あもる一人直木賞(第156回)選考会ー途中経過2ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

発表は目の前に迫っているのにまだまだ迷走中。

 

あもる一人直木賞(第156回)選考会ースタートー

あもる一人直木賞(第156回)選考会ー途中経過1ー

 

前回の2作に引き続き、今回は残り3作全てを読み終わった時点での

私の暫定順位から発表したい。

 

1位 須賀しのぶ『また、桜の国で』(祥伝社)

1位 森見登美彦『夜行』(小学館) 
1位 恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)

 

4位 垣根涼介『室町無頼』(新潮社)
5位 冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』(文藝春秋)

である。

 

1位が3つもあるってどういうことやねーん!とお思いのあなた!

私だってそらそう思いますよ。

でも〜今の段階じゃ選べないのだ。

少し落ち着いて考えたいのでしばしお待ちあれ。

次の記事で結論を出します。ええ、必ずや。

さすがにダブル受賞はあってもトリプル受賞はないと思うので・・。

 

前回でも書いたように、恩田陸の『蜜蜂と遠雷』を読んだ時点で

「今回はこれに決まりか〜」

と思っていたのだ。

ま、第155回直木賞選考会でも同じようなことを言ってましたけどー。

そして見事に外しましたけどー。

(原田マハの「暗幕のゲルニカ」を、絶対これだ!これじゃないとおかしい!

 と自信満々に直木賞受賞を予言し見事に外す、という醜態をさらす。)

 

そして3番目に読んだのは、冲方丁の『十二人の死にたい子どもたち』であった。

 

 

うん、これはない。今回は残念ながら見送らせていただきます。

おもしろかったっちゃおもしろかったのだが、とにかく序盤がキツかった。

文字も物語も全く頭に入ってこないのだ。

選考会を始める前は、

恩田陸の作品がクセがあったら今回は恩田陸で読書が滞るかも、と思っていたが、

まさか冲方氏の作品でこんなにつまづくとは思わなかった。

これ、いつ終わるの〜?と盛り上がってくるまでほんとに苦行であった。

 

読み始めるとすぐに、

これはアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」へのいわゆる返歌なのね、

と気づく。

アガサの作品では10人だったが、この作品では12人だし、

そもそも誰もいなくならない時点で返歌というべきかどうかわからないが、

(皆生還という意味ではそこからは誰もいなくなった、と言うべきか。)

なんとな〜く意識はしているだろうな、とは思う。

しかしサスペンスとして読むにはなんというかあまりに現実味がなくてモヤモヤ。

エンターテインメントとしてはそんなにおもしろくない。

とにかく私は言いたい。

面識のない死にたい子どもたちが集まったのはいいが、

そんなにゴタゴタ揉めてたら、話し合いもなにも早い段階で死ぬ気が失せるやろ!

この作品で一番よかったのは、タイトルだと思う。

 

 

やっぱり恩田陸か〜と思いながら、もりみん(森見登美彦)の作品に手を伸ばす。

そこへ後輩ともともがあもる一人直木賞選考会の様子を探ってきた。

 

と「一人直木賞選考会の進行具合はいかがですか〜?」

私「恩田陸が獲るよ〜。」←どこから来るんだ、この自信。

と「あ、そうですか。なら早々に図書館で予約してきます。」

 

そして布団の中でもりみんを読みふける私。

 

私「こ・・こわい・・朝が来たら読み直そう。さ、寝よ寝よ。」

 

こちらの作品、昼間に読むことをオススメします。

そして読了〜。

 

夜行夜行
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これはまずいことになった、と正直慌てた。

ともともに「恩田陸」と断言してしまったが、こちらもいいのだ!!

10年前、英会話教室の男女グループのうち、

ふっと夜の穴に消えるようにして失踪した長谷川さんという女性がいた。

しかし皆、長谷川さんを心に留めてはいながらも普段の日々を生きていた。

そして10年後の現在、再び仲間が集まった時、とある画家の絵をきっかけに、

一人一人がそれぞれの「夜」について話し出す。それらの話は

「尾道」「奥飛騨」「津軽」「天竜峡」「鞍馬」の5章に分けられ、

それぞれ5つの場所での夜が描かれている。

 

慎み深い恐怖がそこには描かれていて、夜の底のような漆黒の闇の世界が広がる。

この5つの場所のうち、私は尾道しか行ったことがないのだが、

夜に尾道の坂から海を見下ろすと、

電車の窓だけが光っていて、それらの列が夜を横切って行くのがよく見える。

それがなんとなく美しくもあり、ちょっとこわかったりもする。

そんな様子がよく描かれていた。

「尾道篇」は特にこわかった〜。

しかし読んでも読んでもなんだかよくわからず、各章が終わっても理解不能、

闇に包まれたままどんどん物語は進む。

ここでおそらく好き嫌いが極端に分かれると思う。

そして最後に映画「シックスセンス」的などんでん返しが待ち受けている。

これはちょっと大げさな言い回しだったか。

最後まで密やかに謎めいているのだが、なんとなく地にギリギリ足は着く結末を迎える。

 

実際生活していて時々思うことはないだろうか。

もう一人自分がいて、その別の私は別の違う人生を生きているんじゃないか、と。

(結婚、仕事、転居、生死・・の人生の岐路で分かれて行ったもう一人の自分。)

それが地面ごとひっくり返り、目の前で暗転するような驚きを持って最後の章を読んだ。

ラストもこの作品らしく曖昧だ。

どっちとでもとれる。ハッピーエンドかバッドエンドか。夜行か曙光か。

派手な怖さはないが、ひたひたと忍び寄る怖さがある。それを巧みに描いていた。

さすがベテランという腕前を思う存分見せてもらった。

しかし私は知った。もりみんが私より5歳も年下だってことに!

