恋は突然やってくる。 | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

まあ,そんなこんなで,「エレンディラ」の感想のつづき。→(参照H19.8.12「エレンディラ 」)


ウリセスとエレンディラが初めて出会ったのは,風の吹く荒涼とした砂漠のど真ん中。

テントの中でうちひしがれていたエレンディラと,

エレンディラを一目見ようとテントの周りとうろつくウリセス。

風でテントの一部がめくれあがり,少年と少女は出会い,そして恋に落ちる。


これを見たとき,即座に思い出したこと。


『源氏物語』の「野分」。


野分(台風)の朝。

紫の上(光源氏の妻)は野分で荒れてしまった庭を眺めている。

夕霧(光源氏の息子。紫の上の義息子)はこの野分の風で

もしかしたら紫の上の顔を拝めるかも知れないと

部屋のまわりをうろつく。


風でついたてが倒れる。

夕霧の目に飛びこんできたのは,この世の者とも思えないほどの美しい紫の上。

それ以来夕霧のあこがれの人となる。


という話。

「風」つながりでめくれあがる御簾とかテントとか,

突風は恋を誘発する象徴なのかしら?なんぞ考えてみたり。


でも,よくよく思い返せば,夕霧は紫の上を一方的に見ただけで

紫の上は見られたことに気付いてはいない。

そして夕霧もそれ以上踏み込むこともなく,憧れ,のまま終わる。


めくれあがるつながり,だと,

源氏物語「若菜」か。


女三宮(光源氏の正妻)を一目見てみたい柏木(夕霧の親友)は

女三宮のいる部屋の周りとうろつく。

突如,女三宮の飼っている猫が暴れだし,御簾をめくれあげてしまう。

柏木の目に飛び込んできたのは,ぼーっと立っている女三宮。

その美しさに呆然とする柏木。


というもの。

この後,柏木は恋心を押さえきれず,光源氏の妻である女三宮を手を出してしまい

身の破滅を迎えることになる。



恋は突然やってきて,そして突然終焉を迎える。

終わらなければ恋じゃない。


そう感じた,さんじゅううん歳の夏・・・



※どうでもいいけど,並べて書き連ねて気付いた。

  女の部屋をうろついてるヤツばっかりだ,ということに。