「ライダーになった限りは全国道を制覇したい」
ライダーなら一度は試みてみる目標だ
残念ながらあもんは今現在、制覇はしていない
バイクに乗り始めて数ヵ月後
今となっては無謀としか考えられない挑戦をした
「与作(よさく)を走る」
生まれて初めてのソロ・ロングツーリングである四国一周
その行程の中に迷うことなく与作は選ばれた
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国道439号線(愛称:よさく)
四国を代表する酷道(こくどう)だ
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福山-多度津フェリーで早朝に四国上陸
四国山脈を横断するためにR32を南下した
その最中、僕は首をかしげる
「大歩危・小歩危」
「おおぼけ・こぼけ」と読む
大きなボケと小さなボケか?ととりあえずボケてみた
ここは大股で歩いても小股で歩いても危険だと言われる渓谷だった
四国を代表する景勝地で観光客も多い
ここを抜けると祖谷渓(いやけい)と呼ばれる渓谷にたどり着く
なにがそんなにイヤなのか?と再びボケてみた
ここで必ず訪れてみたいところは「かずら橋」である
恐怖の橋とも言われる
名前の通り、サルナシ(しらくち かずら)で出来た橋で
高さ14mのうえに風が吹いただけでもギッュギッュと揺れる
観光地化されているからみんなが渡り
さらにギッュギッュと揺れる
古文書によると、最古では1646年に七つも存在し
平家落人がこの地に潜み、追っ手が来てもすぐ切れるような造りになっているらしい
そう知るとますます恐くなる
ワイヤー補強がしてあっても恐い
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さて今回の目標である与作に突入だ
彼にはこのかずら橋を抜けると出会うことが出来る
この与作を楽しみつつ秘境の方のかずら橋である「奥祖谷かずら橋」に向かった
濡れた道路は1.5車線
隣接する崖に吸い込まれそうな雰囲気
四国の山間国道の名物である災害復旧工事を何箇所か潜り抜け
対向する大型ダンプとのコミュニケーションを大事に
燃費と走行距離で計算する残ガソリンの計算を飽きるほど行い
「山崩れ注意」とか「その他の注意」などの標識にビビりながら
教習所でも練習しなかった「カーブ手前でのホーン鳴らし」を遂行しつつ走った
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さすが与作
僕の経験値の少なさを教えてくれた
人間はこうして強くなる
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十二分に恐怖体験をした僕は奥祖谷かずら橋に到着
男橋と女橋で2本架設されているこのかずら橋は秘境ムードたっぷり
近くにある「野猿」という人力ロープウェイで川を渡るのもなかなかオツだ
このかずら橋を渡った僕はこう感じた
「恐くない?」
どうやら人間は成長するらしい
僕は恐怖克服という経験値がアップしたみたいだ
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この与作
地図を見る限りこれより先は
理科室で見たおなかが開くマネキンの腸のような形をしている
もう、強くならなくてもいい‥
弱虫あもんが顔を出した
「早く二車線に会いたい」
そんなことを考えつつ再び悪戦苦闘
そうこうしているうちに人間特有の生理現象に陥る
「小便がしたい」
さっきしとけばよかった
祖谷渓の渓谷のがけっぷちでしている
あの小便小僧の隣でしとけばよかった
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『島国からの贈物』
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「小便小僧」
1993日 22月8年
君たちは知っているか
吸い込まれそうな渓谷に突き出た岩に
一人立って小便をする小僧を
この村では昔から
小僧から男になるために
この岩から渓谷に向かって
小便をしないといけない
ここに立ちすくんでしまったら小僧のまま
男になるには度胸と根性が必要なものと
昔から伝わる言い伝え
ここで男になった小僧は
やっと嫁をもらえる権利がある
ここで小便できない小僧は
一生小僧のまま
なんて話は僕の作り話し
でもなぜここに小便小僧が立っている
旅のぎもん
噛めば噛むほど味が出る