チョ・ソンジン ピアノ・リサイタル | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

平成29年5月17日(水)、

『チョ・ソンジン ピアノ・リサイタル』(in東京芸術劇場)を聴きに行く。

 

以前、2015年に10月に行われたショパンコンクールの様子を見て、

1位の韓国のチョソンジンさんの演奏より、

2位のアムランさんの演奏の方がよかったのにな〜、と思ったあもちゃん。

アムランさんの来日時(ちょうど去年の今頃)には早速聞きに行った。

→『シャルル・リシャール=アムラン ピアノリサイタル

 

そして今年。

1位のチョソンジンさんが来日するというではありませんか。

やはり2位の演奏を生で聞いたからには、1位の演奏も生で聞いておきた〜い。

でも曲目そのものも私の好みではないんだよな〜。高い席を買ってまでは・・

と躊躇していたところ、安い席が空いてるよ〜というチケットぴあからの連絡に、

早速ポチっと購入したのであった。

 

ドビュッシーは私の最も苦手とする作曲家と言っても過言ではない。

とはいえ、一時は音大を目指そうかという時期もあった私。

避けて通れない作曲家でもあった。

子どもの領分も弾いたわ〜。

ベルガマスクも渋々弾いたわ〜。

そして「ピアノのために」の「前奏曲」のグリッサンド奏法で

「ぎょえーーー!爪が死ぬぅぅ!!」と泣きわめいたわ〜笑

 

※グリッサンド奏法とは

 一音一音を区切ることなく、隙間なく滑らせるように流れるように

 音高を上げ下げする演奏技法。ピアノの場合、爪を鍵盤上で滑らせて演奏する。

 ジャズなどでよく見る奏法かも。手をジャラララ〜と鍵盤上で滑らせるアレ。

 

爪が死ぬかどうかはともかく、聴く分には美しい曲なんだとは思うのだが、

弾く分には大層退屈でねえ。

そんな曲をチョソンジンさんが演奏するとな。

どんな風にドビュッシーを解釈し、演奏するのか興味深くもあった。

 

 

モニク・アースさんによる「ピアノのために」演奏。

大変すばらしい演奏に思わず感涙。

 

モニクさんはフランス人の女性ピアニストであった。

フランス人っぽくない音色だが、ドビュッシーの深い理解はフランス人ならでは。

お国柄って人柄以上に演奏に出るもんなんだなあ。

 

ドビュッシーが(実はショパンも)苦手な私だが、

そんな私にチョソンジンさんがどう聞かせてくれるのか・・・

いよいよ開演のお時間です。

 

◇◆

 

曲目:

ドビュッシー

*子供の領分
 グラドゥース・アド・パルナッスム博士/ジャンボーの子守歌/
 人形のセレナード/雪は踊る/小さな羊飼い/ゴリウォッグのケークウォーク

*ベルガマスク組曲

 前奏曲/メヌエット/月の光/パスピエ

*喜びの島

 

ショパン

バラード第1番 ト短調 作品23
バラード第2番 ヘ長調 作品38
バラード第3番 変イ長調 作品47
バラード第4番 ヘ短調 作品52

 

◎アンコール

モーツァルト ピアノソナタ第12番 2楽章

リスト 超絶技巧曲第4曲「マゼッパ」

ドビュッシー 映像第1集「水に映る影(水の反映)」

リスト 「ラ・カンパネラ」

 

◇◆

 

うーん、やっぱりお国柄って出るなあ。

というより、韓国のピアニストの演奏を聞くのがそもそも初めてなのだが、

どの国の人とも違う音色でちょっと驚いた。

そして国とは関係なく、とにかく彼の演奏の特色は音量の大きさである。

ピアノってあんなに鳴るんだっけ?!と驚きっぱなしであった。

 

私は安い席だけあって1階席の一番後ろ(位置は真ん中)だったのだが、

そこまでジャンジャンバリバリ聞こえてきた。

そして音量の大きさだけでなく、

鍵盤を1mmくらい深く調整しているのか、音の沈み込む感じも独特であった。

(鍵盤を深くすると体力消耗する代わりに、音が深くなる。気がする。)

