雅紀をいたく気に入った様子の母さんから、なんとか、雅紀を引き離して、目を覚ましてずっと雅紀に、へばりついてた翼もひっぺがして、家まで送るって、外に出た。
手が触れそうで、触れない距離で並んで歩く。
手汗、ハンパねぇ…
「あ、しょーちゃん、ココ」
「え、お前ん家って、ここなの?」
「うん...ここ、じぃちゃん家」
『chronostasis』と書かれた看板。
人の良さそうな店主の顔を思い出す。
あぁ、あの人が雅紀のじぃさんか…うん、わかる。雰囲気そっくりだ。
「...俺、この間、時計修理出した!」
「...うん。じぃちゃんがね、金髪でピアスもしてて、見た目は不良っぽかったけど、言葉遣いとか、挨拶とかしっかりしてる人が来たっていうから、先輩なのかなーって思って調べちゃった」
まぁ、見た目はそうかって、笑う。
「もうすぐ、修理終わると思う」
「マジかー!早く嵌めたいな」
言った後に、そういえば一番弟子に修理させてもいいですかって、言ってたなって、思い出した。
若いけど、腕は確かで、誠心誠意対応する子だからって…それって、もしかして、雅紀のこと?
「え?なに?」
突然黙った俺に、ちょっと挙動不審な雅紀。
雅紀が修理してくれたんだとしたら…間違いなくめっちゃ大切に使うわ。いや、そうじゃなくても大切に使うつもりだけど…
「あ...何でもない。朝練ない日は、迎えに来るわ」
「...え、だって...遠回りにならない?」
「いいの。俺が来たいの」
雅紀の髪の毛をくしゃって、撫でる。
手は繋げなかったけど、少しでも触れたい。
雅紀が少しはにかんで俯いた。
「今日はホントにいろいろありがとな?」
「...うん...俺も楽しかった。翼くんと耀ちゃんにも、よろしくね?あと、おばさんにも...」
「...あー...悪かったな、母さん、うるさくて」
後輩だって紹介したのに、翔のどこが好きなの?だの、そこらへんの女の子より可愛いだの、料理もうまいし、翔のお嫁さんにきてくれたらいいのに!とか、勝手なことを言いやがって。
こっちは心臓が飛び出すかと思ったわ。
「うううん。また、会いたい」
母さんを思い出したのか、雅紀がくふふって、笑いながら言う。
「また、来いよ」
「うん...洋服は洗濯してから返すね?」
また、また…って、次の約束がどんどん増える。
好きって気持ちもどんどん、増える。
頬に触れて、おでこにキスした。
「おやすみ」
「...うん...おやすみ...」
「早く入れよ、見てっから」
「う、うん。また、明日ね」
雅紀の姿が家の中に消えるのを見届けて、ニヤけそうになる顔を必死で抑えながら、家に引き返した。