あもる一人直木賞(第155回)選考会ー途中経過1ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

優勝は 忘れたころに やってくる。

どうも、今年は広島カープが優勝する予感です!
なんと、に・・25年ぶり!!
私が見た最後の優勝は思春期まっただ中の高校時代・・。シンジラ〜レナ〜イ!!
いやいや、まてまて、まだ焦るでない。
2位巨人との差が10ゲームだなんて(7/13現在)、まだあってないようなもの。
(長年広島ファンをやっていると、カープにイマイチ信用がない笑)

一方200勝まであと1勝にも関わらず、その1勝がなかなか難しい私の愛する黒ちゃん。
でもその焦らしっぷりもカープっぽいではないか。
がんばれ、黒ちゃん!!

・・・てなわけで、

あもる一人直木賞 忘れたころに 書いてみる。

広島カープの勝敗を気にしながらも、ちまちまと読み続けていた私。
気づけば全6作品を読了していたのだが、記事を書くのをウダウダサボって今に至る。

しかーし!
こんなに記事のアップが遅れているのには、
上に記した広島カープ25年ぶり優勝目前!以外にも、ちゃんとしたワケがあるのです。

それがさ〜〜〜〜
ウダウダしたくもなるわけがあるんですよ〜〜〜〜
どの作品も悪くはないんだけど、なんかあともう一発決定打が足りないなあという、
いわばものたりない作品だらけのダンゴ状態でさ〜。
もうどれでもいいよ、的な・・・←コラッ。

推しメン(伊東、荻原、原田)が3人もいるという、
史上まれに見る楽しいはずの選考会が、どれでもいいよ的な感想が漏れるこの悲劇。
あ〜、だるい。

と・こ・ろ・が!!
最後に読んだ作品がやってくれました!!
最初の10頁くらいで私の頭がぱっかーん☆と開いた。
パッチリと目が覚めた。

ああ、これで決まりじゃ!!!

そう思ったら嬉しくて、ワクワクして、一気に読んで、何度もラストを読んで、
うん、やっぱりこの作品じゃ〜。
と嬉しく思ったね。

全く迷いがございません!!

ああ、この感じ、あのときを思い出す。
全く迷いのなかった、黒ちゃん(こちらの黒ちゃんは黒川博行)の『破門』。
全く迷うことなく、見事直木賞受賞(第151回)を当ててみせました!
 →参考記事『本物の直木賞選考会(第151回)~結果・講評~』など。
その第151回の選考会の感動が再び!・・・た・・たぶん。


そして今、こうして、再び、ああ、やっぱり本はいいなあ、という感情が復活。
広島カープの優勝の行方については男気・黒ちゃんにまかせて、
私はしっかりあもる一人直木賞選考会について記事を書こう!
皆様に、この喜びを伝えたい!
そう思って筆を・・いやいや、マウスを手にとったのであります。
そういう力を私に与えてくれる、そんなすばらしい作品に出会えたのです。

てなわけで、全作品読了してはいるがここはいつもどおり、
読んでいった順番どおり、2作品ずつ順位を発表していっちゃうぞい。
(ラストに読んだ作品があもる一人直木賞受賞作品となるので、登場は最後となります。
 おほほ、私、ひっぱるね〜。)


1位 

2位 門井 慶喜「家康、江戸を建てる」(祥伝社)
3位
4位
5位
 
6位 湊 かなえ「ポイズンドーター・ホーリーマザー」(光文社)

である。

全作品を読んでみて驚きだったのが、6作品のうち5作品が短編だったことである。
短編を愛する私としては嬉しい限りだが、さすがにこうも多いと、
ちょっと長編が少なくないか?
とか不満を漏らす私。人間とは勝手なものである。


さて、私がまず最初に読んだのは、
私の苦手な湊かなえさんの「ポイズンドーター・ホーリーマザー」であった。
(おかずは好きなものを最後に食べるタイプです!)

