神威(カムイ)の剣 タイム・コントローラーDAI -12ページ目

神威(カムイ)の剣 タイム・コントローラーDAI

小学6年生の美少年・三島大。古武術とタイム・コントロール能力を駆使して、さまざまな敵を殲滅していく超絶アクション小説。

 

「レイ、ロベルト。私とダイ・ミシマの情報の入手先を言いなさい!」

「そ、それは・・・」

「まったく。もういいわよ。二人ともここで殺してあげるわ」

 僕はサン・レイの太ももに神威を突き刺した。



「うぐっ!」

 サン・レイがうめく。さすがに歴戦の傭兵だ。それ以上じたばたしない。

 


 次にロベルトに刃の先端を向けた。



「待て! ひーっ! 待ってくれ! 言う。言うから待て!」

「トロワ。ドゥー。アン!」

 僕はロベルトの縛ってない方の足首を切り飛ばした。

「うぎゃー!」

 ロベルトが大仰な悲鳴を上げて転げまわる。

「さて、もう時間切れね。情報の漏洩元を教えたほうを助ける。どっちにする? トロワ・・・」

「教える! 教えるよ。アメリカ国防省副長官のハリー・ブルースだ!」

 


 僕はロープでロベルトの足首を縛った。出血が止まる。



「これからはふたりとも歩くのがちょっと面倒になるわね。さて、もう行くわね」

「おまえ、傭兵だったら世界で一番だろうな」

レイがそう言った。

 


「ふん。私は誰かの命令で動くなんてまっぴらよ」

「エリクソンの命令で動いているんじゃないのか?」

「とんでもない。私は自分の意志以外では動かないわ」

「・・・そうか。大いなる勘違いってやつだったか・・・」

 


 僕は建物の中に、ほかに誰か隠れていないかを探ろうと思ったけど、そんな悠長にしていられないこともあり、5階のドアを自動小銃でつっかえ棒にしてすぐにはあかないようにした。



 そして、残ったプラスチック爆弾と雷管をセットし、ドアの前に置く。

 


 バッグからHDDを取り出し、廊下に置く。モーゼル・レッド9や神威、ヘルメットなどをデイバッグにしまう。そのとき、焼夷薬が複数バッグに残っているのに気づいた。



 僕は階段を下りる途中、2階の爆弾と焼夷薬を確認し、さらに地下室に降りた。焼夷薬の瓶をカメラのモニター群の前に置く。そして神威でドアに切れ目を開け、タイマーを最長の3分にして全部を階下に放り込んだ。

 


 建物を出る。5階の窓から、僕を見つめるサン・レイのゆがんだような顔が見えた。僕は右手を上げ、指で拳銃の形を作って彼に向けた。サン・レイはあわてて顔を引っ込めた。恐怖に支配されているんだろう。あれじゃ、窓から逃げ出そうという考えも持てないな。



 中庭で動く人間はいなかった。死体が累累と転がっている。地面の煉瓦が血を吸って変色している。

 


 パトカーのサイレンが聞こえてきた。



 インカムが届かない距離だったので、スマホで絵里香に電話する。念のため2倍速で、1オクターブ声を高くしてからだ。

 


「いま、お医者様たちがRを連れて行ったわ」

「オーケイ。私、すごい格好だから、外に出るの恥ずかしいの。着替え持って来てくれない?」

「Eからあなたのスタイル聞いてたから、隣の非常階段の一番下にバッグに入れたお洋服を隠しておいたわ」

「ヤッホー! すごい助かるー! じゃあ、着替えたらタクシー拾って帰るね」

「うん。待ってるわ」

 

 
 僕は100倍速にし、先刻ドアが開くのを待っていたビルの非常階段に走った。鉄の踊り場の下にバッグが押し込んであった。回収し、高速で着替える。返り血だらけのお洋服スタイルの戦闘服をバッグに押し込む。このバッグ、完全防水だから、血が染み出してくる恐れはない。バッグに入れられていた塗れたウエスやウエットティシューで顔をぬぐい、ウイッグをはずして帽子をかぶる。



(まあ、これでなんとか普通に見えるかな?)

