さくらんぼとふたりんぼ 10~あもん史 妄想編~ | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1995年から1996年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします



『バイバ~イ!またね~』
とチェリーは両手を広げバイクに跨った
あもんはチェリーがバイクを運転するのを初めて見る
バイクは一週間ぐらいエンジンを掛けていなかったので調子は悪かったが
ハカセがメンテをしてやりようやくエンジンが掛かった
チェリーは意外にもビラーゴをぶっ飛ばして行ってしまった
中富良野森林公園キャンプ場に集ったサカナ組のみんなも
そろそろ移動を考えているみたいだった
ハカセはイトウを狙いに道北の猿払へ行くらしい
森ケンは新冠でオグリキャップを見て苫小牧からフェリーで帰宅するらしい
あもんは釧路方面で道東を旅したかった
『お二人はどうするんですか?』あもんはシンさんと福さんに聞いた
『次は羅臼国設キャンプ場かな~あそこは目の前に無料温泉があるし』
『うん、あそこは居心地がいいんだよね~』
『えっ、マジっすか!僕もまたお邪魔していいですか?』
『邪魔も何もあもんも旅人やから遠慮せんでええ』
『もうお前はサカナ組の一員や!』

あもんはいつの間にかサカナ組の一員になっていた
あもんは出発を明日に決めた
『あもん!道東なら開陽台が有名なんだけど、最近は900草原牧場に集るライダーが多いらしいよ』
とハカセが教えてくれたので、あもんは900草原牧場を目指すことにした


次の朝、あもんは朝早くパッキングをしてみんなが起きるのを待った
『もう行くのかよ~早え~な』と福さんは言った
また数日後に会えると思うが一応、お別れである
あもんはみんなにお世話になりましたと挨拶をした
朝食を食べ少しゆっくりしてあもんは出発することにした
バイクに跨るとみんなが見送りに来てくれた
見るとハカセと福さんがいなかった
どうしたんだろう?と思ったがあもんはバイクを進めた
2mぐらい進んだ時だった
木陰からいきなりハカセが現れた
あもんはそれに気付き手を振ろうとした時だった
ハカセはいきなりエアーガンをあもんに向け発砲してきたのだ
それを合図に反対方向の林からは福さんがエアーガンで発砲してきた
あもんは両側からBB弾を浴び痛かった
だからあもんは逃げるようにスロットルを上げた
『あははは~あもん!!またの~』
ハカセと福さんは大声で手を振っていた
あもんも振り向き手を振って別れを告げた









“ライダーは端にあこがれる”そんな神話がある
道あらばバイクを走らせどこまでも行く
ライダーがバイクを止めるのは道の端である
ライダーなら誰もが一度はあこがれるスタイルであろう
富良野でにわかキャンパーになったあもんにもその魂はまだ流れていたらしい
富良野から一度旭川へ抜け層雲峡を横切り三国峠を越えて十勝へ出た
太平洋が見えてきた
もうこの辺りは道東エリアとなる
釧路湿原を岩保木山から眺めて和売市場で海鮮丼を食べた
霧多布岬で夕日と出会いムツゴロウ王国を遠くから覗いた
根室半島を走りようやく“本土最東端”となる納沙布岬に辿り着いた
ここまで来るのに富良野から3日かかった


さすがに道東を走るとライダーは多くピースサインの嵐となる
北海道を走るライダーを見ると“どこを旅してきたか”が分かる時がある
それは彼らがホクレンの旗をかざして走っているからである
北海道で大きなシェアを持つガソリンスタンド“ホクレン”は
この夏のライダー需要に供給するスタイルを持っており
その店の多くには『よってけ!ライダー!!』と看板が掲げられている
そして、そこでガソリンを給油すると旗が貰えるシステムである
この旗は道南,道央、道東,道北と4つに区切られた区間で色が違っており
結果、何色のホクレンの旗を持っていたら何処を旅したのかが分かるのである
4色持っているライダーは北海道を一周したをみんなに証明できるわけだ
その他にも各市町村で開催されるのイベント等で旗を貰えるケースもあり
北海道を旅するライダーの多くは荷物に旗を差し旗を靡かせて走っている
この様に夏の北海道では“旅人の受け入れ体制”が整っており
逆にそれが各市町村の収入源となっているとも言える
更に北海道と言う土地は祖先が開拓民という人が多く
旅人の開拓精神には寛容でとても親切に接してくれるのである


これも北海道の魅力のひとつでもある
道東はライダーに人気のエリアであるため
あもんはここまで多くのライダーと出逢ったが
軽く情報交換をする程度で記憶に残るまでの会話はなかった
青森ねぶたや富良野での触れ合いから一変、あもんは再びソロライダーとなった
しかし、これもあもんの旅スタイルである
楽しむことは十分にできるのである


納沙布岬で花咲ガニの味噌汁を食べた
まだ8月下旬だが秋の気配が漂う北海道ではこの手の食べ物がおいしい
納沙布岬到達証明書を買って見てみた
そこには“本土最東端”とは書かれておらず“本道最東端”と書かれていた
その理由としてはこの岬から近くに感じられる島があるからであろう
この証明書には“北方領土はわが国国有の領土です”とはっきりと書かれていた
道東の沿岸では北方領土が身近に感じられ
“北方領土を返せ!”などという看板もよく見られた
あもんの高校の先輩も北方領土のクォーターであり
年に数回、北方領土にある故郷に足を踏み入れる許可が下りるということを思い出した
『そうか…ここは本土最東端じゃないんだ』とあもんは思った
いつか、日本人が堂々と最東端を旅することができるのだろか?
納沙布岬から北上し野付半島を一周して中標津へ入った
今日は開陽台でキャンプをする予定だった
開陽台はその噂の通り“地球が丸く見える場所”であった
多くの絶景展望台が日本には存在するがここでは地球が見えると表現してもいい
地平線が丸く見えるほどのパノラマにあもんは大きく背伸びをした
もう、何日も風呂に入っていなかったが気分爽快であった
このキャンプ場でも長期滞在組は存在しており大きなブルーシートのタープが張ってあった
しかし、あもんはそのグループに挨拶をすることは止めた
今はソロライダーを満喫しているのである
ソロライダーの満喫はひとりぼっちの暗いテントでも出来る
あもんはこの夜、テントの中で考えた





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あもんは日本人である
日本人であるがゆえに日本を知らないといけない
自分の国土がどんな歴史を巡りどう変化していったか
そしてこれから自分がどう日本を背負っていくのか
その答えを出すにはこの目で日本を確かめなければいけない
学校では教えてくれない歴史や地理は多くあり
その知らない歴史や地理がそれぞれの文化を創造している
日本文化と知らされているのはほんの一部での歴史や地理であり
本当の日本文化は国土を細分化して解説する必要がある
それを融合させる必要性はなくそれぞれの文化を主張することによって
日本人が休暇になると海外へ旅行するという行為は減少するであろう
“日本人が日本を知らない”と外国人は言う
“日本人は日本に興味がないのか”とも外国人は言う
“こんなに素晴らしい島なのに”とも外国人は言う
何故?日本人は日本を自慢しないのか?
あもんは日本人として日本を誇りに思いたかった
それには日本を知らなければいけない
深く深く日本を味わなければいけない
そして立派な日本人となり
胸を張って生きなければいけない


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『明日は900草原牧場に行こう』
とあもんは呟き眠りについた





続く