「だから、何度話しても同じだって。相葉雅紀が、マサキのことを覚えてるんなら、規則どおりマサキを処分するしか、ないんだよ」
おれの話をつまらなさそうに聞いていた所長が、さっきと同じ返事を返す。
「そんな事は、わかってる...だから、頼んでる」
そう言ったおれを、ちらり、と見て小さくため息をついた。
「いや、無理だろ、さすがに。
小児科医の...風間、だっけ?そいつにも、バレたしな。これ以上秘密を知る人間が増えるようなことは許されない。
とにかく、相葉雅紀にマサキの記憶があることは、上に報告する。
決裁が降りたら、俺から皆に話すから、お前は黙ってろ」
「どうにも、ならない?」
「どうにか出来る要素が見当たらねぇからな。他のヤツらから見たら、マサキは『オリジナル』を殺そうとした『クローン』なんだよ。それは、変えられない事実、だろ?」
だから、何度話し合ったって無駄なんだって、って、呟いた所長をじっと見つめる。
「 ......... 」
なにか、あるはずだ。
あるはずなんだ。
マサキを助ける方法が...
「あぁ、そうだ。コールドスリープの結果も今日までの分でいいから、とりあえずまとめるように二宮に伝えといて。ジジィたち、興味津々で、うるさいんだわ」
そう言ったあとで、ニヤリ、と笑う。
「さっきのヤバイ映像は書き換えておけよ?あんなの、見たら...ジジィたち、ぶっ倒れるからな」
さっきの、ヤバイのって...もしかしなくても、翔くんと、相葉くん、の...
「見た、んですか?」
「見えちまったんだから仕方ねぇだろ。しかし、まぁ、幸せそうだったな、『相葉雅紀』は」
そう言って、柔らかく、笑う。
「所長...」
所長は立ち上がって、俺の顔をのぞき込んだ。
「お前も、だいぶ変わったなぁ...二宮、か?」
「...なにが、です?」
所長を睨みつけた、おれの頭をわしゃわしゃとかき混ぜてから、背中をバシッと叩く。
「なんでもない。しっかりしろよ、リーダー。俺には、出来ることは、ないからな?」
じゃ、会議の時間だから、行くわ、って、片手をあげて、所長は出て行った。