 


 僕は道に出て歩き出した。

 


 そのとたん、すごい爆発音と突風が道路上を走った。危うく吹き飛ばされるところだった。アズナブール家の次男のアパルトマンが大炎上を始めた。

 

 

 リッツの大きなバスルームで、僕は絵里香と絵美にふたりがかりで洗われていた。

 


「すごい血糊ねえ。まだ落ちきらないわ」

「ええ。からだの方はなんとかきれいになったけど・・・」

 


 絵美は僕の下半身には手をつけられないでいた。

 


「あら恵美ちゃん、だめじゃない。ちゃんと全部洗ってあげなきゃ」

「だってママ。ダイちゃん、これだもん」

 


 僕はわざとBIGにしていた。いつもながら、大量殺人は性的興奮をもたらすんだ。別に絵美と絵里香を抱こうと思っていたわけじゃないけど、BIGになってるのを見せるのはいいかなと思ってた。

 


「ミッションの後はいつもこうなるんだ。あーあ、これのためだけにでも冴子を連れてくればよかったなー」

 


 絵美は下を向いていたけど、おずおずと切り出した。

 


「あの・・・私でよかったら・・・」

 

                  *

 


 パリは他人に無関心な街だが、2回も続けて起こった「傭兵大量殺人事件」は例外のようだった。連日、朝から深夜までそのニュースが報道されていた。



 あのアパルトマンが完全に焼け落ちていたので、ロベルトが死んだことは、なかなか出てこない。

 


「いずれにしても、前回のシャンティーのアズナブール城の件と今回の左岸の事件は、何らかのつながりがあるものと思われます。アズナブール一族が持っていた傭兵軍団は全部で1500人ほどだったようですが、そのほとんどが2回の襲撃で全滅しているのです。犯人グループがどんな組織であるか、依然として当局はつかんでいない模様ですが、殺害された死体に残る銃弾が、前回のものと一致しているということだけは発表されました」

 

「前回は防犯カメラがほとんどない土地でしたが、パリ市内で起きた今回の事件では、アズナブール家の所有するアパルトマン周辺の映像が残されています。しかし、当局の発表によれば、それらしき集団の映った映像は皆無だということです」

 

「のんびり買い物や観光をする少人数のグループや家族連れくらいしか映っていない。それは事実であるようで、当局の困惑が見えます」

 

「殺害に使われた武器の類似性はあるようですが、今回は爆薬が使われています。現場の分析が現在行われていますが、爆弾は軍用である可能性が高いようです」

 

「いずれにしても、これでアズナブール家につきまとっていた黒い噂が真実であったことだけは明らかになりました。テロ国家数カ国とのつながりが指摘されており、フランス企業がそういう活動をしていたことに、国民からは驚きの声が上がっています」

 


 僕はスマホでマイクと話した。

 


「やあ、今回も仕事が速かったね」

「うん。実質1時間ってところかな。で、莉実はどう?」

「ああ。肋骨が2本折れているが内臓にはダメージは残っていないそうだ」

「いま何してる?」

「眼科に行ってるよ」

「眼科? そういえば眼がどうとかいってたな。じゃあ、僕、いや私、病院に迎えに行くね」

 


 僕はこのとき、莉実に起こっていた現象をまだまったく知らなかった。

 

 

 

 

第18話 終わり

 

  僕はリクソン・モバイルのフェレは生かしておくことにした。これから訊問するレイとロベルトの話の裏を取れるかもしれないからだ。

 


「ママン、今どこ?」

 


 絵里香からはすぐに返答が来た。

 


「集合場所近くの駐車場に着いたところよ」

「じゃあ、悪いけど現場に着けてくれないかな。ひとり足首から下のない、血だらけのスーツ男を拾ってほしいんだ」

「ダッコ!」

 


 僕はフェレを引きずり、5倍速で階段を下りた。玄関ドアを開けるのと、ルノーが滑り込んでくるのが同時だった。僕はフェレをクルマの後部に放り出した。ハッチバックのドアを開けて、絵美莉実がふたりがかりでフェレを押し込むのを横目で見ながら、

「じゃあ、頼むね。マイクには僕から連絡しとく」

そう小声で命じた。

 


(手間食ったなあ。早くしないとパリ市警と銃撃戦になっちゃう)

 


 5階に
駆け戻る。レイとロベルトは足を結ばれたまま罵りあっていた。僕が戻ると恐怖の表情がロベルトの顔に走った。

 


「もういい。おまえの凄さは十分わかった。おれはこんな連中と心中する気はない。なんでも話すから俺だけは助けてくれ」

「レイ、裏切るってさ。あんたが黙っていても意味ないみたいね」

「くっ、これだからセレブ連中は信用できないんだ・・・わかった。日本にいる刺客団には引上げ命令を出す。俺の命と交換だ」

「いいわ。じゃあ、レイは生存者リストの1番ね。ロベルトからはなにも引き出せないみたいだからここで死んでもらうわね」

「ま、待ってくれ。親父がダイ・ミシマの口座に入れたのはうちの資産の全額じゃない。80%は残っているんだ。それをお前の口座に入れるから、俺も助けてくれ」

「あんたもウソつきなのね。ジュールはそうやって時間稼ぎしながら、お金までケチったのよ。今すぐここで入金手続するのね。入金確認出来なかったらあんたの頭、永久に胴体と離ればなれよ」

