井上由里として絵利香ママと訪問したのだ。

 

 恵子先生は絵利香に負けず劣らずの美女だった。僕のいつもの悪い癖が出ないようにするのに苦労するほどだ。

 

「看護師の太田さんから伺いましたけど、女性だけの場所なんてあるんですか?」

「ええ。私がいま作っている島、もうすくインフラが整って、住めるようになるんです。長崎県の五島列島の近くの無人島。そこには始めのうちは30人くらいの若い女性と、彼女たちを世話するおばさんたちが30人くらい、合せて60人くらいが住むことになるの。その島に病院を作って、先生に入ってもらいたいなと思って」

「・・・あの、ちょっと理解できないんですけど、60人の女性だけが住む島、ですか?」

「ええ。朝鮮人の女性も多いんだけど、彼女たちは英語が話せるから大丈夫だろうし、働いてもらうおばちゃん、おばちゃんったって30代と40代だけど、彼女たち、子連れでも、その子はみんな女の子なの。当然学校も作るから、先生も何人もいるよ。みんな女性。つまり、その島、女性しか住まない島なのよ」

「・・・あの、いま『私が作ってる』って言ってたみたいだけど、あなたがその島の持ち主、なの?」

「あ、そうか。それ、理解できないわよね。私が自分の口から言っても信用できないでしょうから、ママを連れてきたんだった。ママ、説明お願いね」

 

 絵利香ママはその島のオーナーである三島 大の資産状況と、住むことになる女性が、北朝鮮からの亡命者であること、由里が三島 大の従妹で、本当は三島 大自身が説得に来たかったのだが、恵子の男性恐怖症を慮(おもんぱか)って由里に頼んだことなどを、要領よく話した。

 

「・・・ありがとう。わたし、東京の町中を歩くのさえ怖くて、このマンションから出られなかったの。そういう島なら、私からお願いしたいくらいだわ。それに、わたしの実家、鹿児島なの。五島列島は故郷に近いもの」

「鹿児島! なんていう奇縁でしょう!」

「ほんと! 私の双子の姉、もともと鹿児島出身なの」

「?」

「その双子、縁あって私の娘として引き取ったんです」

「そう・・・どこに住んでらしたの?」

「鹿児島市内。鹿児島中央高校の近くよ」

「えー! 私の実家、西千石町よ。中央高校には歩いて行けるわ」

「あらら。ほんとご近所なのねえ。こんど二人に会っていただくわね」

 

 

 とまあ、こういう感じで話はまとまったんだ。最大の難関だと思ってた「医師」問題の解決策が、向こうからやって来てくれた。

 

 

(その③につづく)