島国の教科書 | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

毎年話題を集める教科書検定では

島国の宝物を議題にしたことがあるのだろうか

僕の持っていた教科書には載っていなかった

もちろん、先生も教えてくれなかった

そんな島国の教科書が屋久島にはあった

 

一時間目

「屋久島世界遺産センター見学」

世界遺産ということばを知ったのはこの場所であり

世界が遺産を伝えたいという熱意がそこにはあった

遺産は残さなければ遺産には成らないものなので

遺産ができるまでには先人の熱い想いが必要だ

伝え合うということばで歴史が存在するものであって

「何処どこのランチはおいしかった」というのも想いの伝承

そうすれば僕たちの遺産というのは

無くならないもの全てのものと言えるだろう

「また、食べたいね」の「また」の数だけ遺産はある

 

二時間目

「モッチョム岳(944m)登山」

縄文杉登山を制覇した後に臨んだ山

小さな山だが、縄文杉と同じぐらいの時間と体力を消耗した

倒木だらけの道をたったひとつの目印を頼りに登った

昨年起こったこの山での遭難を思い出した瞬間

道を進む勇気と道を引き返す勇気が戦っていた

ひとりぼっちのこの山で

僕は一人じゃないんだと叫び続けた後

山頂に崇められている山の神に感謝をした

「ここまで連れてきてくれてありがとうございました」

「今まで生きていてよかったです」と

 

三時間目

「栗生の浜下りの神事に参加」

町内放送で情報を仕入れた僕は

神に会えるのかと期待して

集会所で行われている祭りに参加した

「集落の発表会」がそこでは開かれ

日ごろ挨拶をしていた集落の人たちの笑い声が響いていた

下座の椅子に座っていた僕は

いつしか上座の座敷に呼ばれ

飲めや、食えやと贅沢三昧

島人と飲み語り、幼児を抱っこし、笑った時間が流れていった

島人と旅人なんて区別はここには無かった

人間はみんな人間なんだ

 

四時間目

C場で檻に入れられたヤクザル保護」

小春日和を満喫していたら

今日はヤクザルもピクニックらしい

ヤクザルの群れがC場を満喫していた

いつの間にかC場の隅に設置されていた檻に

親子のヤクザルが捕らえられていた

逃がしてやろうと思ったけど

島のルールを侵すのは旅人のモラル不足

そっと見つめていたら威嚇を始めるお母さんサル

ストレスの溜まった母さんサルは子供に暴力を振るい始めた

子供ザルが辛そうだったので

役場に電話をし事情説明

何時間経っても役場の人はこない

子供ザルが死にそうになっていたので思わず柵を外した

檻から逃げ出す母ザル、動けない子ザル

小ザルを助けようとすると襲い掛かってくる母ザル

もうどうしようも出来なかったので

無関心でいることに決めた

人間とサル

僕たちはいっしょに居てはいけないんだ

境界線は犯してはいけないんだ

 

休憩時間

何故かこの時期に講演に来ていた「武田鉄也のお母さん」の講演を聴いた

しゃべり上手な彼女の鉄也ネタ 

二時間って短いなと思った

 

五時間目

「生きるという日記を書く」

古代人間は一生のうち半分は遊んでくらしていたらしい

世界に負けない日本を作った先人は働くということで

島国の宝物を創った

お金の価値は一気に膨れ上がり

円依存症はもう直すことの出来ない国民病になった

しかし日本人はもう分かっている

生きるということは

木々から酸素を頂き

太陽から光を頂き

山から水を頂き

地球にそっと触れて

虫の音に耳をすまして

美しい夜空を見上げて

花の香りに包まれて

おいしい野菜を頂いて

土の上で寝転がって

地球を身体全体で感じあう

ということだ

 

放課後

12日間も滞在したため

何度も受けた職務質問

旅好きなおまわりさんと

おしゃべりを楽しんだ

☆ 

『島国からの贈物』

『島国の教科書』

 

1997221日 鹿児島県屋久島にて

 

一月に三十五日雨が降るこの島では

命の源をためこんでいて

数多くの動植物といっしょに生きてきた

何千年も

亜熱帯から冷温帯までの気候をもつこの島では

海の神と山の神と仲良く遊んできた

何千年も

そう 

ここは島国の教科書

 

ここを訪れた人々は

 

山のたくましさを教わる

 

海のありがたさを教わる

 

自然の厳しさを教わる

 

地球のやさしさを教わる

 

蘇生の必要さを教わる

 

共生の素晴らしさを教わる

 

ここにいるうれしさを教わる

 

生きている楽しさを教わる

 

 

 

若干22歳のあもんが7200歳の先輩にあだ名をつけました

図々しくも先輩に手紙を綴ってしまいました

『ガリバー君へ』