「お疲れ」
ぽんぽんって、俺の背中を叩くおーちゃんの肩に、おでこをぐりぐりしてから離れる。
「急に来て、ごめんね?」
「いいよ、ヒマしてたし」
くるりと向きを変えたおーちゃんの後ろを歩く。不自然に後ろに伸ばされた左手。
しばらく迷ってから、その指先をそっと握った。
「なんか、ドキドキするね」
「そうか?」
ぐいって力を入れておーちゃんが俺の手を引っ張って、指と指を絡めてぎゅって握り直した。
そのまま無言でエレベーターホールに向かう。
「ねぇ、誰かに見られちゃうよ?」
「見せときゃいいじゃん」
ちらりと俺を振り返るその顔は、ゾクゾクするほどかっこいい。
「手汗、すげぇな」
「……だって、おーちゃんがかっこいいから」
「んはは!ありがと。相葉ちゃんは可愛いぞ?」
離してよって言うのに、ちっとも手を離してくれないまま、エレベーターを降りる。
もう、どんどんどんどん汗かいてきちゃうんだけど。
「どうぞ」
「……お邪魔します」
ギョサンを脱いで、玄関の上がり口で振り向いたおーちゃんが、俺のことをぎゅって抱き寄せた。
「おーちゃん?」
段差のおかげで、おーちゃんの胸の中にすっぽり収まった、俺。
「あれ、言って」
おーちゃんの胸にくっついた耳から、直接おーちゃんの声が身体に響く。
「あれ?」
「うん。御前様の決めゼリフ」
「え?えーと、推理という雑事は……」
「違う、それじゃねぇよ」
んふふ、って、柔らかい笑い声が聞こえて、くっついてるからだけじゃなくて熱くなった耳をおーちゃんから離して、今度はおでこをおーちゃんの胸にくっつけた。
「あ…アバンチュールのお誘い、ですか?」
「顔見て言ってよ。聞こえないじゃん」
おーちゃんの手が肩に乗って、そっと身体から引き離された。
見上げたら、俺を見て優しく笑う。
「アバンチュールのお誘いですか?」
「うん、そう」
にやりと笑ったおーちゃんが、俺の唇をあっという間に攫っていった。