「今年はみんなで行っちゃおうか!」
「みんなって5人で?」
「そう!5人で!…………ダメ?」
こんな話しから始まった。
毎年の恒例行事になっていると言っても過言ではない「あの日の海」に行く事は前々から決まっていてある程度の予定も組んでいた。
「まぁ、別にいいんじゃない?」
「ホント?」
「ホントぉー」
その恒例行事に、今年は二人きりではなくメンバーを誘いたいらしい。記念だから二人で。そうも思うけど、メンバーみんなと行くなんて絶対に楽しいに決まってるし何より相葉君がそれを望むなら全然。だから速攻で了承した。
「やった!それなら早速誘ってみよーっと!」
俺からの返事は相葉君を喜ばせたらしい。ほころぶ顔は俺の好きな表情で。それを見ることができたというだけで、自分が今した返事に満足した。
「ええと……」
そう言ってポケットからスマホを出す相葉君が一番に誘う相手はおそらくニノだろう。少しだけイタズラっ子のような表情をするから見ていて直ぐに分かった。
「返事来た?」
しばらくしてから聞いてみたけれど、どうやらまだ返事は来てないらしい。確かめるように何度もスマホを確かめる相葉君の姿はせっかちと言われる所以だなと思う。
「みんな忙しいのかなぁ」
「まぁ、そうなんじゃない?」
「だよね。明日には来るかなぁ。来なかったらもう1回連絡してみよっかな。電話でもいいよね??」
ねっ?と、そんなに俺に確かめなくても、別にすりゃいいんじゃない?なんて思うけど。電話だって明日まで待たずになんなら今でも……
「いいんじゃない?明日にでもしてみたらいいよ」
だけど、俺の返事はこれ。気持ち的には今すればいいのに。だけど、たまには一緒に入ろうか、なんて話になっている風呂がちょうど今溜まったところだから、俺的にそのチャンスを逃したくなかった。
「ねぇねぇ、海さ」
「んー?」
「今年も晴れたら良いね!」
狭い狭いと言いながらふたりで泡だらけになるのも楽しい。艶っぽい事を期待しなかった訳では無いけれど、今の相葉くんの頭の中の大半は風呂じゃなくて海のこと。
「だな。何だかんだと毎年天気には恵まれてるもんな」
昨日の事のように思い出せるあの海の日から去年まで、俺たちが滞在する時間はいつも晴れだった記憶がある。
「みんなも行ければ良いのになぁ」
「そうだな」
「そろそろ返事来てると思う?」
「どうかな」
「気になるから見てこよ」
って、おいおいおい。せっかく風呂を一緒にと思ったのに。あわよくば多少くらいのイチャイチャがあっても良いかな、なんて思ったのに。洗っただけで湯には浸からずに出ていくなんて。
「……何だこの敗北感は」
相葉君が出ていった浴室で一人、取り残された感が否めない。
「…………ま、いっか」
でも、そういう人を好きになったのは自分なんだから、と無理矢理に納得をして、一人寂しく湯船に浸かった。