保健室 76 | 櫻葉で相櫻な虹のブログ

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鍵のかかっていない保健室の中でキスをした。




飢えていたのは先生なのかオレなのか。




呼吸も忘れてしまうほどのキスは





「……気持ちいいね、翔さん」





頭の奥が痺れるほどに気持ちよかった。










「お前なぁ……」




苦しいほどにキスをして、それだけで我慢するべきだったのに。




「ごめん。でも……」




翔さんの体から消えてしまったであろう痕に我慢が出来なくて。




「悪いと思ってる奴の量じゃねぇぞ?」




キスをしながら数個だけボタンを外した先生のワイシャツは、綺麗に浮き出た鎖骨をオレに見せた。それが悪かったんだと思う、絶対。




「だって消えちゃってんだもん」




あの日先生の体中につけた痕はやっぱり全部消えたんだと思う。さすがにこの場で全ての確認はしていない。だけど見えた鎖骨にはあの日つけたはずの痕は影も形も無かった。一つや二つといった数ではなかったなずなのに。





「だからって、首はまずいだろ」




そう言いながらオレが付けた沢山の痕をなぞるように触る。鏡に向かってではなく、オレに見せつける様に触れるのはわざとなのかもしれない。





「ごめん。でもすげぇエロい」




白い先生の首筋に真っ赤な痕はさすがにダメだったかもしれないと今頃思っても遅い。隠すことすら難しい痕を先生はどう言い訳をするんだろうと、そんなことを考えるだけでも興奮するには十分で。





「だからそれがマズイんだろ。付けた張本人がエロく見えるってことは周りから見たら相当じゃん?」




「あ、そっか」

 


「わかんねぇけど。いい歳して何やってんだよ、って意見の方が断然多いだろうけど……」




「ふふ」




「笑ってんじゃねぇよ。お前のせいだぞ」




「いや、違うね。翔さんのせいだね。魅力ありすぎ!キスしたくなるの仕方ないもん!」




「あ?それなら益々お前のせいだ。絶対そう!お前のせい!全く……エロくなりやがって」




「……じゃ、お互い様じゃない?」




「………そう、かな………否定はできねぇな」




ふたりして相手のせいだと言いながら笑うこんな時間が、めちゃくちゃに幸せな事なんだと気がついた。



 

「翔さん」




「んー?」




「オレさえっちは卒業まで我慢する」




「ん」




「でも、ちゅーはしまくるわ!」





だってどうしようもなく好きなんだ。会えないだけで不安になってしまう。先生の事ばかり考えて何も手につかなくなってしまう。好き同士なのに、こんなのって違うでしょ?





「保健室、いつでもおいで」




「うん!」




「つーか、勉強しろよ?俺の事ばっか考えんてんじゃねえだろうな?お前はほぼほぼ受かるらしいけど、周りはまだ戦ってんだからさ」





結局こういうところが好きなんだ。一番にはオレのことを考えてくれていて、そして周りのこともちゃんと見えている、そんな先生を尊敬してる。





「外で会うのは有り?」




「無しー」




「えええ、なんでー?今の話の流れ的に有りじゃないの?」




何もかもが有りなわけではないけれど、たまにだよ?別に毎日会いたいとかそんな事を言うつもりは無いし、だからそんな全否定する事もないと思うんだけど。





「学習しろよ、お前」




会ったらやりたくなるんだよ、俺は。そう言った先生が




「早く卒業してください」




またそう言って優しくオレの頭を撫でた。









先生はオレの体に痕を付けなかった。オレだけが夢中になって、見える鎖骨や首筋に痕をつけた。それは先生の言葉を借りるとすれば、理性ってやつなのかもしれない。学校内の保健室と言う場所への先生なりのこだわりがあるのかも。だって図書室ではあんな事までしちゃったんだし。





「やば、思い出しちゃった」




先生と会った帰り道で考えてはいけないことだったと反省。保健室でさっきしたばかりのキスの事も先生の体に残した痕の事も、あの日の図書室での事も。




「……早く帰ろ……」




さすがに外では大丈夫だけど、周りから見れば超にやけているヤバいやつかもしれない。一度思い出してしまった先生との事をすぐに頭の隅に追いやることが難しい。





「もう会いたいとか終わってんな、オレ」





また明日もオレは保健室へ行くんだと思う。昼休みか放課後か。もう遠慮なんてせずに。




絶対に消えていない先生の痕を確かめるために。




キスだけで漏れ出る先生の声を聞くために。






柔らかな声で名前を呼んでもらうために。