あもん史 第17章 先駆 | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉



『愛が全てさ~今こそ誓うよ~』
何故だか、盛り上がるので拳を上げながら歌っていたカラオケボックス
『じゃぁ 愛ってなんだい?』なんて質問は誰もしなかった
それもそのはずチェリーなあもんと愉快な仲間達は『愛』の哲学書を読もうともしなかったから
あの頃夢中で追いかけていたもの
それは橋
あの橋があもんにとって最大の目標だったんだ





応援団に入部して一年が過ぎた
あもんはこの時からこう思うようになる


『もう、教わるだけではいけないんだ‥』
教わった応援道を今からは自分で創っていかなければいけない
そしてそれには極める応援道を見つけていかなければいけないんだ






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海田高校の体育祭は4つの組に分かれて競技を行う
各組に分かれた我々応援団が先頭に立ち
各組の応援団を創って競い合う形となっている
数少ない団員がそれぞれ固まらないように分配されるのである
あもんがこの年 配置されたのは青組
そこには先輩である3年生の団員はいなかった
必然的に2年生のあもんが同じ組の3年生と創っていくこととなった
さすがに応援団を一年も続けると目立ってしまうらしく
自分が知らない先生や先輩が『よっ あもん』と話しかけてくれることが多くなっていた
11クラスもあった同期の生徒も『応援団のあもん』という存在は誰もが知っているようになっていた


だけど集められた青組の応援団の中にあもんと面識のあるものはいなかった
むしろ応援団という名称が一般生徒の中で距離を置いた存在となっていて
同期の生徒にもなぜか敬語を使われているという
なんともムズ痒い存在だったのは確かだった
応援団員は一般生徒に比べ大きい声も出るし大きく響く拍手だって出来る
だから教えないといけない
短い間に応援のやり方を伝えないといけない




あもんはこの時、生まれて初めてプレッシャーというものを感じたんだ



3年生の先輩には同じクラスの仲間がいる
同期の2人は同じ組であり2人で相談することができる
このどちらかと言うと立候補の少ない体育祭応援団で集まったひとたち
そのみんなを応援団である自分が応援を教えないといけない
どうすればいいのか分からなかった
何から始めればいいのかも分からなかった




とりあえずみんなの前に立ってみた
そして今できる精一杯の演技をみんなに見せた
傍観するみんな
反応は無い‥
きっと伝わっていない‥
あもんのエールがとても小さく寂しく校庭に響いていた




人前に立ち恥を捨て
人前でオナニーができても全然すごくはない
ということがこの時初めて分かったんだ




そしてあもんはラジカセのカセットのスイッチを入れた
流れたのは『HOUND DOG  BRIGE~あの橋をわたるとき』だった




「あの橋をわたるとき なにかが変わる」
「あの橋をわたるとき こころ燃やして」
リズムフルなダンスであもんに伝わった言葉だった




歩み始める応援道の入り口には一本の橋が架かっている
その橋を「先駆橋」という
先駆‥導くということ
人の前に立つからには導くことができる人間でないといけない
あもんは極めようとする応援道の手前にあるこの橋を渡る決意をした





橋を渡ったあもんがまず行った事は
応援を教えることではなかった
それは仲間を知ることだった

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そこには『押忍』という挨拶は全くなく
若者特有のエロトークやバカトーク


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時にはとぼけ、共に笑い
仲間と一緒にいる時間を大切にしていった
定時制の生徒が通ってくる時間帯になっても
定時制の生徒が帰っていく時間帯になっても
用務員のおじさんに怒鳴られ追い出されれば近くの公園に行き
テストで初めて赤点を取るぐらいまで仲間との時間を大切にしていった
いつしか先輩と同期と後輩で
敬語のない会話が校庭に響いていった




そしてあもんは再びみんなの前に立った
あもんが『そうじゃろ~』と言えば『そうじゃね~』と響き
『行くぞ~!』と言えば『おぉ~』と響き
『押忍』と言えば『押忍』と響くようになった
この時初めて青組応援団は創立された






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人の前に立つということ
それは後ろの人を知るということ
ついてきてくれる人を想うということ
そしてそれは
たまらなく嬉しいということ





あの橋を渡ったら 全てが変わった





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