 

音色や音量以外、演奏についてドビュッシーに関してはあまり言うことはない。

悪くはないけど、よくもない、といいますか。

いや、技術はすんばらしかったです。

ショパンコンクールで優勝するだけのことはある。

ちなみに浜松国際コンクールでも優勝しておりまして、

この通称「浜コン」は、『蜜蜂と遠雷』の舞台となったコンクールでもある。

 

 

蜜蜂と遠雷 蜜蜂と遠雷
 
Amazon

この作品で優勝したのは、韓国人ではありませんでしたが。

 

最近、アジアのピアニストの活躍が目立つ。

この作品でも描いてあったが、

その国の活気度がコンクール上位者の国籍に関係してくる。と。

 

今、アジアが熱い(経済も)。

それが音楽教育の結果としてコンクールの結果に現れるのであろう。

 

さて話はもどってチョソンジンさんの演奏。

後半はショパンである。

相変わらずピアノの音はよく鳴っている。

いやー、ほんとに驚くばかり。ピアノってあんなに音が出るんだな〜。

 

しかしバラード全4曲をぶっ続けで、しかもあの音量で聞かされると、

正直、お腹いっぱい・・・ゲフッ。

分厚いステーキ4枚立て続けに食べさせられているような、もはや拷問。

あまりバラードを4曲通して聞いたことがなかったが、

この4曲って世界観がよく似てるんだなあ。

(ちなみに私は1番と2番しか演奏したことがないので、ピンとこなかった。)

 

とまあここまで文句ばかり書いてきたが、私はひとすじの光を見た。

それはバラード2番の演奏のときである。

 

私(う〜ん、ものすごくシューマン的〜。この感じがたまんない・・・)

 

2番の出だしのロマンティックで牧歌的な歌い出しと激しく急変するメロディに

シューマンの香りを感じるわ〜、と思っていたら、

プログラムによるとシューマンに献呈されているとのことだった。

特に出だしの牧歌的な箇所は、本当にピアノの音色がどこまでも澄んでいて、

清涼感溢れる和音をいつまでも聞いていたい気分になった。

 

ショパンがシューマンを意識して(敬意とか)作曲したのかは知らないが、

きっとチョソンジンさんはシューマンをどこか遠くで意識していたと思う。

それが見事にハマっていて、すばらしい演奏となった。

 

後日、バラード2番の演奏をYouTubeで探しても、

チョソンジンさんを上回る演奏が見当たらなかった。

 

 

あえて言うなら、ランランの演奏がいいかなあ。

(でもチョソンジンさんの透明感には及ばず。)

アジア人にショパンのバラード2番は向いているのかもしれん。

 

 

ショパンコンクールで優勝しているチョソンジンさんだが、

今後はシューマンを演奏していくといいと思うの。

きっと今までにない世界を見せてくれるような気がする。

 

以上、おばちゃんの勝手な意見でありました。

 

というわけで、2015年のショパンコンクールの1位、2位の演奏を

生で聞いてきたわけだが、あもちゃんの中での軍配は・・・。

正直どっちもどっちであった。

技術は申し分ないし、ここまで来るともはや好みとしか言いようがない。

あえて好きな方を言うと、アムランさんかなあ。

しかし生で聞いた印象がすっごくいい!とかそんな風には残ってないからな〜。

二人とも今後に期待!というところだろうか。

 

それにしてもチョソンジンさんの演奏終了後、観客席にいた女性たちが

スタンディングオベーションをしていて、

ギョギョギョーーーー!

と思いました〜。

なかなか日本の他のコンサートでは見られぬ光景。

(そもそも劇団☆新感線でくらいしかスタンディングオベーションなんて見ない)

クラシック界にも韓流の波が・・・??

 

アンコールの中の1曲がモーツァルトだったのだが、

これまた特異な演奏で、ビビりました。

実験的すぎてまるでモーツァルトに全く聞こえなかった(笑)

これも時代やなあ・・・。