「嘘じゃねぇ。なんかされた、なんて思ってねぇ。俺がしたかったんだよ」
曇りのない真っ直ぐな瞳に見つめられて、何も言うことが出来ずに下を向いた。
左腕に残るアザは、僕が、キミを離さなかったからできたもののはずなのに。
逃げ出そうとしても、逃げられなかったんでしょう?
『俺』がキミを離さなかったんだ。
「けど、結局なんも出来なかったから……」
「それは違うよ、櫻井くん」
あの女から逃げるために、『俺』はキミを利用しようとしたんだよね?
そう考えれば、唇に残る感触にも説明がつく。
どうして、キミは僕を責めないの?
どうしてキミは、僕の近くにいてくれるの?
罵倒されたっておかしくないのに、どうしてキミは、泣いてるの?
「ずっと、居てくれたんでしょ?僕が変になっても」
「変って……ただ、俺が相葉さんのそばに居たかっただけだよ。
だけど、何もできなくて、自分が悔しくてどうしようもなくて、情けなくて……って、マジでカッコ悪すぎだ、俺」
どうして?って思うのに。
それ以上に、嬉しいと思うなんて。
その真っ直ぐな心は、誰かもっと……櫻井くんにふさわしい誰かに向けられるべきものなのに。
そう分かっているのに、狡い僕は櫻井くんを抱きしめる。
「あいば……さん?」
「ごめん、少しだけ」
ごめん、櫻井くん……
少しだけ、甘えさせて。
あと、ほんの少しだけ。
櫻井くんの手が、そっと僕の背中に回る。
その手を、離したくないなんて思っちゃいけない。
「ごめんね」
離れようとした僕を、櫻井くんの腕が引き寄せる。
「相葉さん、ごめん……ごめん、なんだけどさ……」
「え?」
「……腹減った」
「ぶっ……」
思わず吹き出して、櫻井くんが困った顔で笑う。
「成長期なんだよ!」
「ふふ、うん。何かあったかな。すぐ作るから待ってて」
「スイマセン。お願いします」
しゅんって小さくなっちゃった櫻井くんの頭を、わしゃわしゃと撫でてから立ち上がった。