日本で一番多く星が見える島
「波照間島」
南十字星が見える島とも言われ
日本天文文学界では貴重な島だ
島には人工の灯りがほとんど無く
ジェット気流の影響をほとんど受けないかららしい
この島で夜を迎えた僕は
少し島散歩
2000年に起きたキャンパーが観光客を殺めるという
起きてはいけない殺人事件に
島は旅人に勧告をするようになった
夜9時以降は外をウロウロしないでくださいと
島のルールは守らないといけないので
近所散歩だけにした
宿を少し離れると驚くほどの暗闇だった
目が馴れるまでは歩くことは出来なかった
少しずつ本当の夜の色が浮かび上がってきた
それは黒色では無い夜の色
紫かかったグレーの世界である
この世界の演出家は月だった
まんまる顔の満月君は
ゲーテの色彩論を見事に証明してくれた
今回だけはニュートンの光学は必要なかった
色の三原色で有名なゲーテはこう言っていた
「色彩は光の行為である 行為であり受苦である」
「色彩は主観でも客観でもなく人間の眼の感覚と自然たる光の共同作業によって生成する」
ゲーテによると暗闇で見えにくい色は茶、黒、青、紫で
見えやすい色は黄、白、オレンジらしい
僕は演出家の満月さんと協力し
波照間の夜を創り上げることとした
ゲーテのことばを信じ黄、白、オレンジにオファーをした
今日はいつも主役である星空さんはお休みだったけど
声をかけると「少しだけなら」と友情出演をしてくれた
そして今日の主役は雲さんを抜擢した
エキストラは影さんだ
音声さんは必要ない
大道具は風さんに依頼した
そして出来上がったこの作品は
あの時あの場所でしか見られない
そして一生忘れることの出来ない映画になった
☆
☆
☆
☆
☆
『島国からの贈物』
☆
☆
☆
☆
☆
『雲まんじゅう』
2005年5月7日 沖縄県波照間島 月明かりの下にて
宵には無口になるこの島の
ただっ広い空の中
ひときわ明るい満月がある
月を見るとまぶしくて
明るすぎて星が見られない贅沢さ
人影が道に延び
絵の具にない島の色
あいにく雨雲あらわれて
月が隠れた雲色は
黒白黄橙の四色で
芸術的な雲まんじゅう
わずかに見える星達と
ゆうゆう流れる雲達と
月と無口と雲まんじゅう
この映画のタイトルをなんとつければいいものか
詩集 『島国の宝物』より
涙は悲しい時に流れるものではない
旅先での涙には意味がある
次回更新 『ありがた涙』