「俺も風呂、してきますね。テレビとか見ててくださいね」
飲みかけのカップを置いて、相葉くんが立ち上がった。
「おぅ」
その背中を見送って、ぱたん、と閉まったドアにため息をつく。
俺、何してんだ?
なんで、泊まるつもりになってんだ?
相葉くんがシャツをじっくり見たいからって、洗濯してくれるからって言ってたから……うん、そうだ。それだから、だよな。
しかしなんだ、この緊張感。
コーヒーは、めっちゃうまい……けど……
「酒、飲みてぇ……」
カクテル数杯じゃ、飲んだ気がしねぇ。
てか、いろいろ、色々ありすぎて酔いも覚めるっての。
何でこんなに気になるんだろ。
チャラくて適当に生きてるみたいな、1番嫌いなタイプの人間だと思ったのに…
話せば話すほど、謎が深まる。
向日葵みたいな笑顔と、たまに見せる『儚い』としか言いようのない顔と…
人懐っこいのかと思いきや、心には分厚い壁がある、みたいな…
本当の相葉くんって、どんな人なんだろ…
『さとちゃんは小さい頃から俺のヒーローなんです』
……大野くんなら、知ってるのかな……
いやいやいや、そんな事考えたって仕方ねぇし。
ぺちっと顔を叩いて、カバンからスマホとPCを取り出した。
スマホの未読2通は増田と松本。
増田からは資料手直し済みの連絡、松本からは……
『デート楽しんでる?
相葉くんの学校、今度学祭あるらしいよ。
行くならチケット手配するけど、どうする?』
……なんて言おう。
今、実は相葉くん家にお泊まりなんだ!とか、言える訳ねぇ…
そもそもなんで、連絡先交換したことも、飯誘ったことも松本に隠したんだ、俺は…
てか、チケット手配するってなんだよ。
どんだけ顔が広いんだアイツは…
とりあえず、松本からのLINEは、既読スルーのまんま、資料の確認に取りかかった。