しょーちゃんの視線から逃げるようにスタジオを後にした。
『多分』なんかじゃなくて、『気の迷い』だったって、言ってくれた方が良かったのに。
「これ、買取りするから着て帰っていい?」
「分かりました。衣装さんに連絡しておきます」
鈴ちゃんにそう言いながら荷物をまとめて…
「お疲れ!」
びっくり顔のおーちゃんに手を振って横をすり抜ける。
目の前に見えた見覚えのある背中に、やっぱ、俺ってラッキーボーイじゃね?って、心の中で呟いた。
「橘くん!」
「あ!相葉くん!久しぶり。どしたの?」
「この後、予定ある?」
「……ないよ?飯でも行く?」
「…うん…」
俺を追いかけてきた鈴ちゃんが、橘くんに会釈をして立ち止まる。
「鈴ちゃん、橘くんとご飯食べに行くことになったから、今日はここまででいいや。お疲れ様」
じゃ、行こうかって、橘くんが俺の肩に手を回して歩き始める。
「俺の家でいい?」
「……うん。急にごめんね?」
ハンドルに手をかけながら、橘くんが俺を見てにっこりと笑う。
「言ったじゃん、俺…仲良くなりたいって。声かけてくれて嬉しいよ?」
抱えたカバンの中で、スマホが何度も震える。
「……出なくていいの?」
「……うん」
帰ってから作ると遅くなるから、おすすめの店のテイクアウトでいい?って橘くんが小さなお店の前で車を降りた。
また震えるスマホをカバンから取り出して画面が暗くなったところで電源を落とした。
「電話大丈夫?」
「うん。明日の連絡だった」
「そ?」
「うわ、いいにおい」
「ここね、小さい店だけどめっちゃ美味いから!俺ん家すぐだから、冷めないうちに食べれるよ」
持っててくれる?って袋を俺に渡して、その手でそっと俺の頬を撫でる。
「相葉くん、また綺麗になったよね」
「男に綺麗っておかしいでしょ」
「相葉くんは綺麗だからいいの」
「なにそれ」
優しく笑う橘くんに、何故か胸がチクッと痛んで…動き出した窓の外に視線を移した。