結局は絆される。いや、自ら絆されにいく、が正解かな。この男が本気で俺を欲しがったら、一度や二度では済まない。だけどそれは俺も。
「も……、無理」
だからってあまりの凄い。限界はとっくの前に来ていた。このままだと堕ちるのも時間の問題。そう思って懇願するように相葉君の胸を自分から離そうと押すけれど
「 我慢しない翔ちゃんって、その程度じゃないでしょ?」
さっきの会話を持ち出されたうえに、俺の要求は飲んでもらえず、マジで体が壊れるまでやめてもらえなかった。
「結局ふたりだね。でもこれで良かったかも!だって考えてみればオレたちの思い出だもんね!」
今年もよく晴れた海は、地平線がはっきりと見えてめちゃくちゃに美しい。あれから10年経った俺たちがあの日みたいにはしゃいで海に入ることは無いけれど。
「それにしても10年?そんな経った気がしねぇわ。マジで昨日のことみたいに蘇るっつーか」
毎年毎年思うくらいに、あの日は俺の人生の中でも相当な上位だと思える1日だった。海に関してだけ言えば文句なしのナンバーワン。
「オレもオレも!毎年思うけど、あの企画にはホント感謝しかないよ」
本当だな、って顔を合わせてから繋いだ手のまま今はもうないあの日ベンチがあった場所にふたりで並んで地面に直に座った。
「あ、いたいた!!ほら、バッチリじゃん!!」
肩を寄せあってからしばらくして、後ろから聞こえる聞きなれた声に俺よりも早く相葉君が振り返った。
「え!!えええ??ニノだ!!翔ちゃん見て!ニノがいる!!えっ!?リーダーも!なんで??」
2人の登場にめちゃくちゃに嬉しそうな声を出す相葉くんに思いっきり満足する俺。
「いやぁ、来ちゃいましたよ。遠かったですけどね〜」
って言うのはまさにニノ節。嫌味がなくて俺的にはかなり好きだったりする。
「って、それは冗談として。おれらだけじゃなくて松潤も一緒だよ!今車停めてるところ。すぐ来ると思う」
あ、来た来た!と言ったニノがこっちに向かって歩いてくる松潤に大きく手を振った。
「翔くんから召集がかかったんだ。来ない訳にはいかないでしょ」
とりあえず間に合ってよかった、と言ったサングラス姿の松潤が相葉君の肩に手をかけて半端ないオーラを見せつけてくる。
「ほんとほんと。翔ちゃんが泣きそうな顔して頼み込んでくるんだもん。余程のことがない限り来るしかないっしょ」
その横でリーダーがクスクスと小さく笑いながら余計なことまで言ってくれる。
「ね、ね、相葉さん」
そんなリーダーに突っ込もうとしたけれど、その間も無いくらいにリーダーとお揃いのビーサンをつっかけているニノが
「こんなのーーーー??」
と相葉君に向かって盛大に煽る。本当に空気が読めて頭の回転が早いなと感心した。
「ちょ、相葉さん、タイミング!ほら、あの名台詞言ってよ!」
「え?え?オレ?翔ちゃんじゃなくて?」
「当たり前でしょ!相葉さんのその顔が見たくて我々来たんですから」
もう一回やり直しね!と言ったニノの合図に合わせて、松潤、リーダー、俺の4人がいっせいに
「こんなのーーーーー??」
と恐ろしいくらいに合った声で煽るように言えば、笑顔が溢れ切って涙すら溢れそうな相葉君が
「はじめてっっっ!!!」
とそう言って、勢いよく俺たちに抱きついたから
「うわっ!!!」
「あぶねっっ!!!」
「あはははは!!!」
「ちょ……」
「マジかっ」
全員で砂まみれになってめちゃくちゃに可笑しくて爆笑で。その事にめちゃくちゃにテンションが上がった相葉くんが
「ありがと、翔ちゃん!」
みんなの目の前でキスをしてきちゃったもんだから3人に思いっきり引かれたんだけど。
「みんなの事ももちろん大好きだよっ!!!」
最上級の笑顔でそう言った相葉君を見たみんながめちゃくちゃにいい顔をしたから、今日のこのサプライズは大成功だったと言えるだろう。
海 2021
終わり