「あっちぃーーーー」
雅紀が言ってた『小さいけど綺麗な川』まで歩いて、コテージに戻る頃には、太陽もだいぶ高くなって夏らしい気温になりつつあった。
繋いでしまったら、離すタイミングが分からなくて……多分、離したいとも思わなくて……ずっと繋いでいた手にも、じっとりと汗が滲む。
「あ!さとちゃん、おはよ!」
「おー、まーちゃん散歩いったのか?」
大野くんを見つけて、雅紀の手がするりと俺の手の中からいなくなる。
「あのさ!さとちゃん、お願いがあんの!」
嬉しそうに大野くんに向かって走る背中を、無意識に目で追う。
雅紀に何か言われた大野くんが、えっ!って、驚いた声を上げて俺の方を見た。
なんだ?
海の時と同じ、鋭い視線。
目が合った瞬間に、ふにゃりと笑う。
気のせい、だったかな……
「さとちゃん、ありがと!」
雅紀が大野くんに飛びついて、大野くんがよろけて笑う。
急に涼しくなった手をポケットに突っ込んで、寂しいような……でも、ふたりの信頼しきってる感じのあったかい雰囲気がなんだか嬉しくて、俺も笑う。
全開の笑顔のまんまで、雅紀が俺に向かって走ってきた。
「しょーちゃん!早くご飯食べて昨日の続きやろ!」
「え!俺はもういいって!」
「だぁめ!鳥さんひとりじゃ可哀想だから、もうひとり、作って!」
「ひとりって……鳥は1羽、だろ?」
「細かいことは気にしないのー!」
はい!ごはんごはーん!って背中をぎゅうぎゅう押されて、コテージの入口の段差に躓きそうになる。
「ぅお」
「わっ」
俺の背中に、雅紀がぶつかる。
「危ねぇって」
「くふふ。ごめんね?」
振り返って雅紀の背中に手を回したら、まだこっちを見ていた大野くんと目が合った。
大野くんは、俺を見てにやりと笑って……アトリエに消えて行った。