「わかった。そのテーブルの上のバッグ、こっちに投げてくれ」

「いいわよ。中に拳銃が入ってて、私を撃つって考えならそうしなさい。私、魔女なの。拳銃弾くらい簡単に避けられるのよ」

「そんなバカはしない。これ、このタブレットで振込指示を出す。お前の口座はおまえ自身で入力しろ。そうすればおれは何も知らないままだ」

「いい考えね。完了したらリストの2番に入れたげるわ。

 


 で、ロベルトを後回しにして、レイを引き立てて地下室に降りた。レイは不自由な片足のまま、必死に痛みに耐えながら階段を下りた。

 


 地下1階には先ほど失神させた白人2人がまだうずくまったままもがいていた。

 


「ふたりとも立て。そのPC、まだ日本のバイオレットたちに繋がっているな?」

「ううう・・・はい、そのままです」

「よし、話させろ。スピーカーはONだ」

 


 レイが呼びかけて数秒後、モニターに女性の顔が映った。

 


「レイ、どうしたの? さっきからつながらなくて焦ったわよ」

「無駄口叩くな! 指令だ。今すぐアルジェリアに帰国しろ」

「帰国・・・暗殺指令は?」

「うるさい! もうそんなものは存在しない。取り消しだ。さっさと帰国しろ。足は打ち合せどおり、リクソン日本支社に頼んである。すぐにあの船橋港に行くんだ。赤と黄色の信号旗の出ている船に乗れば、あとは送ってくれる」

「ラジャー!」

 


 PCを切ったレイは僕を振り返り、こう言った。

 


「これでお前が信用するとは思っておらん。お前の仲間、政府か米軍かは知らんが、誰にでも通報しろ。千葉県船橋港からテロリスト15人が出国しようとしているってな。いま聞いていただろう。赤と黄色の信号旗の出ているクルーザーだ。乗り込んだのを抑えるなり攻撃すれば、暗殺団は全員消える。後顧の憂いを断てるってことさ」

「ふーん。非情なのねー。まあいいわ。あんたの方もあと1時間以内で結果が出そうね。じゃあ、私たちの映像、録画した媒体を出しなさい」

「分かった。おい、DVDの原版を出せ」

 


 背の低い中年男がデッキからDVDを取り出した。

「もういいわよ。あなたたち、レイを5階まで連れて行きなさい」

「え? 5階?」

 


 レイが怪訝そうな顔で尋ねた。

 


「4階から下には生きた人間は置いとかないことにしたの。5階は外に出る非常階段のドアを封鎖してあるし、閉じ込めるのにスチールドアの方が安心でしょ?」

「お前みたいに壁を切り裂いて侵入してくるやつが他にいなければな」

 


 レイは助かると確信したようで、冗談すら口を突いて出た。

 


 僕は地下2階へのスチールドアを確認に行った。ガンガン内側から銃撃したり、叩いたりしているらしく、こちら側に膨らんできている。



 僕はここで初めて穏剣を使うことにした。ベルトから5枚出す。

 


 200
倍速。僕の投げた穏剣はスチールドアを障子のように突き抜け、向こうにいた何人かの男たちの体を貫通しながら階段を下って行った。複数の叫び声、悲鳴が聞こえた。僕は続けて4枚、穏剣をドアに向かって投げた。全部で数十人の体を貫通しただろう。階下からの声、銃弾などが一切聞こえなくなっていた。

 


 僕は5階に戻った。もう時間がない。訊問は最後にしよう。

 

 

 

(その⑩につづく)

              

 僕、由里が5階に戻った姿を見て、ロベルトが悲鳴を上げた。よっぽどすさまじい形相なんだろうな。

 


「どっちでもいいわ。私がこれからする質問に答えた方はここにそのまま置いておく。答えを知らない方は殺す。わかった? じゃあ、質問は三つよ。ひとつめ。日本には何人送り込んでいる?」

「15人だ!」

 ロベルトが叫んで、サン・レイを睨み付けた。

「じゃあ、その15人はいつ、どう動くの?」

「俺の指令待ちだ。ダイ・ミシマとその家族を抹殺する」

 


 サン・レイがはき捨てるように答えた。

 


「ダイ・ミシマって今ロスの製薬会社にいるわ。どうするつもり?」

「ふん。ダイは日本にいるさ」

「そのあたりの情報はどこから出てるのかしら?」

「・・・」

 


