学生寮にて 5 | 櫻葉で相櫻な虹のブログ

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熱めのお湯を頭から被り、とにかく落ち着きたくて色々な事を考えてみる。これからの勉強の事だったりネットニュースで見た情報だったり、最近見て面白かったテレビ番組の事だったり。




そのどれが上手くいったのかは分からないけど、とりあえず性欲はかなりおさまった。性欲と言うよりは相葉君に対しての欲と言う方が正しい。今現在自覚のある彼への欲は、今日までの妄想で生まれた欲とは明らかに違う。体が反応するまでの時間が異常に短かった。それに反して収めるための時間はやばいくらいに長かった。






「……はぁ」




何度ため息をしたか。もし数えていたらそれこそ今以上の自己嫌悪になっただろう。




「出よ……」




体を収めるための時間が長く、シャワーだけだと言うのに逆上せそうになってようやく出た脱衣場で今度は違う意味で愕然とした。




「嘘だろ」




相葉君のあまりの色っぽさにやられ、慌ててシャワールームに飛び込んだせいで着替えを用意していなかった。そんな事すら頭になく、なんならタオルもない。濡れたままの裸で歩くにはふたりで使う部屋なんだし申し訳なさすぎる。だからと言って相葉君に取ってもらうと言う選択は今の俺には無い。さっきの様子からそもそもできっと彼は寝ているだろう。




だけど何をどう考えたところで取りに行くしかないのが現実で。体が乾くまでここにいたら、それこそ風を引きかねない。





「……相葉君?寝てたらごめん。タオルとか用意するの忘れて……」




これで反応が無ければ取りに行こう。濡れてしまう床は後で拭けばいい。よし、それで行こう、と相葉君にかけた声に彼からの反応が無いことを確かめてから脱衣場から出たんだけど。







「うわっ!」




寝ていると思った相葉君は起きていた。しかも見慣れないタオルを手に、こちらへと近付いて来と思った時にはもうぶつかりそうな距離。




「……タオル、いるんだよね?……勝手に開けるのは失礼だと思ったから」




嫌だったらごめんだけど、とそう言いながら、距離がゼロになった瞬間に手に持っていたそのタオルを広げて相葉君が俺の体を優しく包み込んだ。








引くはずの汗が全く引かない。それどころか溢れ出る汗が背中を伝うのがわかる。タオルと一緒に相葉君の腕までもが俺の体を包み込むことに対してどうしたらいいか分からなくて硬直したまま。




「櫻井くん、いい匂いする」




そんな俺を他所に、洗ったばかりの濡れた髪に顔を近付ける相葉君はあまりにも自然。さっき長男だから、と話していた彼を思い出し、おそらく弟にしている感覚になっているんだろうと無理やり意識を立て直そうとする事で精一杯。




「あ、あの……、相葉……君?」




やっと出せた声は小さい上に掠れ、さらに震えているのが自分ですら分かる。彼は弟にしている感覚で抱き締め顔を近づけているんだと考えても、情けないと思うのに俺の震えは声だけではなく体にまで伝染した。





「あ、ごめん。寒いよね」



「……え?」



「体、震えてる」




興奮と緊張から来る震えを寒さからのものだと勘違いしてくれたらしい。俺にとってはかなり好都合。そうじゃないと自分の情けなさと、それでもしてしまう興奮で頭がおかしくなったかもしれない。




「……だ、大丈夫」




寒いどころか本当は体も頭も熱い。今、さっきのように相葉君の手が俺の額に触れたらきっと、ものすごく熱いと言われるんだと思う。





「体は、冷たくないね」



「……ん」



「良かった」




優しい声はこの人の人柄から来る。俺に対しての特別では無い。




「タオルごめん」



「全然だよ。もう一枚あるから」



「……ありがと」




こんなに長く男に抱き締められる事は初めてだった。タオルは手渡しでも十分だったはずなのに。俺の体を相葉君が包み込む必要なんて絶対に無かったはずなのに。







「風邪、引かないようにね」




着替えるからと俺の方から離れた。相葉君の腕の中にあれ以上いたらやばかったと思う。居心地の良さよりも緊張で心臓が痛かった。




「自分でやるのに」




腕からは離れたのに、どうしてなんだろう。




「ダメ。櫻井くん、そのまま寝ちゃいそうだもん」




やっぱり長男だからなのかな。俺の髪にドライヤーを当てる様が慣れていると思う。




「……大丈夫なのに」




眠いとか眠くないとかではなく、相葉君と同じ部屋になった初日、眠るつもりは無い。気持ち悪いと思われようが、彼の寝顔がどうしても見たいから。




「でもさせて?櫻井くんの髪ふわふわだね」




優しい手が俺の髪を梳きながら乾かすから、その気持ちよさに思わず。




「すげぇ、気持ちいい」



「あ、ほんと?」



「あ……ごめん」



「ふふ、謝るとこ?」



「いや、違うんだけど、なんて言うか」




またやって欲しい、なんて思ってしまった。同室初日、色々と迷惑をかけてしまった一日のラストが俺にとっての極上で良いんだろうか。





「毎日やってあげる」



「……え?」



「櫻井くんの髪、オレが毎日乾かしてあげる」




はい、おしまい。




そう言った相葉君が、自分も浴びてくるね、言って俺とは違ってちゃんとタオルと着替えを持って脱衣場へ向かった。