まだ30代。ベテランというには若過ぎる〜。あの落ち着きっぷりはなんなのか。

この若さも直木賞受賞に少なからず影響してくるのではないだろうか。

まだ早いだなんて言わせず、いい影響があることを祈りたい。

 

は〜。恩田陸と森見登美彦の人気作家一騎打ちか〜。

と思っておりましたらば、そこにど真ん中から割って入ってきた作品がある。

 

 

圧倒的に胸に迫ってくる作品で、ほんと困るんですけど−!!!

一騎打ちどころか三つ巴であった。

 

あとがきによると作者は上智大学の史学科ご出身だそうで、

きっと東欧にお詳しいのであろう。

第二次世界大戦前後のポーランドの史実をベースに、

日本人外務書記生がポーランドのため、自分のため、祖国のために生きる姿が、

丁寧に描かれ、時には残酷に、そして真摯に書きつけられていた。

ポーランドが親日国家だというのは耳にしたことはあったが、

正直ポーランドについて私たちはほとんど知らないのではないだろうか。

ショパンの祖国、ショパンコンクールの開催地ってことくらいしか私は知らない。

世界史ではポーランド蜂起などは出てくるが、極東のちっぽけな島国育ちの私、

ヨーロッパのことなんて何一つ知らない。

しかしこの作品を読むと、ポーランドと日本は案外近しい国であることが分かる。

そして面白いのは、ヨーロッパやその他大国から見た当時の日本の位置も分かる。

この作品のいいところは、ほぼ時系列順に史実を丁寧に描写しながら、

それに伴い主人公がポーランドの地で活動していく様子が、

ロマンチックでありながら冷静さも同時に備えながら、けして感情的にならずに

描かれていることである。

扱うものが「戦争」「ナチス」「ユダヤ」「ポーランド蜂起」「愛国」などで、

読むこちらも気を揉みがちな、センシティブなテーマで、右だの左だの安易に分けられかねず、

ともすると作家さんそのものも周囲の思想にひきずられることにもなりかねない。

しかしこの作品には一切そういった思想が感じられず、

ポーランドがただただ愛しい、その一心で書かれた作品であると思う。

一方でそんな愛しいポーランドへの批判ももちろん書いてある。

ポーランドを巡る大国の思惑や、日本の対応やその是非もきちんと描いている。

(今や有名人となった杉原千畝も少し出てくる。)

そして戦争勃発前の重くのしかかるようなどろっとした空気も描ききっていた。

 

戦争をしたいわけじゃない。

誰しも戦争回避のために皆が奔走していた。しかしもうどうにもならなかった。

そんな失意の中でももがき続ける人たちを懸命に描いたいい作品であった。

最近、本を読んで泣いてないのだが、久々最後泣いた。

まさに「また桜の国で」の場面でじわ〜。ファミレスでメソメソ泣いておりました。

おばちゃんがメソメソ泣いてたら、家族の誰かが死んだのかと思われちゃう。

(女子高生だったら失恋か?と思われるが、年が年だけに身内の不幸がまず疑われるであろう。)

欠点がまず見当たらない。

史実をベースにうまく虚構の物語を織り込み、巧みに人物を操り、

しかもショパンのエチュードという音楽まで人物を結ぶエッセンスとして描き込んでいる。

本を閉じて、目を閉じると、遠い国々の大使館で働いている人たちのことを思う。

皆、きっとその国との交流や、我が日本の国のことを思って働いているのであろう。

桜の国のことを懐かしみながら、時にはホームシックになったりなんかして。

今は目に見えての戦争が起こっていないから、淡々と仕事をこなしているだろうが、

いやいや本当は水面下で何かしら起こっているのかもしれない。

そんな風に色々と考えさせられる作品でもあった。

 

ああ〜発表は明日19日の夜。

この3作品のどれが直木賞を獲っても私は嬉しい。

しかしとりあえず私の直木賞授賞作品を次の記事で決めたいと思う。

 

 

ともとも「この3作品のうち、もしどれかが直木賞獲ったら、

     図書館で借りれなくなると思うので、貸してくださ〜い。」

私   「もしってなんやねん!3作品のうちどれかが選ばれるに決まっとるやろ!」

 

嫌なことを言うんじゃない。

ぜ〜ったい3作品のうちのどれかが獲りますからね!!キリッ!