「あなたたちが答えないなら、そこにいるリクソン・モバイルの社員に聞こうかな」

 


 僕は足首をなくし、だらだら出血が続いて、そのままだと死んでいくだろうスーツ姿の男たちを見た。だれも答えないだろうと思ってそう言ったんだけど、男の塊の中から声が上がった。

 


「答えるから出血を止めてくれ!」

 


 僕は血を吸って赤黒く変色したスーツを着た男たちの塊に近づいた。そのとたん、銃撃を受けた。誰かが拳銃で撃ったのだ。銃弾は僕の右肩の先をかすめるように飛んでいった。

 


(ふーん。当たらない銃撃のときは超アイにならないんだ)

 


「へー。まだ元気あるじゃん」

 


 僕は神威を突き出した。金属の表面をすべり、肉に入り込む感触がする。

 


「うぎゃあー!」

 


 塊の中から悲鳴が上がった。

 


「私は銃など持っていない。助けてくれ!」

 


 そう言う男の足を引っ張り出し、パラシュートロープで足首をしばってやった。

 


「お前、誰なんだ?」

「・・・リクソン・モバイルフランス支社副社長のフェレだ」

「ふーん。そんなになってても偉そうなのね。有益な情報を持ってなければ、このロープ、切るわよ。いや、まだるっこしーから顔の真ん中に突き通してあげる」

 

 
 僕は神威をフェレと名乗った男の顔面に突きつけた。

 

 

 

 

(その⑨につづく)

 

「マイク、聞こえる?」

 

 
 僕はマイクに呼びかけた。フランス空軍基地に詰めて、こちらの戦況を電子機器で追いかけているはずだ。このアパルトマンの周囲の建物全部に、センサー機器を配して屋上から地下までくまなくチェックしている。

 


「ああ、よく聞こえるよ。莉実ちゃんは大丈夫か?」

 


 僕たち3人の、いや絵里香を入れた4人のインカム通信も傍受している。

 


「うん。貫通銃創は無いけど、肋骨が何本か折れていると思う。内臓も検査したい。絵美が外に連れ出すけど、まだ情報の半分も敵がいないんだ。ふたりが安全に出られるようにしたい。残りの兵隊はどこに潜んでるの?」

「ちょっと待て・・・うん、ダイ、いや由里は今何階だ?」

「3階」

「そうか、そこで動いている3人が君たちなんだな。そうすると・・・5階に8,9人いる」

「それはわかってる。他には?」

「4階・・・ゼロ、2階、もゼロ。1階、もゼロだ。うーむ・・・お! いたいた。地下だ、そこ地下1階だったのをカタコンベの方まで広げて、地下2階にしてるぞ。そのB2に・・・200人近くいるな」

「分かった。でも、カタコンベだったら、逃げ出すんじゃないの?」

「いや、外からの進入を防ぐつもりだったんだろう。壁の厚さは1m近くある。ぐるりと同じ厚さだから、出口は上に抜ける階段しかないはずだ」

「オーケー、わかった、じゃあまたあとで!」

 


 僕は絵美と莉実を連れてにそのまま階段を下りて1階まで行った。そして僕だけ地下への階段を下りた。ドアがあった。蹴破る。そこはセキュリティや、通信に関するオペレーションルームのようだった。5人のアラブ系と2人の白人がいた。神威でアラブを斬り捨てる。白人2人は掌底でチン(顎)を叩いた。あっけなく気絶する。

 

 
 僕はさらに下に降りる扉を捜した。

 あった。スチールの頑丈な扉が1枚見つかった。

 


(さて、逃げ出すのをどうやって阻止するかな)

 


 僕は1階の玄関ホールに数本の鉄筋が置いてあるのを思い出した。

 


(そうか、地下2階を作るときに使った鉄筋のあまりだな)

 


 僕は1階に駆け戻った。鉄筋を壁に立てかける。神威を振るう。たちまち50㎝くらいの長さの太い杭(くい)が出来た。全部で6本。僕はその太い杭状の鉄筋を持って地下1階に戻った。スチールドアの前に立つ。

 


「むん!」

 


 僕は100倍速にして地下2階への階段のあるスチールドアの床と天井に、さっき作ったばかりの鉄筋の杭を刺していった。このドア、外開きなんだ。6本の杭で縫い止められたように、スチールドアはびくとも動かなくなった。

 


(これでゆっくりあのふたりを尋問できるな)

 


「E、R、いまどこ?」

「もうすぐママンのところよ」

「R、歩ける?」

「ええ。胸に響くけど足は大丈夫。でも、視界がおかしいの」

「了解。じゃあ、ママと先に戻ってて。マイクが迎えに行くから、軍の病院に行くんだ。すぐに精密検査してもらう」

「ダッコ!」

 


