「櫻井くん、良かったらここで寝てね」
風呂から出たら、相葉さんがベッドを指さしながら言う。
「え、相葉さんは?」
「来客用の布団とか無くてさ、ごめんね」
「だから、相葉さんはどこで寝るの?」
「僕はココで寝るから」
「ダメだよ」
毛布が1枚置かれたソファ。そんなところで寝たら風邪ひくじゃんって、速攻でダメ出しした。
「俺がソファで寝るから、相葉さんはちゃんとベッドで寝て」
「え……ダメだよ。櫻井くんはお客様なんだから……」
相葉さんの言葉に口を尖らせた。
さっきから『お客様』って言うのが、気に入らねぇ。
いや、相葉さんの気持ちもわかるんだけどさ……
「俺は、お客様じゃねぇ……トモダチだろ」
「……え……」
「……なんなら、カレシの座を狙ってますけど」
「……え、と……」
困った顔の相葉さんに、ニヤリと笑ってみせる。
困ってるけど、拒絶じゃないって分かるから、今はそれだけでいい。
「一緒に寝よって言いたいとこだけど、俺、めちゃくちゃ寝相悪いからさ。多分、相葉さんのこと蹴り落としちゃうから、俺がソファで寝るわ。
ベッドで寝てても、起きたら床で寝てるとかザラにあるからさ。相葉さんはいつもちゃんとベッドで寝てるんだろ?慣れない事すると良くないし、明日、車も運転して貰うしさ」
それじゃ、おやすみって、さっさと毛布をかぶってソファに横になる。
「櫻井くん……」
「さっさと風呂、行ってこいよ。明日は早起きすんぞ」
「……」
まだ困った顔で俺を見ている相葉さんを見上げる。
「なに?ベッドで一緒がいいの?」
「ち、違うよ!お風呂入ってくる!おやすみ!」
慌てて風呂場に消える背中を見送って、さっきと逆じゃんって、毛布にくるまって笑う。
「『カレシ』かぁ……」
ひとりで呟いて、唇に触れる。
さっきのは、きっと相葉さんは覚えてないだろうからノーカウントだけど……
「やばい……」
オトナのキスって、あんななのか。
あんなキスを俺だけって思ってしてくれたら……
「それだけで白メシ3杯は余裕でイケるな、うん」
恥ずかしくなってふざけてそう言ったのに、身体の熱はおさまらなくて、仕方なく立ち上がる。
コップに水を汲んで、一気に飲み干してから、相葉さんの部屋を見渡した。
キレイっていうより、殺風景な部屋。
ここでひとり、どんな気持ちで過ごしてきたんだろう。
『僕』
『俺』
『ボク』
まだ俺の知らない相葉さんがいるんだろうか。
もう一度コップに水を汲んで、ひとくち飲んでからシンクにもたれてため息をついた。