クルーズ2日目の夜。
私達は夕食の後、好きな音楽を探しながら
クルーズ船の中をウロウロした。
シーアも私もラテン系の音楽が好きで
サルサミュージックで踊りたかった。
場所を何度か変えながら、
ワインも2本開けてしまい、かなり良い気分になって
結局、夜遅くにディスコに行ってみた。
そしたら、またあの制服の彼が昨日と同じ場所に立っていた。
立ち方も品があって背筋が伸びていてキリッとした印象だ。
彼の前を通り過ぎるときに目が合ったので
”チャオ。昨日もあなた、ここにいたでしょ。
ここで何してるの?船で働いてるの?”
と、私が言うと、
”そうだよ。船で働いてるんだ。
昨日は眠れなくてここに来たんだけど
今日は君が来るかなって思ったんだ。”
”ああ~そっか。あなた、カサノバだ~。”
と言うと彼は笑った。
その後、私と彼は少し立ち話をした。
イタリア人で、パレルモ出身。
私の事も聞かれたので、簡単な自己紹介をした。
”私はあき。ドイツに住んでるの。
パレルモは船で何度か寄港したよ。
信号無視が多い街だよね。マフィアも多いんでしょ。”
と言うと彼は笑った。
一緒に来ているガーナ人のシーヤが呼ぶので
ディスコの舞台に上がって踊りに行った。
踊って疲れて喉が渇くと
私達はバーに行ってワインを飲んだ。
彼はバーの近くで立っているので
バーに行くと彼と話をする事になる。
”踊ってると暑いね。”
と、私が言うと
彼はフーフーと、口で私に向けて息を吹いた。
会って昨日の今日なのに、この接近の仕方は何なんだ?
と、思ったけれど
潔癖症の私なのに、そんなに嫌でなかったのは不思議だった。
私とシーヤはワインをボトルで頼んでいたので
その制服の彼にもグラスに注いで渡してあげたが
彼は口にしなかった。
そして流れていた音楽に合わせて
いきなり私の腰に手を回して踊りだした。
後から思えば
彼と踊ったのはこの時が最初で最後。
実は彼は踊らない人。
でも、この時はどうしても私と踊りたかった、と後で聞いた。
そして、いきなり言った。
”あき。明日か明後日、一緒にピッツァを食べに行こう!”
それからワイングラスのペーパーコースターを取って
自分の名前と内線の番号を書いて私に渡した。
”僕の名前はニコ。
これは僕の内線番号。
いつでもいいから、電話して。”
そして彼の胸に付いているネームホルダーで名前を確認して
口に出して読んでみた。
”ニコ ビアンコ、ファーストオフィサー”
すると彼はもう一度言った。
”そうだよ。いつでもいいから電話して。”
その時点でもう夜中の2時近かった。
ディスコもおひらきになるので
キャビンに戻ろうとシーアが言った。
するとニコが
”このワインは美味しくないでしょ?
この船のワインバーには
美味しいワインが置いてあるんだよ。後で行ってみようか。”
と言って私達をそのワインバーに案内してくれた。
でも時間が遅く、閉まっていた。
ニコは私に
”明日、ここでワインを飲もう。
そして、あき。
ピッツァも、約束だよ。”
と、言った。
すると、
キャビンに帰ろうとする私達と一緒にニコも着いてくるではないか。
”シーア、彼が着いて来ると部屋番号もバレちゃうじゃん。
どうするの~?”
”あき~。知らないよ~。(笑)”
シーアは半分面白がっている様子。
6階の私達の部屋の前まで来て
ニコは
”お休み、明日ね。” と言って下に降りて行った。
