さくらんぼとふたりんぼ 9~あもん史 妄想編~ | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1995年から1996年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします


次の朝、目が覚めると雨は止んでいた
あもんがこの中富良野森林公園キャンプ場に来て4日目の朝だった
今日は美瑛に行こうかなと思っていたらハカセが話しかけてきた
『おい!あもん、“北の国から資料館”って行ったか?』
『いや、なんか面白くなさそうだっけん、行かんかったけど…』
『なんか、この前のドラマの宮沢りえのビデオがあるらしいで!』
『ええっ!マジで!あの一瞬映った、あのビデオが!』

と驚き答えたのは隣にいたシンさんだった
シンさんは『見に行こうよ~』とあもんとハカセを誘ってきた
『えっ、シンさん、宮沢りえのファンですか?』あもんは聞いた
『うん、白鳥礼子の時から好きなんだ~』
『じゃぁ、サンタフェで興奮したタイプですか?w』
『うん、あれは2冊持ってる』

シンさんの意外なミーハーぶりにあもんとハカセは驚いたが
シンさんもあもん達と同じ“男の子”であったことに少しホッとした
チェリーと森ケンも誘ってはみたが二人は今日は絵を描くらしく
あもん達の不純なツーリングには参加しなかった
あもんはシンさんとハカセで富良野市内に出かけた





『なんだよ~パッケージだけかよ~~』
と不満を漏らしたのはやっぱりシンさんだった
あもんはあの宮沢りえの映像はテレビでは映っていなかったことを思い出した
あの時はそれを見て悲しむ純のアップだったことを忘れていたのだ
しかしシンさんは新たなるモノを発見した
『何!五郎とシュウが入った温泉の湯!?』
そこには乳白色の水が入っていた
『これにシュウが入っていたのか~』
シンさんは想像以上に興奮をしていたがハカセがそれを断ちきった
『多分、ニセモノでしょ~それにあの温泉は十勝の吹き上げの湯っていって、本当は透明なんです』
『撮影の為に入浴剤で白くしたんですよ』

『えっ、そうなの!』とシンさんは驚いていたが
『十勝って近いじゃん!行こうよ!!』と何故かウキウキだった
『あの~今日は美瑛に行きたいんですが…』あもんは申し訳なさそうに言った
『そうだったね~あもん君はまだ美瑛に行った事がなかったんだよね』
『温泉行く前に行ってみようか』と優しいシンさんは承諾してくれた



富良野から美瑛まではそう遠くなくすぐに着いた
ここでの見どころはやはり丘であろう
大きな空に大きな丘が続いている
丘にはポツンと木が立っておりそれを遠くから眺めると絵になる
“親子の木”“セブンスターの木”“ケンとメリーのポプラの木”など多くの名前がついた木があった
この地は昔から多くのCMに使われ“雄大な北海道”という代名詞を全国に浸透をさせた地でもある
ただ、それだけであると言えば終わってしまうが
この丘は四季を通して眺めたら綺麗であると言う
雪や雪溶けや花や新緑やとんぼや…
ただの丘が四季折々の顔を見せると言う
あもんは農道となっている未舗装まで走ってこの丘を眺めた
他の観光客が遠くに小さく見えた
人間って大地に比べたらすごく小さい者なんだなと思った
バイクのミラーにとんぼが止まっていた
まだ8月中旬なのに北海道はもう秋へと足踏みをしていた
朝は少し冷えるし富良野で見かけたテレビではストーブのCMをしていた
これからこの地は一年で一番笑顔の出る“実りの秋”となってくのだろう




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あもんとシンさんとハカセは丘の上に立ち辺りを眺めていた
するとそこに2台のバイクが丘を登って来た
良く見ると女性二人組である
彼女たちはあもん達が眺めていたそばで丘を見始めた
『こんにちは~どっから来たの?』と彼女らに話しかけたのはハカセである
さすがはハカセである。決断より行動が先に出るタイプである
ハカセの話術とウンチクにより彼女らはあもん達に近づいてきた
聞くと彼女らは二人旅で近くのライダーハウスに泊っているという
北海道のライダーの宿としては大きく分けてキャンプ場とライダーハウスがあった
北海道は全国でもライダーハウスの需要と供給が整っている珍しい地である
ライダーハウスは有料の所が多かったが1泊数百円の所も多かった
もちろんそういうところは個室と言うものはなくあってベッドぐらいのものだった
しかし、安価で雨風がしのげるという利点から利用する旅人は多く
どのライダーハウスにも連泊を続ける“ヌシ”が存在していたと聞く
あもんはキャンプ派であったのでライダーハウスは未経験であるが
そこで広がる旅情もきっといいものであるに違いない
旅の仕方や感じ方は無限に有り個人にとって満足できればそれでいいものである