苦手、と言うだけあって、やっぱり彼女の作品と私は合わないようである。
正直、最後まで読むのがつらかった。
「イヤミス」と呼ばれている内容であることはさておいて、
全体的な完成度からいって、これは絶対にない、と言い切れる作品だった。

ところで、「イヤミス」、というジャンルだが、今まで聞いたことがなくて、
イヤミスとはなんぞや?・・と調べてみますれば、

結末の後味が最悪で、読んだ後にイヤな気分になるミステリのこと。

だそうだ。

しかし残念ながらこの作品、そんな大層なジャンルにわけられるほどの作品でもない。
そこまでイヤな気分にもならなかったし・・。
そんなイヤな気分になるならないということよりも、
作品全体に漂う、ものすごく大きな空間が気になった。
空間がありあまる〜。

今はやりの「毒親」や「母と娘」を扱った短編などがあり、
その題材にふさわしく、息が出来ないほどの密な文章で攻めてほしかったところだが、
よく言えば読みやすい、
悪く言えば流し読みできちゃう、ちょっとザックリしすぎた・・・ザル?
そんな作品になってしまっていたことがちょっと残念。

ただ、あえてそうした可能性もなくはない。
テーマが重い分、軽さに気をつけていた、とか?
だとしたら、あえて軽くするには重くする以上の技術がいるのだが、
今作品は技術不足であることは否めない。
よって自信満々の最下位です!!

ただ私が感心したのは、
売れっ子だけあって、テーマや視点において巷の流行をキッチリ押さえていることである。
そりゃこぞって映像化されるわけだ、と納得した。


一方、同じザルはザルでも、大層おもしろく読めた作品があった。
門井慶喜さんの「家康、江戸を建てる」である。

以前のノミネート時(第153回)で、

「ザルから水が漏れるように大事なところがスルスルと漏れ落ちていくさまに、
 もったいないとしか思えなかった。
(略)
 なんといいますか、その引用の仕方と展開のなさと自己満足が私のブログ程度・・・」

など、私のお口から失礼な発言が次々と飛び出す作品であったのだが、
そんなくだらんあもちゃんの不評を気にすることなく、見事門井さんがやってくれました!

心底おもしろかったです。
『江戸』という史上最大にして史上最高の都市計画について、
ワクワクの脚色・演出をくわえながら、私たちにおもしろおかしく詳細に説明してくれた。
しかもただの街の作り方の説明に終わるわけではなく、
大きく大胆に加工している箇所も多数あり、その加工部分などは感心しきり。

利根川をぎゅいーんと曲げたり、飲み水を奥多摩からひいてきたり、
貨幣を作ったり、そして城を作ったり。
徳川家康が考え尽くして江戸の街を作ったように、
門井さんも考え尽くしてこの作品を作っている。

あらゆる場面で、現在残っている「事実」という細い柱に、装飾をくわえているが、
あまりの装飾の重さに、その「事実」という柱が倒れることがないよう計算されている。
あえての軽さ、それは見事な軽さである。
作品に大胆に開けられた空間からは、江戸の街に広がる青い空が見えるようであった。

前回のときもそうだったが、門井さんは歴史を歴史として見ていない。
あくまでも「読み物」として捉え、独特の世界を造り上げており、その力は充分である。
今回は2位になってしまったが、もっとおもしろい作品を書いてくれると信じている。

ところでこんなに大絶賛なのに、なぜ2位になってしまったかというと・・・。

すんごーーーくおもしろかったが、これだ!という決定打がなかった、ということと、
最後第5章「天守を起こす」で、家康と息子秀忠のやりとりがイマイチだったからである。
それまでの章における家康像と全く違ってしまっていることが、
家康リスペクトの私としては残念だったし、←要するに好み〜
家康の述べた「天守を「白」にした理由」がイマイチ納得できなかったのよね〜。
そもそも、
累々と重なる死者の上に我らはいる・・とか家康が思ってるわけないやーん。
とも思ったし・・(第4章までの家康像で)。

第4章までは、あれ?という箇所や強引さも描写のおもしろさでカバーできていたが、
第5章の親子のやりとりになると突然、その失速した感が否めなかった。
「最後くらいいいこと言って〆めたい欲」が出ちゃって、それが裏目に出た。

さ〜て、残りあと4作!
栄冠は誰に輝くのか、乞うご期待!