 莉実の口から「ダッコ」が出るようなら大丈夫だろう。

 

 

 

(その⑧につづく)

 

「絵美、しっかりしろ! 何階だ?」

 


 僕は由里であることを忘れていた。

 


「3階。ドア越しにマシンガンの掃射を受けてて、私も動けないの!」

「よし、待ってろ!」

 


 頭に血が上っていた。僕は500倍速に切り替えた。

スーツ姿の男たちの足首をまとめて刎ね、サン・レイとロベルトの腹に軽く蹴りを入れた。内臓破裂には至らないくらいにだ。次の瞬間には階段を駆け下りていた。

 


 3階だ。廊下の正面の壁には絵美はしゃがみこんでいた。まだ手にはワルサ―が握られている。手前のボロボロになったドアからは、ゆっくりと銃弾が飛び出してきていた。

 


 サブマシンガンPS90特有の8m間隔ではなく数発が続けて出てくるところを見ると、4から5丁の銃で撃っているようだった。

 


 僕は廊下の漆喰の壁に向かって立った。神威で壁を三辺斬り裂く。一辺が70㎝くらいの三角形の切口が出来た。それを蹴る。壁は内部に吹き飛んだ。それを追いかけるように僕も身を躍らせて部屋の中に転がり込んだ。

 


 入り口のドアに向かって5人の白人兵士がサブマシンガンを掃射している。やっぱりPS90だ。僕は彼らに駆け寄った。マシンガン、人間の腕、顔などの区別などしないまま、神威を真上から振り下ろす。3人半の銃と腕と顔の前面がゆっくりと元の位置から離れていく。

 

 

僕は残った1人半の喉に神威を水平に振った。

 


 部屋の中を見る。

 

いた。

 


 莉実はぐったり動かない。顔からは出血の跡は見えない。胴体に受けたのであれば、着ている戦闘服はサブマシンガンくらいの銃弾、つまり拳銃弾クラスなら貫通はしない。だが被弾の衝撃はかなり大きいだろう。気絶しているのはそのためだと判断した。


 許せないのは莉実の下半身の戦闘服が剥ぎ取られ、下着もないまま大きく両足を開かれていることだった。三人がかりで莉実を犯そうとしていたのだ。莉実の薄い陰毛とその間に見える赤い肉がいたいたしい。うん? 腹にも被弾したか? 莉実の左腰骨と恥骨あたりにふたつの紫色のあざが出来ているのが見えた。

 


「こ、こいつらーっ! 許さん!!」

 

 
 僕は自制心をどこかにすっ飛ばしてしまっていた。

 


 数秒後、部屋の中で首が胴体とつながっているのは莉実と僕以外にはいなくなっていた。

 


「絵美、もう大丈夫だから入ってこい」

「は、はい」

 


 リアルタイムにもどして絵美を招き入れた。

 


「ヒッ!」

 


 絵美が僕を見てすくんだ。壁の鏡を見る。そこに映っているのは、全身返り血だらけの真っ赤な少女の姿だった。
それを見て少し落ち着いた。

 


「絵美、莉実の上半身を脱がせろ」

「は、はい」

 


 絵美は莉実に駆け寄ると、戦闘服の背中のファスナーを上げていった。この戦闘服は上げると開くようにジッパーがもちいられている。理由? 知らない。聞いてなかった。



 腕から脱がせる。

 


「ふーん。あざはすごいけど、骨は折れてないみたいだね。ここからこう被弾したんだろうな」

 


 莉実は左の腰から右の乳房にかけて6発の銃弾を受けていた。米軍の研究所ピカティニー・アーセナルの戦闘服がいかに優秀であるかを証明するかのような、みごとな防弾性能だ。

 


「これなら気が付けば歩けるさ。絵美、戦闘服を着せてやって、すぐに莉実を連れてここを出るんだ。僕はこの連中全員を抹殺する」

「・・・はい。でも失神したままで・・・」

「こうやればいいんだよ」

 


 僕は莉実の晴れ上がった乳房を指でつまんだ。

 


「ぎゃん!」

 


 莉実の眼が開いた。激痛が脳に届いたんだろう。

 


「あ、あなた・・・由里ちゃん、なの?」

「ああ、そうだよ。うーん、女の子女の子・・・これでいい?」

 


 2倍速にして声のトーンとしゃべり方を女の子にすることに成功した。興奮も収まって来たんだろう。さあ、本来の目的を忘れないで行動しなくちゃ! そのとき、莉実の眼が変なのが気になったけど、確認している暇はない。

 

 

 

(その⑦につづく)