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『僕たち中富良野森林公園キャンプ場でキャンプしているんだ』
『よかったら、こっちおいでよ!楽しいよ!』

と誘ったのは先ほど“男の子”であると確信したシンさんであった
その理由はひとりがシュウチックな雰囲気であった為とあもんは思った
『はい。時間があれば遊びに行きますw』と言って彼女らは次の旅先に向った
彼女たちは未舗装の道をゆっくりと下り始めた
するとその時、彼女たちの一台のバイクがフラフラし始めた
そして、案の定、そのバイクは転倒をした
それを見たシンさんは一目散にバイクに乗って救出に向った
シンさんは250ccのバイクを軽々と起こし“男の子”を見せた
『ありがとうございますw』と言われシンさんがにっこりした時である
どこにいたのか分からない大勢のライダーが『大丈夫ですか?』と“男の子”を見せにやってきたのである


シンさんはその集団に『あっ、大丈夫ですよ!ありがとう』
まるで自分が勝ち取ったような表情を見せていた
正直、困ったな~という顔をしていた二人にあもんは言ってみた
『コケた記念に写真撮りましょう~』
シンさんは『えっ』という表情を一瞬見せたが後に笑顔になった
『シンさんも一緒にw』とあもんは言ったが
シンさんは何故かその時照れてしまい『僕はいいよ~』と言って逃げた
笑顔で写真に写った二人は最後にあもんにお礼を言って去っていった
彼女らを見送った後シンさんはあもんとガっツリ握手をし
『写真送ってね~』とこっそり言った
それらを見ていたハカセはずっと笑っていた
結局、彼女らがあもん達のキャンプ場に現れることはなかった




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美瑛を後にしたあもん達は十勝方面に向かい
“五郎とシュウが入った湯”に浸かった
この温泉は吹き上げの湯と言い混浴無料露天風呂である
更衣室はなかった
だから女性客も居なかった
あもん達は“男の子”として内地の者としては熱い温泉に長く浸かり
誰かが来るのを待っていたが結局、五郎と同じ体験はできなかった






『ねぇねぇあもん君、トリックアート美術館に行って来たんだよ~』
チェリーはキャンプ場に帰って来たあもんに報告をした
トリックアート美術館とはキャンプ場近くにあり
その名の通り不思議な絵が展示してある美術館である
絵が好きなチェリーと森ケンには楽しい美術館であったであろう
チェリーと森ケンはあもんから見て気が合う二人だと思っていた
優柔不断な森ケンの前ではチェリーが頼りがいあるように見え
いつもチェリーが森ケンを引っ張っていく感じがしていた
あもんはもし二人が結婚をしたらうまくいくんじゃないかとも思った事があった
夕飯を食べている時にチェリーがみんなに言った
『花火買って来たんだよ~みんなでやろうよ~』
チェリーの誘いに乗ったのはあもんと森ケンと福さんとかよ作だった
ハカセとシンさんは気が乗らないと言って早く寝てしまった
あもん達は近くの広場に行き花火を始めた


ロケット花火を見つけた福さんは『度胸試ししようぜ~』と言った
度胸試しとはロケット花火を手で持って引火し
爆発する寸前まで持ち続け爆発する瞬間に離すというものである
ちょっと間違えれば自爆をする
それが笛ロケットであればさらに度胸がいる
さすがの福さんは見事な度胸を持っていた
あもんも危なかったがどうにか自爆を防げた
結果、見事に自爆したのは森ケンであった
福さんは更にロケット花火の棒の部分を離れない程度に折り引火した
まっすぐに飛ばないロケット花火は縦横無尽に暴れ出す
そしてそれは不思議と人間を襲うのである
この時襲われた人間とは森ケンである
あもんはこの時、森ケンの天性のM気を感じてしまった
福さんは次にねずみ花火を大量に投げ追いかけっこをし始めた
森ケンもそれを真似たが逆にねずみ花火に追いかけられるはめとなっていた


