「そろそろ働いてもらってもいいかな?」
マイクから連絡が来たのは、もう冬に入った頃だった。
「これはこれは。お二人そろってのもてなしを受けるとは思っていませんでしたよ」
グラスで冷や酒をあおりながら、マイクは上機嫌で二人の女性の供するスッポン鍋に舌鼓を打っていた。
よくわきまえている二人なので、食後の僕とマイクの会話には加わらないで下がった。ママも敦子も自分の部屋に下ったようだ。
「どう見ても君の容貌はあの二人のレディーの血だな」
「お気に入りのようだね? 誘ってみたら。叔母はいま、独身だよ」
「あ、ははは。もうそんな歳じゃないさ。それにワイフに知れたら殺される・・・ところで・・・」
「もう次のミッション?」
「ああ。次と言えば次だが、前回の延長のようなものだ」
「前回って?」
「セブンシスターズ。リクソンだよ」
「あれ? デビッドはまだ懲りないの?」
「いや。彼はもう現役から退いて、世界中の河でトラウトを釣ってるよ」
「ふーん。フライフィッシングか。いいなあ。僕と冴子、二人とも毛鉤釣りやるの、知ってた?」
「あ、いや、ぜんぜん・・・まあ、釣りのことはどうでもいいんだが」
「じゃあ、誰が総帥になったの?」
「エミリ・コーク」
「やっぱりあの女性か・・・」
「知ってるのか?」
「ああ。ソニアのパーティーで逢ったよ。40歳くらいだけど、めちゃくちゃな美人だった」
「さすがだなダイは。世界を動かしている重要人物の知己がそれだけいるとは、恐れ入ったよ」
「でも、エミリがどういう風に僕と絡んでくるの?」
「エミリが君、つまり三島 大という少年と、東洋の悪魔が同一人物だと知っているのは当然だろう。デビッドから詳しく聞いているはずだし」
「・・・」
「そのエミリが君の存在に興味を示しているという情報が入った。弟を殺された復讐に出るかどうかはまだわからん。君が実際に会ったことがあると聞いて驚いたが、エミリは『霊能者』と言われているんだ。なにか感じたかい?」
「また霊能者かー。やっかいだな。せっかくJJJの京極を退治したのに」
「あの事件のことは聞いているよ。ダイは京極に全く触れずに彼を廃人にしたんだって?」
「うん。あいつの精神波を剣で断ち切ったら、京極の脳がパーになっちゃったらしい」
「ダイのその経験は貴重だと思う」
「なにか得体のしれない、相当な力を持っているってことは感じたよ。あの時、『こいつはヤバい』って思ったから、さっさと逃げ出したもん」
「うーむ。ダイでも逃げ出すか・・・」
「だって、会ったのは2年以上前だよ。僕の能力はまだ眠ってたんだから」
「そうか。いまのダイと比較するのはおかしいな。でも、その時のダイでも、エミリが力のある霊能者だと感じたんだな? 逃げ出すくらいだから」
「そうだなあ。あれが霊的なものかどうかって言われると、はっきり答えられないんだけどね」
(その⑦につづく)