学生寮にて 11 | 櫻葉で相櫻な虹のブログ

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この状況と今の会話で、相葉君が俺のことを弟のように見るなんて事があるだろうか。恋愛の対象の話をし同じ意見だと喜んだ彼ではあるけれど、だからと言って俺の手を握る理由は無い。





「櫻井くんは彼女、欲しいって思う?」





だけどその言葉と強さが増した繋ぐ手がやっぱりどうしても弟のように思うからだとは考えられないのは、自分にとって都合のいい解釈ってやつをしたいからなのかもしれない。それを確かめる勇気は今の段階では無いけれど。





「……彼女は、欲しいと思ったこと無い、かな」





彼からの難しい質問にどう答える事がベストなのか。彼女というワードがイコールで恋人であるならば、俺は欲しいんだと思う。いや、既に絶対に欲しいという感情になっている。こんなにも近くで大好きな人と手を繋いでいるんだから、欲だって増す。




「……そうなんだ」




落胆にも聞こえる相葉君の声にどんな表情をしているのかと顔が見たくて「相葉君は?」と問えば




「櫻井くんとは違う理由だと思うけど、彼女はオレもいらない」




また俺と同じような返事が来て地味にテンションが上がる。その言葉のまま受け取れば、彼女はいらない、だけど……という曖昧な言葉に聞こたから。




「彼女は?」




彼女はいらないなら彼氏は?本当はそう聞きたかった。だけど彼氏というワードが自分の口から出る事に抵抗を覚えた。自分の好きな人が男であることは、つまり俺自身が相葉君を彼氏として欲しがっているという事を自覚せざるを得なかったから。




「ってごめん。言いたくなかったら大丈夫だから」




彼女が欲しいかと相葉君に聞かれて困ったように、相葉君だってもしかしたら困っているのかもしれない。理由は俺のそれとは違うと思うと言っていたから何かしらの理由はある。だけどそれは言いたくないことかもしれないし。





「引かれるかもだけど、オレ女が好きなわけじゃないっぽいんだよね。だからって男が好きかって言われたらそれも違くて」




喋りながら、繋ぐ手が汗ばんでいくのが分かる。好きな人と手を繋ぐ事がこんなにも緊張するとは。寮までの帰り道で繋いだ時よりも断然今の方がやばい。だけどそれは俺だけに起きているわけではないらしい。彼の手も俺と同じように熱く汗ばんでいるのが繋ぐ手から分かってしまった。





「分かるよ」




その手の熱さに、だからといって相葉君が俺と同じだとは思わない。俺と同じで好きな人と手を繋いでいるから熱いわけではなく話の内容がそうさせているんだろう。




「変だなって思うんだけどね。男なんだから女の子を好きになる事が普通だって事は理解してるんだけど、オレはなんか違うっぽくて」




わかる。俺も何度も考えたし葛藤した。変だと、ダメなんだとそう思ったからこそ違う環境に身を置こうとして結果コレだ。





「だけど、分かってはいるんだけど告白してきた女の子達の事を好きだと思った事は一度もなくて、だから付き合いたいとかも思えなかったんだよね」




どんな理由があるにしても、相葉君はその女達と付き合ったりはしていなかった。数々の噂を耳にして、今度こそ想いを断ち切らないと自分が辛くなると何度も思ったのに。





「あのさ、これ聞いていいかわかんないけど」



「何?」



「男の事好きになった事ある?」





男女の恋愛が普通でそれ以外は違う。女が好きな事が正解で男のことを好きになるなんて間違えている。今はそう思う事が正しいことでは無いと知っている。多様性の時代はもちろんそれらは当たり前に認められるべき事だと分かるけど。





「……あるよ。引かれるかもだけど、もうずっとその男の子に何年も片思いしてる」




バカみたいでしょ?と言った相葉君が、俺の頬に繋いでいない方の手の指先で優しく触れた。









「もし、櫻井くんの好きな人が自分とこんなにも近い距離にいたらどうしたい?」




「……え?」




「こんな風に手を繋ぐ事が出来て、こんな風に頬に触れる距離に好きな人がいたら、櫻井くんならどうする?」




「……俺……なら?」




「うん。櫻井くんなら、どうしたい?」




繋いだままの手は熱くなる一方。頬に触れている相葉君の手だって相当に熱い。




「俺なら……」




唾液を飲み込む音が相葉君の喉から聞こえ、その後すぐに自分の唇を舐めた彼が酷く綺麗で。




「やばいんだよ、この距離感」




俺を見る真っ直ぐな目は、まるで相葉君の恋愛対象が自分なのではないかと思わせる。




「……やべぇよ、マジで」




指先だけが触れていたのに。




「よく耐えたよ、オレ……」




その指先が掌全体に変わり頬の全部を包み込む彼の手は震えている。




「耐えたって、何がだよ」




耐えたと言うけれどそれはこっちのセリフだ。そしてそれはこれから先も続く。そう思ったのに。





「もう……限界」




その一言の後すぐに、俺の唇は相葉君の唇に触れた。その事だって十分すぎる程に頭を真っ白くさせたのに




「んッ」




ベッドに押し倒され、唇の隙間から捩じ込まれるように入ってきた相葉君の舌が絡みつくように俺の舌を追いかけた。