あもんとチェリーはふたりで手持ち花火を始めた
『綺麗だね~』とチェリーは花火を見つめていた
ここであもんはチェリーに告白をすることに決めた
あもんは花火を下げながらチェリーに言った
『なぁ、チェリーはハカセとつきあっとるん?』
『えっ!』チェリーはあもんを覗きこんだ
『どうしたの、あもん君、急に…』
『いや、前々から気になっとったけん』
『あは、ハカセとは幼なじみなだけだよ~大学に入って再会したんだ』
『ハカセから北海道の話しを聞いて、去年から連れていってもらっているだけだよ~』
『ふ~ん、じゃぁ、森ケンとは?』
『あはは、森ケンとは去年の北海道で会ったかな?』
『なんか波長が合うというか、意見が合うというか』
『でも、個人的に恋愛感情はないんだよ~』
『もう、あもん君、どうしたんだよ~チェリーが気になるの?』

二人の花火が消え辺りは真っ暗になった





『うん、オレはチェリーのことが好きじゃけん!』
とあもんは告白をした
『えぇ~ありがと~私もあもん君のこと好きだよ~~じゃけん!』
チェリーはふざけて広島弁をくっつけ返し、なんだか軽く感じた
チェリーは続けた
『あもん君もだけど、ハカセも森ケンもシンさんも福さんも好きだよ~』
『いやいや、そういう“好き”じゃなくて…』

とあもんは反論しようとしたがチェリーが重ねて言った
『好きなモノは好きなの~違いなんてないんだよ~』
あもんはチェリーの考えがイマイチ分からなかったので再度聞いてみた
『じゃぁ~その中で一番好きなのは誰なん?』
『だから~好きに一番も二番もないんだよ~私はみ~んな同じ』
『それじゃぁダメなのかな~』
『いや、ダメじゃないけど…』

あもんはこの時、チェリーには他に一番の人がいると思った


チェリーは新しい花火に火を着けあもんに言った
『ねぇ~あもん君、私、明日ここを出るんだ』
『え~なんで~どこに行くん!』あもんは驚いて聞いた
『札幌に行くんだ』
『私ね、高校の時だけ札幌に住んでいて、その友達と遊ぶんだ』
『わたし、生徒会長をしてたんだよ~』
『なんだと~~チェリーが生徒会長!!』
あもんは更に驚いた
そしてあもんはその高校の友達にチェリーの一番がいると思った
少し寂しくなったあもんは花火に火を着けて言った
『じゃぁ、もうお別れなんじゃね…』
『ううん!2週間ぐらいしたらまた北海道を旅するんだよ~』
『えっつ』
『今年まだ行っていないとこがあるんだ』
『どこ?』
『ナイタイ高原牧場ってとこ』
『そこのソフトクリームがチョーうまいから、今年も食べなきゃね~』

チェリーが思い出し笑いをしながら続けた
『そうだ!あもん君もおいでよ~一緒にソフトクリーム食べようよ~』
『だって、私たち、好きどうしじゃん!ふたりんぼだよ~』
『ねぇねぇねぇあもん君、おいでよ~』

花火にチェリーの笑顔がものすごく可愛く思った
しかしチェリーは今、ナイタイ高原のアイスクリームを想っているとも思った
『うん、分かった、はんぶんこしよう!』というあもんの返しに
『はんぶんこは嫌だもん、全部食べるもん!』とチェリーは返した



『お~い、あもん!』遠くで森ケンがあもんを呼んだ
あもんとチェリーが振り向くや否や森ケンはねずみ花火を投げ込んできた
二人の足元でねずみ花火が躍った
『キャー!』とチェリーはわざとらしく驚きあもんに抱きついて逃げた
あもんもチェリーを抱きかかえ逃げた
『あはははは、面白いね~』とあもんとチェリーの笑い声が響いていった
あもんはこんな友達もいいなと思った












続く