「相葉さんさ……明日ってか、もう今日か……
今日って暇?」
あっつ!うっま!って、冷凍ご飯で作った雑炊を食べながら櫻井くんが僕を見上げる。
「特に予定はないけど……」
休みの日に予定があることなんて、ない。
「車、持ってんだよね?」
さっき、鍵持ってたよね?って櫻井くんが首を傾げた。
「うん。一応、あるよ」
「じゃあさ、付き合ってよ、俺に。連れて行って欲しいとこ、あるんだ」
「……わかった」
さっきのお詫び、って訳じゃないけど……断る理由もないしなって頷けば、嬉しそうに笑って、また雑炊を掻き込む。
「はー!美味かった!ご馳走様でした!」
「櫻井くん、お風呂どうぞ。お皿は僕が洗うから、そこに置いておいて?お風呂場にタオルと新しい下着出してあるからね」
「でも……」
「櫻井くんは、お客様なんだからさ。それに僕、さっきまで寝てたから、やたらと元気だし……」
困った顔で僕をじっと見つめている櫻井くんに、ニヤリと笑ってみせる。
「それとも、一緒に入る?」
「は……はぁ?!入らねぇし!!!」
ばっかじゃねぇの!って叫んで真っ赤になる、思った通りの櫻井くんの反応に吹き出した。
「トイレだし!」
ふたつ並んだドアのひとつを開けて、櫻井くんがそう叫んで、僕はまた笑う。
そんな僕を睨みながら振り返って、左側のドアを開けた櫻井くんが、お風呂先にいただきますっ!って叫んでからドアを閉めるから、僕はまた吹き出した。
「ほんっとに真面目なんだよなぁ」
櫻井くんが使った食器と鍋を洗いながら、そう呟いて笑う。
ほら、やっぱり。
櫻井くんといると、僕は笑えるんだ。
さっきまであんなに、心が痛くて苦しかったのに。
ぎゅ、とスポンジを握って、出てきた泡をじっと見つめる。
この泡みたいに、全部流せればいいのに。
僕の汚いところ、全部、洗い流せたらいいのに。
「そんなこと、出来るわけない、か……」
流れていく泡を見つめて、ため息をついた。
けど、居てくれたじゃん。
僕が離さなかっただけじゃないの?
寝てる間に帰らなかったじゃん。
もう終電が無くなっちゃったからじゃないの?
「あぁもう……」
あと少しだけって思ったのに。
櫻井くんにそばにいて欲しいって、思ってしまう気持ちを止められない。
『言うのはタダだよ』
『言ってみりゃいいじゃん。言うだけなら損しないでしょ』
ニヤリと笑ったカズの顔を思い出して、空中を睨む。
「そんな簡単に言えるわけないじゃん……」
何回目かの大きなため息をついて、シンクの端っこにつかまってしゃがみ込んだ。