続『1週間』 火曜日 | 櫻葉で相櫻な虹のブログ

櫻葉で相櫻な虹のブログ

櫻葉で相櫻なブログです。



この家のベッドで誰かと朝を迎えるのは初めてだった。過去に恋人と言える人が居なかった訳では無い。だけどどうしても自分のテリトリーの中に入って欲しくなかった。入れてもいいと思った人は1人もいなかった。




こんな短期間の付き合いしかない男なのにはっきり言って俺だって不思議で仕方がない。だけど相葉をこの部屋に招き入れたのは自分から。抵抗も何も感じずにむしろ自ら来て欲しいと思ったと言う事は、俺にとって相葉はやっぱり特別な存在なんだと思う。








「おはようございます、櫻井さん」




場所が変われど抱きしめるのはやっぱり相葉の方だった。毎日使っている自分のベッドで抱きしめられるのことは、彼のベッドの中で同じことをされるよりも何故か照れくさく酷く緊張した。




「……はよ」




起きてすぐにされるキスには慣れた。慣れたというのはキス自体の事ではなく、朝イチ速攻でされることに慣れたという話。当たり前になりつつと言うか。慣れたとは言え、本当は冷静でありたいと思うのにキスの度にするドキドキ感は素直に言うと非常に良い。それと比例して反応する体には正直困るものはあったけど。





「今日も可愛いですね。毎日朝から可愛いってどうなってるんですか?」




ベッドの中で頭を撫でてくるデカい手も好きだと思う。自分だって男だしそれなりだと思うのに、何故この男の手がものすごく安心するんだろう。それにこんなにも抱き合い沢山のキスをするのにその先の話を少しもしてこない。その事も好感でしか無かった。昨日までは。




「……だから可愛くねぇし」




だけど何故だろう。自分のテリトリーに彼のことを受け入れたからなんだろうか。キスよりも先があってもいいのにと、昨晩一緒にベッドに入って直ぐにそう思った。お互いの体の反応は恐らく同じ。男なんだからそうなって当然。




だけど相葉からのキスから先の誘いはない。誘いどころかそれらしい気配もないから俺に対しての感情は相葉にとってそんなもんなのかと思ってたんだけど。




「……誘惑に負けそう」




朝イチの上目遣いは禁止にしてもらっていいですか?と相葉が言う。




「俺、上目遣いしてた?」



「してた。なんなら今もしてる……」



「はは!ごめん、それは無意識だわ!」



「罪深いからね、櫻井さんの上目遣い」




誘惑やら上目遣い云々と言う言葉とこの反応。可愛いと言われる事は不本意ではあるけれど、だけどそれも含めて相葉も少しはキスよりも先の事を考えるくらいには俺の事を思ってくれているんだと思うと嬉しくて笑ってしまった。








「今日も櫻井さんの家に行っていい?」




今日こそはと約束した昼は有言実行だった。午前中、いつもよりも何度も時間を確かめたから遅刻はなし。むしろ少し早めに着くようにと会社を出た。だって昨日のようにせっかくのチャンスを自分のミスで逃すのは絶対に嫌だったから。




「別にいいよ?でも相葉の家の方が近いし綺麗だし居心地良くない?」




そう聞いたのは、人の家よりも自分の家の方が相葉本人がリラックスした状態でいる事ができるのではないかと思ったから。別に俺の家で相葉がそうではなかったというわけでは全くないけれど。




「でも櫻井さんちがいいな、オレ。ダメ?」




そう言われて断る理由はひとつとしてなく、それならばと仕事の後でどこかで合流して俺の家に向かうことに決めた。









「昨日と同じだけどさ、俺ん家なんもないから飯どっかで食ってこうぜ」




合流した駅で昨日と同じ事を提案した俺に「どこかで買って櫻井さんの家で食いたい」と相葉が言った。俺的にはそれでも全然良くて目に入った弁当屋で何故か同じ物をふたつ買って途中怖いほど自然に手を繋いで家までの道を歩いた。





「なんで俺ん家が良かったわけ?」




理由なんてないのかもしれないと思いながらも食事中の会話のひとつとして触れただけだった。明確な返事を期待したわけでもなく、本当にただ何となく聞いただけだったのに。




「だってガードが緩いでしょ?」




そう言った相葉が箸を置いて、食事中だと言うのにキスをする。同じ味が彼の口の中でもする事が違和感に思えたのに、頭はそれを直ぐに受け入れた。同じ物を食べてするキスなんだから当たり前なんだと。




「……ガード?」




絡む舌が離れた隙にどうにか疑問を口にしてみれば




「ほら、ね?」




ワイシャツの裾を出しそのから手を入れ背中を直に摩るように触るから、全身の肌が一気に粟立つのがわかった。








気付けばワイシャツのボタンは全部外されて、露になった肌には相葉の柔らかな唇が這った。時々強く吸われる感覚は体に痕を残しているんだろう。




それが正しいことなのかそうでは無いのかの判断がどんなに正解を出そうとしても何故か出来ない。冷静である事は本来得意なはずなのに相葉の前では上手くできないらしい。




「……んッ、あ……あのさ……ダメ……じゃね?」




這う舌にどうしても我慢できずに出てしまう声が甘いのは仕方ない事だと思いながらも


  

「ダメ……なの?」



「んっ……、ダメ……だろ……」



「なんで?」



「見られたら……んッ……、困る……だろ?」



「……すげぇ、声、エロ……」




その甘さがイコールでいやらしいさなんだとは思いたくないのに。だって急展開すぎる。確かに昨晩、キスよりも先に進む事があっても良いのではないかと思いはした。だけどこんな急に?色気なんて多分全く無かった。弁当を食いながら、何故俺の家が良かったのかと相葉に聞いただけだったのに。





「……付けすぎ……じゃね……?」



「付けすぎ、だね」



「……何だよ、それ、分かって……やってんだ?」




嫌ではない。背中に触れられた時も間も開けずにワイシャツのボタンを外しシャツを捲りあげられた時も決して嫌ではなかった。だから抵抗のひとつもしなかった。





「マーキング」




そう言うけれど、悪い女が付かないようにと相葉が思っているなら必要ない。だって俺が堕ちたのは他の誰でもなく君なんだ。恋愛が人生における大半でありたくないと思っていた俺を、大半以上でも良いのかもしれないとあの1週間で君が思わせてくれたんだから。




「それなら意味ねぇよ。こんな事他でするわけ無いんだから」




誰かに見られたら困ると言ったくせに矛盾。誰にも見せることなんてない。だからそんなに焦るように無数の痕を付けることなんてないのに。だって俺達には、今しかないわけじゃないんだから。







「他の人に対してじゃないよ。櫻井さんに対してのマーキング」



「……俺?」



「そう。オレのだから、あなたは」




自覚してくださいね、という言葉は柔らかいのに




「相葉のなんだ、俺」




最後に首筋を思い切り吸った相葉が痕をつける事をやめて俺の事を抱きしめた腕は




「……そうだよ」




ものすごく強いものだった。